心理的安全性が高い、良いチームの定義とは? 方法やメリットを解説

「心理的安全性」という言葉をご存じですか? 日本では少子高齢化などの社会構造の変化や、ダイバーシティ、働き方改革といったビジネス環境の変化に伴い、組織に求められるものも大きく変わりました。

また、新型コロナウイルス感染症拡大によって、テレワークが急速に普及したことで、従業員の管理・評価の方法も大きく変わりつつあります。そんななか、注目されているのが「心理的安全性」です。

今回は、組織の心理的安全性の概念や、それを高めるにはどのような取り組みをすればよいのかについて分かりやすく解説します。

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心理的安全性とは?

心理的安全性とは、ハーバードビジネススクールのエイミー C. エドモンドソン氏が1999年に提唱した概念で、同氏は、心理的安全性について「チームの心理的安全とは、このチームでは率直に自分の意見を伝えても、対人関係を悪くさせるような心配はしなくてもよいという信念が共有されている状態を意味する。」としています。

心理的安全性を維持することでチームメンバーが臆することなく仕事に取り組め、パフォーマンスを発揮しやすくなるといえるでしょう。

なぜ今、心理的安全性が注目を浴びるのか?

「心理的安全性」は、なぜ昨今注目を集めるようになったのでしょうか? 背景には心理的安全性に関する調査結果や、働き方の変化がありました。

Googleによる調査結果の発表

心理的安全性を一躍有名にしたのは、Googleが2012年に行った大規模な調査です。古代ギリシャの哲学者、アリストテレスから名前を取った「Project Aristotle(プロジェクト アリストテレス)」というこの調査において、Googleはチームの生産性を高めるための要素として下記の5つを挙げています。

  • 心理的安全性
  • 相互信頼
  • 構造と明確さ
  • 仕事の意味
  • インパクト

調査の結果、これらはチームマネジメントを行う上で重要な要素となることが判明し、さらに、個々のメンバーにおけるスキルの高さよりも「チームにおける協力の仕方」が、組織全体のパフォーマンスを高めるうえでの重要な要素であることが分かりました。

この調査結果により、「心理的安全性」という考え方は日本国内のみでなく世界的にも一躍有名になり、注目されることになったのです。

ダイバーシティ経営への意識の高まり

ダイバーシティ経営への意識の高まりも、心理的安全性の重要度を高めている要因のひとつです。

ダイバーシティ経営はさまざまな人種や性別などの背景や考えを持つ人が集まり、活発に意見交換がなされることでチームの生産性を向上させたり、イノベーションを起こしたりするための経営手法です。

多様な人がコミュニケーションを行うためには、チームの心理的安全性は不可欠といえるでしょう。

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テレワークの普及や常態化

新型コロナウイルス感染症の拡大によってテレワークが急速に普及しました。東京都が2021年3月に発表した資料によると、従業員30人以上の企業におけるテレワーク導入率は58.7%。6割近くの企業がテレワークを導入しています。

テレワークはオフィスに出社しないことで、移動に伴う人との接触を減らし、感染対策になるだけでなく、移動時間を削減することで効率的かつ多様な働き方を実現することが可能です。

一方で、職場における雑談などのカジュアルなコミュニケーションが失われることによって、従業員の「孤独感」を助長させる側面もあります。慢性的にチーム内で相談しにくい状況が生まれると、生産性に悪影響を与えかねません。

チームマネジメントやメンタルヘルス対策の一環として、心理的安全性への関心が高まっています。

チームメンバーの心理的安全性が低い状態とは?

心理的安全性の概念を提唱したエドモンドソン氏によると、チームメンバーの心理的安全性が低い場合の心理として、4つの状態があります。

自分が無知だと思われている

他のメンバーから自分が無知だと思われるのではないか、という不安があることで聞きたいこと、聞くべきことが質問できなくなってしまいます。

その結果、タスクや求められる仕事の理解が深められず、仕事のミスやトラブルにつながることになります。ミスやトラブルが起きると、余計に萎縮してしまい、さらにコミュニケーションがしにくくなるという悪循環が生まれかねません。

自分が無能だと思われている

業務で失敗やトラブルがあった時、心理的安全性が不足しているとチームメンバーに自分が無能だと思われてしまう、という不安によって適切な報告・連絡・相談ができなくなってしまいます。

本来何か問題が発生した時には一刻も早く共有し対策を考えるべきですが、心理的安全性の不足によりミスやトラブルがチーム内に共有されなければ、さらに状態が悪化することも起こりえます。

自分がチームの邪魔をしていると思われている

会議などで自分が発した意見によって、論点がずれたり、会議が長引いたりすることで、自分の言動がチーム運営の邪魔になっているのでは、という不安を抱くこともあります。

こうした不安があることで、メンバーが積極的に意見を出せず、議論も活発にならず、新しいアイデアも生まれにくくなるという悪循環が発生してしまいます。

自分はネガティブな人間だと思われている

会議などでは建設的な議論の一部として、他者の意見やアイデアに異を唱えることもあります。議論を展開することで、他の人の考えを刺激するなど良い効果も生み出せます。

しかし異論を発することでネガティブな人間であると思われるのでは、という不安があれば、言いたいことも言えず、方針に納得しないまま業務を行うことに陥りかねません。

会議のたびにこのように感じることで、従業員にとって大きなストレスになってしまうこともありえます。

チームメンバーの心理的安全性が担保されている状態とは?

チームメンバーの心理的安全性が担保されている状態とは、一体どのようなものでしょうか?

知らないことを聞きやすい

業務上必要であればいつでも助けてもらえるという安心感があり、自分が知らないことをいつでも、誰にでも気兼ねなく聞けます。

また、昨今ビジネスにおける状況の移り変わりは早く、活発な情報交換やノウハウの蓄積は生産性を高めることにもつながるでしょう。

問題が起きたときに相談しやすい

問題が起きた場合に、引け目を感じずに相談しやすいことも心理的安全性が高いチームの特徴です。

問題が起きてしまった際には、本来なるべく早く相談するべきですが、チームの関係性が悪いとうまく相談できないこともあるでしょう。

相談しやすい環境であることで、エスカレーションがスムーズに行われトラブルを早期に解決でき、状態の悪化を避けられます。

新しい考えを提案しやすい

会議などで、他のメンバーが気付かなかった視点からアイデアが出るなど、心理的安全性が高いチームでは、新しい考えや意見を出すことのハードルが低くなり意見交換がされやすくなります。

チームメンバーが提案を出しやすい状態にあることで、より広い視点から意見を収集できるため、現状を打開し、プロジェクトの成功確率を高められるでしょう。

自分の考えが尊重されていると感じる

新しい考えを提案しやすかったり、言いにくいことも言えたりできる状態は、言い換えると、自分の考えや意見が尊重されていると感じられている状態です。

自分がチームの一員として尊重されていると感じることで、チームあるいは職場での居心地が良くなり、孤独や不安を感じることも少なくなります。

心理的安全性を維持するメリットや効果

会社組織にとって、心理的安全性を維持するメリットや効果はいくつもあります。具体的に確認していきましょう。

1チーム内でのコミュニケーションが活発になる

心理的安全性が維持されることで、ビジネスにおいて言いたいことを言える環境ができます。メンバー同士や上司とのコミュニケーションが活発になり、報告・連絡・相談なども自発的かつスムーズに行われ、業務が円滑に進むため、生産性も向上しやすいといえるでしょう。

2チーム内での課題解決能力が高まる

コミュニケーションが活発、円滑になることで、問題を未然に防いだりあるいは大きなトラブルに発展する前に、解決できるようになります。
また意見交換がなされることで、プロジェクトが暗礁に乗り上げた際に、突破口が開きやすくなることもあります。

3チームメンバーのスキルが向上する

協力関係が弱いチームでは、ノウハウの共有などが行われにくく、メンバーの育成もはかどりません。心理的安全性が高まることでコミュニケーションがスムーズになり、問題やトラブルの抑制だけでなく、知識や経験の共有も盛んに行われるため、メンバーの能力が底上げされます。

4チームメンバーのワークエンゲージメントが高まる

言いたいことが言える職場や、自分を受け入れてくれる職場は人間関係などにおけるプレッシャーや負担も少ないうえに能力を発揮しやすく、働きやすいといえるでしょう。テレワークなどでも孤独感を抱きにくくなり、ワークエンゲージメントを高められます。

5意見をしやすい環境は、ハラスメントリスクも低減できる

心理的安全性を維持することの副次的な効果として、ハラスメントリスクの低減もあげられます。上司や先輩に対しても意見を言いやすい環境であれば、誰かの言動に問題があったときに指摘がしやすく、無自覚のまま大きな問題に発展することをチーム全体で防げます。

チームの心理的安全性を測定する方法

自分が所属する組織に心理的安全性があるか客観的に知るには、どのような方法があるのでしょうか? チームの心理的安全性について測定する方法を紹介します。

エドモンドソンの7つの質問

エドモンドソン氏は、チームの心理的安全性を計測するためのシンプルな7つの設問を提唱しています。これらを「まったくその通りだ」「まったくその通りでない」といったいくつかの尺度で計測することで、心理的安全性の状態を定量的に把握できる設計になっています。

  1. 1.チームでミスをした際に、非難されることが多い
  2. 2.チームメンバーは問題や難題を指摘できる
  3. 3.チームメンバーは異論を拒絶することがある
  4. 4.チーム内でリスクのある行動ができる
  5. 5.他のメンバーに助けを求めるのは難しい
  6. 6.チームメンバーは、意図的に自分の努力を損なうような行動はしない
  7. 7.チームメンバーと一緒に働くことで、自分の個性やスキルを発揮し、評価され、活躍できる

所属組織に関する7つの質問に対して、前向きな回答が多いほど心理的安全性が担保されている状況を表します。

ギャラップ社の12の質問

アメリカのコンサルティング会社であるギャラップ社は、従業員のエンゲージメントを計測する12の質問を提唱しています。Q12(キュートゥエルブ)と呼ばれるこの調査は、心理的安全性のチェックにも活用できます。

  1. 1.あなたは、仕事で何を期待されているかを知っていますか
  2. 2.あなたには、仕事をきちんと行うに十分な環境がありますか
  3. 3.あなたには、仕事で成果を出すための十分な機会がありますか
  4. 4.過去1週間で、成果に対する評価や賞賛を得られましたか
  5. 5.上司や同僚はあなたのことを気にかけてくれますか
  6. 6.職場にあなたを励ましてくれる同僚はいますか
  7. 7.あなたの意見は尊重されていますか
  8. 8.あなたの会社の使命や目的は、仕事に誇りを与えてくれますか
  9. 9.あなたの同僚は成果を出すことにコミットしていますか
  10. 10.あなたは職場に親友がいますか
  11. 11.過去6カ月間で、あなたの仕事の進捗について誰かと話しましたか
  12. 12.昨年、あなたは学び成長できましたか

会社で正式な調査を行っていなくても定期的にこれらの項目に目を通して、意識してみるのもよいでしょう。

EAP・メンタルヘルスケア

社会やビジネス環境の移り変わりは早く、日々求められる業務レベルは高まることがあっても減ることはありません。このような背景から、職場でのメンタルヘルスの問題は年々深刻化しており、企業活動における生産性の面においても大きな影響があります。

このようなメンタルヘルスに関する問題をサポートするのが従業員支援プログラム(EAP: Employee Assistance Program)と呼ばれるサービス群です。組織全体、企業幹部、マネージャー、従業員およびその家族がストレスチェックやセミナー・復職支援などの各種サポートを受けられます。

サポートの必要性を感じている場合は、相談してみるのもよいでしょう。

アデコのEAP・メンタルヘルスケア

企業の生産性の向上という観点からより良い職場環境づくりに役立つソリューションを提供する、アデコ独自の従業員支援プログラム(EAP:Employee Assistance Program)です。
企業の組織・人事・管理監督者・従業員、その家族に対して、さまざまなサービスをご用意しています。

心理的安全性を高める方法やコツ

どうすれば会社組織における心理的安全性を高められるのでしょうか? 具体的な方法やコツを紹介していきます。

情報共有や開示

心理的安全性を維持するためには、情報共有や開示は重要なファクターです。人は「分からないこと」に対して不安を感じる生き物だといえます。「チームが今どのような状況にあるのか」をマネージャーは適切なタイミングで、適切なメンバーに、適切な方法で伝える必要があるといえるでしょう。

またその際、特定の人に情報を伝えないことで、疎外感を与えてしまわないか配慮や注意が必要です。

1on1

1on1ミーティングは、定期的に上司と部下が1対1で行う30分程度の短いミーティングを行う手法で、近年スタートアップをはじめとして導入する企業が増加しています。

1on1ミーティングによって、きちんと時間を確保してメンバーが意見をいう、話をするといった機会を設けることはメンバーの自己肯定感を高め、心理的安全性を維持するのに役立ちます。

とくに、テレワーク環境においては、1on1の頻度を増やすことで、メンバーの孤独感を抑制することにもつながるため、有効だといえるでしょう。

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ピアボーナス

ピアボーナスとは、英語で同僚を意味する「Peer」と報酬を意味する「Bonus」をつなげた言葉で、仕事の成功やサポートなどに対して、互いに賞賛し合うことや仕組みを指します。

チーム間でピアボーナスを送り合うためのツールなども提供されており、ツールを導入してピアボーナスを可視化することで、モチベーションやエンゲージメントの向上につながるでしょう。

専用ツールなどの仕組みがない場合、メールやチャットで定期的に積極的な賞賛を促すことも効果的です。

チームビルディング

チームビルディングとはチームメンバーがその個性や能力を発揮しながら、目標に向かって一丸となって取り組めるような、チームづくりを行う取り組みのことを指します。

具体的には、設定されたミッション達成のために、チームで協力やアイデア出し合う「ゲーム」や「ワークショップ」などが有効です。テレワーク下でも、オンライン上で行えるゲームなどを活用することで、実施が可能です。

こうしたプロセスを通じて活発なコミュニケーションを行い、メンバーの理解を深め合うことで、互いの個性や意見を尊重し、言いたいことが言い合える土壌づくりにつながります。

チームの心理的安全性をキープするポイントは、協働することによって培われる「相互理解」と「尊重」だといえるでしょう。

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メンター制度

メンター制度とは、新入社員や若手社員を先輩社員がペアとなってサポートする仕組みです。サポートする側を「メンター」、される側を「メンティー」と呼び、メンター制度を設けることで、チームに馴染みやすくなる効果があります。

メンター制度はテレワークにおいても有効で、メンターが定期的にオンラインで1on1を行うことで、テレワーク中に不安になったことや疑問になったことを聞けるため、業務における不安を軽減できるでしょう

心理的安全性の維持に取り組む際の注意点

チーム内で心理的安全性を担保できた後は、その状態を維持していかなければなりません。維持する際にはどのようなポイントに注意すればよいのでしょうか?

メンバーにおもねるだけに陥らないこと

心理的安全性の維持に取り組む際の注意点として、意見を尊重するあまりメンバーにおもねり過ぎてしまうことが挙げられます。メンバーが自由に意見を出せる環境は理想的ですが、上司もするべき指摘をできる環境であるべきでしょう。

いわゆる「空気を読む」という概念や「忖度する」「馴れ合う」というような概念とはまったく異なることをきちんと理解しておくことが重要です。このような概念に捉われている時には、軌道修正が必要です。

エドモンドソン氏は、心理的安全性と責任のバランスについて指摘しています。同氏によると、心理的安全性と責任の高低によって組織のあり方は変わっていきます。

  • 心理的安全性が低く、責任も低い場合、チームは「無関心」になる
  • 心理的安全性が高く、責任が低い場合、チーム「快適」になる
  • 心理的安全性が低く、責任が高い場合、チームは「不安」になる
  • 心理的安全性が高く、責任が高い場合、チームは「学習」する

上記の中でチームが目指すべきは「4」であるといえます。

適度な緊張感を維持する

チームメンバーが意見を言いやすいことはもちろん重要ですが、適度な緊張感は必要です。

エドモンドソン氏のいうとおり責任と心理的安全性は密接に関係しており、責任とは言い換えれば、ビジネスにおける目標とも表現でき、目標は評価と常にセットです。

つまり心理的安全性の効果を最大限に生かすためには、目標設定と人事評価を適切に行うことが重要といえるでしょう。

チームの目標やビジョンを掲げ、その達成のためにチーム内で活発な意見交換がなされ、そして目標の達成度合いを評価し認め合い、次の目標に向かうことが理想です。

そのようなチームは心理的安全性が正しく機能しているチームであるといえます。

まとめ

心理的安全性について、取り組むべき理由と特徴や効果などについて触れてきました。近年、労働市場の流動化が高まっています。流動性が高い市場では、金銭などの目に見える報酬だけでなく、働きがいのある職場環境はより重視されるようになるでしょう。

より良いチームを構築したいと考えている場合は、心理的安全性の維持向上にぜひ取り組んでみてください。

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