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もっと知りたい!雇用労働ナレッジノート

「多様な働き方」を推進する環境づくりが活発化しています。
働く人の現状に最良な時間や場所、そして介護や育児などの両立を支える
社会基盤の構築が大切で、そのための法整備が進んでいます。
『雇用労働ナレッジノート』では、変遷する労働法制を
分かりやすくお伝えします。

隔月連載 第@回

「労働者派遣法」(平成27年改正)の趣旨と要所

派遣制度の課題解消に向けた改正、
社会的要請に応えた働く人たちの環境整備が主眼

派遣制度は、今からちょうど30年前の1986年7月に施行されました。会社による「直接雇用」だけが認められていた中で、欧米各国でも機能的に活用されていた「間接雇用」を日本にも公式に導入したものです。ここで「公式」と記したのは、日本国内でも類似した雇用の仕組みは働く側にも受け入れる会社側にも相応のニーズがあったため、施行前から“存在”していました。ただ、そこには「間接雇用のための派遣事業者の明確なルール」が存在していなかったことから、きちんと派遣制度を法律として定め、雇用分野における役割を果たすために法制化されたものです。
30年前を思い起こしてみてください。パソコンやそれに付随したワードやエクセル、パワーポイントなどの便利な機能、あるいは携帯電話やデータ通信が容易なスマートフォンなどがあったでしょうか。この30年の進化は目覚ましいものがあり、社会環境が変化し、それに伴いひとそれぞれの考え方が多様化してきました。当然、働き方に対する意識も。このような背景のもと、派遣法は時代に適応した内容へと改正する必要がありました。

ここが変わった「5つの変更点」と改正までの主な経過

ここでは改正派遣法の「5つの主な変更点」と法案成立までの経緯をまとめています。

変わった大きな柱は端的に右記の5つです。

抜本改正が昨年9月11日に成立するまでの経緯をおさらいしておきます。2012年10月に有識者で構成する制度の抜本改正を念頭にした「研究会」が設置、全16回にわたり開催され「報告書」を提出。次のステップとして、労働政策審議会職業安定分科会労働力需給調整部会(厚労相の諮問機関)が改正法案の方向性の審議を開始しました。公益委員(有識者)と労働者側委員、使用者側委員の三者による議論が行われ、異例となる越年審議となり2014年1月29日に建議に至りました。

さらに、国会では2014年の通常国会に改正法案を提出。審議入りできないまま秋の臨時国会へ。審議途中で衆院解散となり、2015年の通常国会にあらためて提出。3国会をまたいだ審議を経て成立となりました。

5つの主な変更点

改正の背景と解消に向けた対応

法律の改正は、時代の変遷とともに生じる変化に対して、現場が円滑な運用を行えるように実施されます。それでは、今回の改正に至った背景と解消に向けた対応策について解説します。

課題となっていた事項と解消に向けた対応策
※厚生労働省職業安定局による説明会配布資料をもとにアデコが作成

派遣制度は、派遣社員(働く人)と派遣先(受け入れ企業)、そして派遣元(事業者)の三者で成り立っている雇用のあり方のひとつの形態です。つまり、課題はある一方だけから発生するものではなく、それぞれのニーズや要望、社会環境の変化などを背景に生じてくるため、三者のルールや仕組みを変えていかなくては改善しません。

では、表に掲げた項目をもう少し掘り下げてみます。
まず、「一部の特定労働者派遣事業の問題」ですが、改正前の派遣法における派遣事業者は、参入要件などを含む審査基準が高い「一般派遣事業者」と、「一般」に比べて参入要件は低いものの「一年以上の雇用の見込みがある(常用型)」ことを大前提とした派遣社員を派遣する「特定派遣事業者」に大別されていました。「特定」の派遣社員は、技術者(エンジニア)派遣を主体とする無期雇用型の事業者が健全な運用を行っていますが、届け出制であることの網をくぐり、実際には「一般」と同様の短期の有期雇用契約を含む派遣社員を派遣する事業者が増えてきました。
この解決に向けて2018年9月までに「特定派遣事業者を廃止」することになりました。特定事業者は「一般」に切り替えて許可を取得し、運用することが求められます。

次に、「雇用の不安定さを指摘する声もあった」という点です。これは派遣受け入れ期間の上限などで雇止めになるケースがあり、雇用継続の保障に弱さがあるといった指摘でした。そのため派遣社員の保護の観点から、派遣元事業者に対し「雇用安定措置の義務化」の方策が講じられました。派遣期間に条件はありますが、派遣先への直接雇用の依頼、新たな派遣先の提供、派遣元での無期雇用化などを必ず行うことが改正法に盛り込まれました。

3つ目は、「業務区分があるために分かりにくい期間制限」についてです。これは、業務区分を撤廃することで解消されました。これまで受け入れ期間の制限がなかった政令26業務、あるいは受け入れ期間の上限が最大3年だった自由化業務(26業務以外の業務)の業務区分が取り払われ、派遣社員=働く人(個人単位)と派遣先=受け入れ企業(事業所単位)の期間制限(いずれも3年)に切り替えました。ただし、派遣元で無期雇用されている場合は派遣先における期間制限を受けません。
この改正は、「働く人」と「受け入れ企業」の両方に重要な改正ですので、次の項目でさらに詳述します。

最後に、「多様な働き方のニーズへの対応」という点です。派遣社員として働いている人には、その働き方が現在の生活のスタイルやニーズに合っている人と、企業で正社員(法律的な定義はない)として働きたいと考えている人が約半数づつ存在しています。(2012年の厚生労働省調べ)そこで、派遣社員のキャリアアップとして計画的な教育訓練やキャリア・コンサルティング、派遣先の正社員募集に関する情報提供などが必要になりました。また、賃金や教育訓練、福利厚生施設の利用の面について均衡の強化などが不可欠となりました。

以上の主な変更点をみても、働く人に主眼を置いた内容であることが分かります。また同時に、こうした変更点に対応できる派遣元事業者であるか否かは、派遣会社を選定する際に重要なポイントとなるでしょう。

3年の期間制限は「事業所単位」と「個人単位」の2種類

期間制限のイメージ

前項でも触れましたが、変更点のひとつに「期間制限の見直し」があります。これは、派遣法施行以来、その是非や線引きの難しさが議論されていました。この解消のための方策として、業務区分による期間制限が撤廃されました。そして新たに誕生した仕組みが「受け入れ企業である事業所単位の期間制限」と「働く人でみた個人単位の期間制限」です。

これまでの政令26業務区分では、「26業務に該当するか否か」の判断の難しさが一部にはありましたが、業務区分が廃止されて、「該当するか否か」の判断の難しさが解消されました。そのうえで、あらためて新たに導入された「事業所単位の3年」と「個人単位の3年」のそれぞれの主な留意点とポイントを見ていきましょう。

業務区分が廃止されて、「該当するか否か」の判断が解消されたことは重要なことです。そのうえで、あらためて新たに導入された「事業所単位の3年」と「個人単位の3年」のそれぞれの主な留意点とポイントを見ていきましょう。

■事業所単位の期間制限(図表参照)
@派遣先の同一事業所における派遣労働者の受け入れは、原則として上限3年を期間制限とします。
A派遣先の労使間で意見聴取を行うことによって、さらに3年の延長が可能となります。
Bクーリング期間は3カ月超のまま改正されていません。
C期間制限違反は、2015年10月に施行された「労働契約申し込みみなし制度」(罰則的要素)の対象となります。
※Aの労使間の意見聴取については、次回のナレッジノートで解説します。

 

ところで「事業所単位」って、どのような単位だと思われますか。
基本的には、「工場、事務所、店舗等、場所的に他の事業所その他の場所から独立している」、「経営の単位として人事、経理、指導監督、労働の態様等においてある程度の独立性を有している」― ことで「単位」となっています。

■個人単位の期間制限(図表参照)
@派遣先の同一の組織単位における同じ派遣社員の受け入れは、原則として3年の期間制限があります。派遣元が変更になっても通算されますので注意してください。
A個人単位の期間制限は、それ以降は延長できません。ただし、組織単位を変えて同じ派遣先で就業することは可能です。
※事業所の派遣受け入れ期間が延長された場合に限る

クーリング期間や期間制限違反は、「事業所単位」で説明した内容と同じです。なお、個人単位と事業所単位の期間制限では、事業所単位の期間制限が優先されることになります。

では、ここで登場してきた「組織単位」とは、どのような範囲なのでしょうか。端的に言えば、「課、グループ等の業務としての類似性や関連性がある組織」となります。もう少しかみ砕くと、「派遣先における組織の最小単位よりも一般に大きな単位」が想定されています。

派遣社員のキャリアアップ推進のために、さらに取り組み強化へ

改正派遣法の大事な着眼点のひとつは「派遣社員」のキャリアアップの推進です。従来までの派遣事業の許可更新要件に「キャリア形成支援制度を有すること」という責務が追加されました。
派遣元が講ずべき措置(義務)としては、労働局に要件を満たす教育訓練計画を提出することになりました。さらに、派遣元は、派遣社員に対して@計画的な教育訓練、A希望者に対するキャリア・コンサルティング― を講じます。無期雇用の派遣社員には、長期的なキャリア形成を視野に入れて実施することも明記されました。

このほか、教育訓練等の実施状況について派遣元は労働局への事業報告の提出が求められ、派遣社員それぞれの教育訓練等の実施状況を派遣元管理台帳等に記録、その社員が退職した場合、その後3年間は保存することが決まりました。

では、派遣先にはどのような対応が求められるのでしょう。こちらは、努力義務として派遣先は、派遣元の求めに応じ、派遣労働者の職務遂行状況や遂行能力の向上度合いなど派遣元によるキャリアアップ支援に必要な情報を派遣元に提供することが盛り込まれています。

もう少し、「キャリア形成支援」についてかみ砕くと、「教育訓練計画」とは、派遣社員のキャリア形成を念頭に置いた段階的かつ体系的な教育訓練の実施計画を定めていること― を指しており、
▽その雇用するすべての派遣労働者を対象としたものであること(短期間雇用の者も対象)
▽実施する教育訓練が有給かつ無償で行われるものであること
▽フルタイムで1年以上雇用見込みの派遣労働者1人当たり、毎年おおむね8時間以上の教育訓練の機会の提供― が必要となりました。

このほか、実施する教育訓練が派遣社員のキャリアアップに資する内容のものであることが大切で、計画的なOJTも含めて派遣元が労働局に提出する計画に記載が必要となります。

教育訓練を受けることに伴う交通費は、派遣先との間の交通費よりも高くなる場合は、派遣元が負担することや、教育訓練の導入にあたって賃金の削減でまかなわないこと、教育訓練計画の周知等が求められています。

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