BPaaSとは?
BPOやSaaSとの違い、サービスや事例を紹介

BPaaSとは、組織における特定の業務プロセスを外部企業へアウトソーシングし、外部企業の知見およびITツール(SaaS)の力を借りて、業務効率化を実現するサービスです。
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の進化版とも呼ばれ、DX推進を図る企業から注目を集めています。
この記事では、BPaaSとBPO、SaaSの違いを説明し、メリットやデメリット、具体的な導入事例を紹介します。

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BPaaSとは?

BPaaS(ビーパス/ビーパース、Business Process as a Service)とは、特定の業務プロセス全体を外部企業へアウトソーシングするクラウドサービスのことです。BPaaSという言葉は、アメリカに拠点を持つコンサルティング企業・ガートナー社によって定義づけられました。

SaaS(インターネット経由でサービスを利用できる、クラウド上のソフトウェア)を活用してBPOを進めるビジネスモデルが、BPaaSに当てはまります。

BPaaSで外部委託できる業務プロセスの例は、次のとおりです。

  • 給与計算
  • 人事管理
  • 調達管理

バックオフィス業務を外部委託することで、社員はコア業務に集中できる点が大きなメリットです。

これまでもBPaaSは日本国内に存在していました。しかし、大企業や公的機関向けのサービスがほとんどで、中小企業はコスト面で導入が難しい側面があったといえます。

今では、中小企業も取り組みやすい価格帯のサービス提供が始まっています。さまざまな業界のDX推進を後押しできる解決策として、BPaaSが注目されるようになりました。

BPaaSとBPO・SaaSとの違い

BPaaSは、BPOとSaaSを掛け合わせた事業形態です。ここでは、BPOとSaaS、BPaaS、それぞれの特徴を整理して見てみましょう。

図1

図で示す通り、BPOとSaaSを掛け合わせたビジネスモデルが、BPaaSです。

SaaSを利用することで、業務効率化を図りながらノウハウやデータをクラウド上に集約し、蓄積できます。クラウドサービスの活用で業務効率化やDXの推進につながる点が特徴です。

関連リンク:業務改善のためのBPOとは? 定義やメリットを図解と事例で徹底解説

BPaaSの市場規模

BPaaSの市場規模は、今後大きく拡大していくと見込まれています。

市場調査コンサルティングを手掛ける「株式会社SDKI」が2023年8月に発表した調査レポートによると、BPaaSの市場規模は2017年の402億米ドル(約6.0兆円)から、2022年には687.6億米ドル(約10.3兆円)へと成長。年平均成長率は11.3%になると予測され、とくにアジア太平洋(APAC)では大きな市場成長が見込まれています。

このようにBPaaSの需要が急速に拡大している理由として、

  • 柔軟で迅速な対応ができる点
  • 従量課金制でコストパフォーマンスが良い点

などが挙げられています。
その一方で、成長の抑制要因として「データセキュリティへの懸念」も考えられます。

参考・出典:BPaaSの世界市場の調査レポート|SDKI

BPaaSのメリットとデメリット

BPaaSをメリットとデメリット、双方の面から見ていきましょう。

メリット

(1)ノウハウやデータをクラウドに蓄積できる

BPaaSの大きなメリットとして、業務関連のデータやノウハウをすべてクラウド上に集約し、蓄積できる点が挙げられます。

たとえば人事管理のために複数のソフトウェアを導入しながら、ExcelやWordにも重要な情報を保存している場合、データが散在してしまいます。

社内データが散在すると、以下の課題が生じやすくなります。

  • データ検索が煩雑
  • 人や部署を超えて、データ共有・連携が困難

そこでBPaaSを導入すると、ノウハウやデータをひとつのサービス内に蓄積でき、柔軟な連携が実現しやすくなります。

(2)コストを削減できる

BPaaSの2つ目のメリットは、コストを削減できる点です。

BPaaSでは、自社で多大なコストを投じてシステムを開発する必要はありません。外部企業が提供するサービスを契約すれば、業務に最適なクラウドサービスを利用できるため、初期コストを大きく低減させることが可能です。

なお、導入後の運用フェーズでは「月額●円」「年額●円」といったサブスクリプション契約が想定されます。この月額(または年額)は、企業規模や、クラウドサービスを利用するメンバー数に応じて柔軟に決められるケースが多く見られます。

(3)業務効率化が実現する

BPaaSの3つ目のメリットとして、業務効率化が実現する点が挙げられます。

BPaaSで利用するクラウドサービスは、そもそも業務効率化や自動化を目的とした、汎用性のある製品です。提供元は、製品がさまざまな企業に導入されるケースをあらかじめ想定し、どの会社でもベストプラクティスを発揮できるよう、サービスのアップデートに継続して取り組んでいます。

業務効率化や自動化など、自社が解決したい課題にフィットしたサービスを精査して導入することで、継続的な生産性の向上が期待できるでしょう。

 

デメリット

(1)セキュリティリスク

BPaaSにはセキュリティリスクに関するデメリットも存在します。

たとえば、給与計算、人事管理、調達管理などの業務プロセスを外部委託する場合、不正アクセスにより個人情報や機密情報が流出するケースも想定されます。

セキュリティリスクはゼロではないため、BPaaSのサービスを検討する際は、委託先のセキュリティ対策の確認が必須です。

(2)特定の企業に依存することになる

BPaaSのもうひとつのリスクは、「特定企業への依存」です。

システム障害の発生などの問題が委託先に生じた場合、トラブル解決までは委託業務が止まるリスクもあるでしょう。

そこでBPaaS導入時には、以下の点を取り決めておくことが大切です。

  • 緊急時のワークフローを事前に検討する
  • SLAを締結する

SLA(Service Level Agreement:サービスレベル合意書)とは、委託先が保証するサービス内容や品質、責任範囲を契約時に定め、互いに合意を締結することです。

何らかの問題が発生した場合でも、スムーズに業務が遂行できるように対策を検討しておきましょう。

BPaaSのサービス例

ここからは、BPaaSのサービス例を具体的に紹介します。

人事管理サービス

“女性にっこり”

BPaaSのサービス例として、人事管理サービスが挙げられます。たとえば中小企業の人事評価制度の設計に、BPaaSを利用するケースを見てみましょう。

通常、人事評価制度の新規設計は経営コンサルティング会社に依頼して、要件定義などのプロセスを積み重ねて進める必要があります。しかし、時間やコストがかかる課題もあり、小規模な会社では着手を決断できないケースも。

そこでBPaaSを利用すると専門のコンサルタントが制度設計や構築を担当し、人事評価に特化したクラウドシステムを提供。さらに運用フェーズまでサポートしてもらえます。

給与計算サービス

次に、給与計算サービスが挙げられます。

給与計算業務に特化したBPaaSを導入すると、給与計算プロセスを丸ごとアウトソーシングできます。

BPaaSを利用するメリットは、次のとおりです。

  • 業務プロセスを丸ごと外部へ切り出せる
  • 給与計算業務に必要なツールやソフトウェアの導入や運用の手間が不要
  • 自社内で給与計算担当者を維持しなくてよい
  • 評価・教育など、より付加価値の高い業務にリソースを使える

給与計算ソフトを自社内に導入して従業員が業務を遂行する場合よりも、高い生産性向上を期待できるでしょう。

カスタマーサービス

“コールセンター”

電話やチャットで顧客対応を担当するカスタマーサービスも、BPaaSで効率化できます。

BPaaSを活用すると、以下のようなメリットが得られます。

  • コールセンターやヘルプデスク業務を丸ごと外部委託できる
  • 自社内でオペレーターを維持する必要がなくなる
  • 豊富な知見・ノウハウを利用できる
  • クラウドにシステムを移行することでコストや運用の手間を削減できる
  • チャットボットや、IVR(自動音声応答機能)による自動化が実現する

自社内でカスタマーサービス業務をすべて対応する場合よりも、電話の混雑解消や品質向上につながりやすくなります。

BPaaS導入に向いている企業

では、どういった企業がBPaaS導入に向いているのかを紹介します。

グローバル展開している企業

グローバル展開している企業は、BPaaS導入の検討をおすすめします。BPaaSを導入すれば、規制や法律など現地に適したサービス提供が可能です。

国外に展開しているBPaaS事業者であれば文化的な違いに対応できるため、スムーズに業務を進められます。

専門知識が求められる企業

専門的な知識が必要とされる企業でも、BPaaS導入は役立ちます。税務申告など頻繁に法改正がある業務では、専門知識が必要不可欠です。

BPaaS事業者に委託すれば即座に対応できるだけでなく、業務の精度を高められます。

業務推進を図りたい企業

業務推進を考えている企業は、BPaaSを導入するとプロフェッショナルな人材による業務推進を図れるかもしれません。

ITへのリソース投入が難しいスタートアップや中小企業にこそ向いています。

BPaaSの導入事例

ここからは、実際にBPaaSを導入して業務効率化を実現した企業の事例を紹介します。

Chatworkアシスタントを活用

介護をはじめとする福祉事業を、全国173の事業所で展開する「株式会社3eee」。BPaaSの仕組みを使った「Chatworkアシスタント」を導入しました。

  • 目的:社内研修や社内アナウンスの効率化
  • 施策:「Chatworkアシスタント」に業務を依頼。専任サポート担当者が、最適なSaaSプロダクトを使い、業務設計や運用構築を実施。日々の運用も代行。
  • 成果:最小限のコストで、業務自動化と連絡漏れの防止が実現

参考・出典:Chatwork「Chatwork、SaaSの進化版・BPaaSの仕組みを使ったChatwork アシスタントを正式リリース」

②建設業界でPhotoructionを活用

「Photoruction(フォトラクション)」は、建設業向けBPaaSとして、大幅な生産性向上が期待できるクラウド型の製品です。写真管理や図面管理、工程管理など、建築現場における業務プロセスをBPaaSの仕組みで効率化。ゼネコンから中小企業までの建設DXをサポートしています。

建設会社である「スターツCAM株式会社」は、Photoructionを導入し、業務時間の短縮に成功しました。

  • 目的:業務効率化と時間削減
  • 施策:Photoructionの導入で現場写真や図面データを一元管理。現場における竣工検査などのタスク・進捗管理にも活用。
  • 成果:スタッフはiPadだけで現場に出られるようになり、現場作業が楽になった。さらに写真管理が効率化し、業務の時間短縮に成功。若手人材の教育に注力する時間が作れるようになった。

参考・出典:Photoruction「建設BPO機能も活用し業務時間短縮に成功。全社導入で更なる効率化を目指す!」

業務を外部委託して効率化を実現しよう

BPaaSは、特定の業務プロセスに関して豊富な知見を持ったプロの力と、ITの力を借りて、業務を大きく効率化できる有効な手段です。

昨今あらゆる業界で人手不足が課題となっています。人手不足の解決に向けて、業務プロセスを丸ごと外部に切り出せる、BPaaSやアウトソーシングを活用すると良いでしょう。

自社リソースをコア業務に集約し、未来への投資になる人材育成など、高付加価値業務に注力する視点を持つことが、企業の持続的成長のために重要です。

Adeccoのアウトソーシングサービスは、業界や業種を問わず効果的な業務体制の構築に向けて提案が可能です。20年以上にわたり培ってきたノウハウを生かし、生産性や品質向上に向けてサポートしています。ご関心がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

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