
いま、人的資本経営は企業変革の中核として位置づけられています。組織のなかで人財の力をどう引き出し、どうつなぎ、そしてどう発揮させていくか。その問いに実践的なかたちで向き合うべく、アデコはB.LEAGUE所属のアルバルク東京とともに、プレミアムイベント「THE RED SATURDAY」を開催しました。
本イベントは、講演、ワークショップ、人事制度改革の取り組み紹介、そしてスポーツ観戦といった多彩なプログラムを通じ、組織における協働のあり方や、人事が担うべき役割を多角的に体感する内容です。参加者の多くは企業の人事担当者で、理論と実践が交錯する濃密な半日となりました。
THE RED SATURDAYレポート動画
基調講演:これからの「チームマネジメント」とは?

基調講演では、法政大学教授であり、一般社団法人プロティアン・キャリア協会代表理事の田中研之輔氏が登壇。組織と個人の関係性を再構築する新たな視点が提示されました。
田中氏は、「チームは名詞ではなく動詞である」と強調し、組織とは固定された構造ではなく、常に関係性が変化し続ける「動的な集団」であるべきだと語ります。その象徴として、アルバルク東京のプレーに見られる没頭(フロー)状態や、瞬時の連携を例に挙げつつ、「チーミング」がいかにパフォーマンスと直結するかを実証的に紹介しました。
また、これからのチームマネジメントに求められるのは、単なる構造設計ではなく、「一人ひとりの状態を可視化し、繋がり合うことで、持続的成長を生み出す仕組み」であると説明。しなやかで進化するチームこそが、現代の組織に必要だと訴えました。
そのためには、チームマネジメントの考え方自体を更新する必要があると、田中氏は強調します。
そして、「組織に預けられたチームマネジメント」から、「個人のキャリアを主体的にプロデュースしていくマネジメント施策」への転換を提案。人事部門こそがその実装を担うべきであり、共にその挑戦に取り組んでいこうと呼びかけました。
ワークショップ:協働を体験し、再構築する

ワークショップでは、SDGsをテーマにしたカードゲームを活用。参加者がペアを組み、情報共有と意思決定を行いながら、全体の成果を追求しました。
ここで体感されたのは、目的を共有し、信頼関係の中で自然と生まれる「チーミング」のプロセス。目的の異なるペア同士が対話を通じ、全体にとっての最適解を導き出していくプロセスは、まさに現代の企業に求められる協働のかたちを映し出すものでした。
参加者からは「楽しいゲームでつい没頭してしまったが、自社の業務にも通じる学びがあった」「役割や目的が異なる相手と、いかに力を合わせるか考えさせられた」といった声が聞かれ、体験を通じて協働の価値を実感した様子が伺えました。

制度設計事例紹介:クラブチームの成長に寄与する制度の目指す姿
次に紹介されたのは、アデコ株式会社が支援するアルバルク東京の人事制度改革プロジェクトです。アデコ コンサルティング部部長の古本と、アルバルク東京の栗盛氏より、制度改革の背景と取り組みの方向性が語られました。
設立から9年を迎えたアルバルク東京では、社員数が20名から60名超へと拡大し、観客動員数も大きく伸長。こうした成長局面において、従来の制度に依存せず、次のフェーズを見据えた制度の刷新が求められています。 制度改革の柱として、以下の3点が挙げられました。
- 1.職員を選手と同様に「プロフェッショナル」と位置づけ、役割にふさわしい環境と処遇を整備すること
- 2.「トヨタアルバルク東京で働く」という価値を明文化し、組織にふさわしい人材像を明確にすること
- 3.制度を管理の枠を超えた「成長のエンジン」として機能させること
今回の取り組みは、単なる制度刷新にとどまらず、アルバルク東京とアデコがともに、業界全体が抱える課題に向き合い、新たなスタンダードを築いていこうとする協働の姿勢そのものでもあります。制度を通じて働く環境の質を高め、スポーツクラブにおける人的資本経営の先進モデルを発信していくという共通の志のもと、両者は綿密に連携を続けている最中です。

バスケットボール試合観戦:協働の極致を「観る」
イベントの締めくくりは、国立代々木競技場で開催されたアルバルク東京 vs 川崎ブレイブサンダースの試合観戦でした。 選手たちが言葉を交わすことなく、視線や動きのみで瞬時に連携を取る姿は、まさに「非言語的なチーミング」の実例と言えます。こうした連携が勝利につながる様子を目の当たりにすることで、抽象的な概念としての協働が、現実の力として腑に落ちる体験となりました。

「制度・文化・関係性を結び直す視点としての人事」(プロデューサー:吉水の視点より)
本イベントは、制度、文化、そして人と人との関係性を丁寧に結び直す試みとなりました。
講演では、組織マネジメントの最新理論に触れることで、これからの協働の在り方を捉え直し、ワークショップでは、信頼と対話を基盤とした「体感的なチーミング」を共有。そして制度紹介では、持続可能な組織を支える人事制度改革の方向性が明かされました。
中でも印象的だったのは、人事の役割が「制度を運用する部門」から、「組織と個人の可能性を接続し、未来をともに描くプロデューサー」へと進化しつつあるという点です。特に田中研之輔先生が示した「チームパフォーマンスの三要素(タスク・満足度・成長性)」は、その変化に向けた実践的な道筋を照らしてくれるものでした。
人的資本経営が本質的に問うのは、「どう働くか」ではなく、「誰と、なぜ働くのか」。この根源的な問いに対し、人事が「チーミング」の起点となり、組織と個人を有機的に結びつけていく。その未来像を、この「THE RED SATURDAY」は力強く描き出したと感じています。
今回の開催にあたり、アルバルク東京の浅野様、栗盛様、大野様、高島様をはじめとする関係者の皆さま、そして基調講演を通じて深い示唆をくださった田中研之輔先生に、心より感謝申し上げます。また、運営にご尽力くださったすべての皆さまにも、この場を借りて厚く御礼申し上げます。
Profile

大手印刷会社経て、メガバンクへ入行。社内MBOにて設立したIR専門の会社にて、統合報告や適正株価試算やIPO支援を行う。
その後、人材ベンチャーの第二創業期に参画し、執行役員CROとして副業・兼業やプロボノ活動、越境活動等の既存の働き方に捉われないキャリア活動や、新しい人材の活用の手法を大手企業・ベンチャー・地方企業等に幅広く提案を行う。
田中研之輔氏 プロフィール
博士号 専門:キャリア開発 組織アナリスト
株式会社 キャリアナレッジ 代表取締役社長
一般社団法人 プロティアン・キャリア協会 代表理事
法政大学キャリアデザイン学部 教授
UC.Berkeley 元客員研究員/Melbourne University 元客員研究員
日本学術振興会 元特別研究員(PD:一橋大学/SPD:東京大学)
著書36冊・社外顧問 36社歴任
<著作リスト・一部>
『プロティアンシフト』(2023.5)
『社員がやる気をなくす瞬間』(2022.12)
『人的資本の活かしかた』(2022.8)
『キャリアワークアウト』(2022.7)
『今すぐ転職を考えてない人のためのキャリア戦略』(2022.4)
『新しいキャリアの見つけ方』(2022.1)
『プロティアン教育ー三田国際学園のキャリアエスノグラフィ』(2021.11)
『ビジトレー今日から始めるミドルシニアのキャリア開発』(2020.6)
『プロティアンー70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本論』(2019.8)
『教授だから知っている大学入試のトリセツ』(2019.3)
『辞める研修 辞めない研修ー新人育成の組織エスノグラフィー』(2019.3)
『先生は教えてくれない就活のトリセツ』(2018.7)
『ルポ 不法移民ーアメリカ国境を越えた男たち』(2017.7)
『実践するキャリアオーナーシップ』(2024.3)
『進化するキャリアオーナーシップ』(2024.3)
『キャリア・スタディーズ -これからの働き方と生き方の教科書』(2024.9)
※『これからのキャリア開拓』(2025 刊行予定)
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