
家事や子育てを抱える多くの主婦が、仕事を始めるにあたって正社員ではなく拘束時間の少ない派遣やパートの仕事を探すかと思います。では、派遣とパートには、どんな違いがあって、主婦にはどちらの働き方が向いているのでしょうか?それぞれの雇用形態の特徴や働きやすさを比較してみましょう。
また、これまでの「103万円の壁」が「150万円の壁」へと変更になった、働く主婦が知っておきたい「扶養控除制度」についても解説します。
主婦が働くためにクリアしたい条件
毎日の家事や育児などもこなさなくてはならない主婦が働くにあたって、職場に求める条件が複数あるという人も多いはず。主婦が長期的に無理せず働ける職場を見つけるためには、次のようなポイントを重視して仕事探しをしてみるといいでしょう。
- 通勤時間が短い
- 就業時間の融通が利く
- 早出や残業がない
- 急な欠勤にも対応してもらえる
- 子育てへの理解がある
- ブランクがあっても働きやすい
ほかにも、過去の経験を生かせる業務内容であることや、体力面に負担のない仕事であることも大切ですね。
派遣とパートの違いとは?
ここからは、雇用契約や契約期間、働きやすさなどが、派遣とパートではどのように違うのかについてご紹介します。職場に求める希望と照らし合わせて、どちらが自分に合っているのかを考えてみましょう。
雇用契約
パートの場合は、自分で直接、勤務先となる企業へ応募し、選考を受けることとなります。雇用契約も、勤務先となる企業と個人とで直接結びます。
一方、派遣の場合は、派遣会社と労働契約を結び、派遣先である企業から指揮命令を受けて働くことになります。
つまり、パートの雇用主は実際に働く企業である一方、派遣社員の雇用主は派遣会社になるのです。そのため、派遣社員の給料は派遣元である派遣会社から支払われます。雇用条件についての相談も、勤務先の上司にではなく、派遣会社の担当者に行います。
契約期間
雇用期間は、パートは特に決められていないことが多いため、任期満了を気にせずに働くことができるのも派遣との大きな違いといえるでしょう。一方、派遣社員は有期契約のため、定期的な契約更新が必要となります。しかし、例外もあり、派遣元に無期雇用されているという場合や60歳以上の場合は、3年間の期限はなく無制限の雇用となります。また、有期雇用契約の更新が複数回行われ、その期間が通算5年を超えている場合、無期雇用派遣に変更することで期間の制限を超えて働くことができます。
なお、派遣の仕事は、勤務先から契約期間を更新しない通達を受けることもあれば、自分都合で更新しないという選択も可能です。
仕事の評価制度
パートの場合、原則として直属の上司が仕事の評価やフィードバックを行います。業務成績などに応じて、時給アップなどが迅速に反映されるというメリットがあります。
派遣社員の場合は通常、派遣先企業の評価をもとに派遣会社経由でフィードバックされます。評価とともに、派遣社員が就業先でより活躍できるよう派遣会社からのサポートも受けることができるので、よりキャリア形成につながるでしょう。
拘束時間の自由度
勤務時間や休日、残業の有無については、パートと派遣どちらも選択可能であることがほとんどです。しかし、派遣社員の場合、最近では「週3日」といった求人も増えていますが、一般的には正社員と同様フルタイムもしくはフルタイムに近い勤務が条件となる場合もあります。小さな子供がいる主婦は、子供の預け先について考えなくてはならない可能性もあります。
勤務時間の自由度としては、「パート>派遣>正社員」と考えたほうが良いでしょう。
福利厚生の充実度
派遣社員は、派遣会社の社会保険や福利厚生を使うことができます。また、派遣はパートよりも時給が高めの仕事が多い傾向があります。派遣であれば、一定の条件を満たす方であれば派遣会社が年末調整を代行してくれるというのも大きなメリットです。パートの場合、確定申告を自分でしなくてはならないことがあります。

急なお休みに対応しやすいのはどっち?
主婦が働くとなると、子供が体調を崩してしまったときや突然予定が入ってしまったときなど、急遽休みを取らなくてはならないことも考えられます。派遣とパートでは、休みに関する融通が利きやすいのはどちらになるのでしょうか?
先ほどもご紹介したように、就業時間に関して派遣社員は正社員に次いで拘束が強いことがあります。そのため、急な休みを取得することが難しかったり、評価が下がる原因になってしまったりというケースも。パートの場合は面接の時点で、子供がいるため休みを柔軟に取りたいといった希望を伝えることができます。家庭の事情も理解し、柔軟に対応してくれやすいのはパートといえるでしょう。
扶養内で働くかどうかも鍵になる
主婦の場合、夫の扶養に入っているという人も少なくないと思います。そこで確認しておきたいのが、「配偶者控除」や「配偶者特別控除」といった扶養控除制度です。
かつては103万円の壁と呼ばれていたように、主婦の年収が103万円を超えてしまうと税金が高くなってしまいました。しかし、2018年1月からは150万円の壁へと変更になりました。ここでは、この主婦が働く場合の「年収の壁」に関して、知っておくべきことを確認していきましょう。
- ※ここでは夫と配偶者(主婦)を想定して解説しますが、主夫とその配偶者にも読み替えることができます。
2017年までの「103万円の壁」とは?
2017年までは、扶養に加入している主婦の年収が103万円以下であれば、そこからすべての人が受けられる控除である「給与所得控除の65万円」と、「基礎控除の38万円」を差し引き、課税対象所得(税金のかかる所得)をゼロにすることができ、主婦の給与に対して所得税は発生しませんでした。
また、主婦の年収が103万円以下の場合、夫は「配偶者控除」として一律38万円の所得控除を受けることができました。
主婦の年収が103万円を超えると、所得税は発生しますが、103万円を越えかつ141万円未満のときは、夫の合計所得金額が1,000万円以下(年収1,220万円以下)であれば、夫は「配偶者特別控除」を受けることができました。控除額は、配偶者の所得により38万円から3万円の範囲で段階的に減額されます。
103万円の壁から「150万円の壁」へ変更
所得税法の改正によって、2018年1月からは「配偶者控除」が適用される年収が、103万円から150万円へと引きあげられました。主婦の年収が150万円以内かつ夫の合計所得金額が900万円以下(年収1,120万円以下)であれば、夫の所得から「配偶者控除」として一律38万円を差し引くことができるのです。
それに伴って、「配偶者特別控除」の金額も変わります。主婦の年収が150万円を超えても、201万円未満で、夫の合計所得金額1,000万円以下(年収1,220万円以下)であれば、「配偶者特別控除」を受けることができます。控除額は、配偶者の所得により38万円から1万円の範囲で段階的に減額されます。
「150万円を目指せる?!」 社会保険の「106万円の壁」にも注意!
103万円の壁が150万円の壁に変更となったことで、「年収150万円を目指せる!」と思われる人もいるかと思います。しかし、ここで確認したいのが、2016年10月から変更となった社会保険制度です。
変更前は、パートや派遣で働く主婦は年収130万円以内であれば夫の扶養に加入でき、社会保険の負担がありませんでした。しかし制度変更により、年収106万円以上(賃金の月額が8.8万円以上)かつ、勤務時間が週20時間以上30時間未満、1年以上勤務する見通しがある、従業員が501人以上の会社で働いている条件を満たす主婦は、夫の扶養から外れて社会保険料を自分で負担することになっているのです。
社会保険料を負担することで、国民年金に比べて将来受け取る年金が増えます。しかし、負担金額が増えることで加入前と比べて手取りが少なくなってしまう場合もあるため、場合によっては労働時間などの調整をしたいという方もいるかもしれません。また、夫が厚生年金に加入している場合は、第3号被保険者(第2号被保険者に扶養される配偶者)となるため、国民年金を支払ったことと同じ扱いとなります。
派遣はパートと比較して時給が高く、週数日の勤務でも予想以上の年収となることもあるため、扶養内で働きたい場合には、働き方も就業先も慎重に決める必要があるでしょう。
今後の働き方も見据えた選択をしよう
派遣とパートの違いについて、主婦が働くにあたっての視点からご紹介してきました。
継続して長期的に働きたいのか、いつか辞める予定があるのかなど、今後の働き方についても考えたうえで、自分の希望する条件に合った働き方を判断することが大切です。夫の扶養に加入している場合は、配偶者控除や社会保険に関する「年収の壁」についても確認しながら、仕事と家庭とのバランスを考えていきましょう。
※この記事は、2017年に新規公開された記事となります。