【事例あり】テレワークで重要性が増すチームビルディングについて網羅的に紹介

生産性の高い組織をつくるには、チームに所属するメンバー同士がお互いに認め合い、主体的に能力を発揮できる環境づくりが必要です。

チームビルディングは、このような組織をつくるために重要なプロセスを担います。ゲームやワークショップなどを通して、共通の目的を達成することで、メンバー間の信頼関係や一体感を高めていきます。

コロナ禍においてテレワークが急速に普及し、オンラインでのコミュニケーションに戸惑う企業も増えています。そのような企業にとってもチームビルディングは有効な手だてです。この記事では、チームビルディングの目的や役割、手法・事例などを詳しく紹介していきます。

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チームビルディング

チームビルディング(team building)は直訳すると「チームをつくり上げる」ことを指します。
具体的にはメンバーが目標に向かって、それぞれの個性や能力を生かしながら主体的かつ一丸となって取り組むためのチームづくりを行うことです。

2015年のラグビーワールドカップにおいて、日本代表が世界ランク3位の南アフリカに勝利するという結果を残しました。このときに行われたチームビルディングの手法が「Japan Way」として注目を集め、ビジネスでも頻繁に用いられるようになったという経緯があります。

当時、ヘッドコーチに就任したエディー・ジョーンズ氏は日本チームを徹底的に観察し、その強みや弱みを把握、そのうえで強みを伸ばす戦略を採用したとされています。

チームビルディングを行う目的

チームビルディングを行う目的は、役職・ポジションを問わず、お互いについて認め合う関係をつくることで組織全体の生産性を高めることです。具体的には以下の3つになります。

チームの目的達成

ビジネスにおいてチームビルディングを行う大きな目的は、良好な人間関係や組織内のいいサイクルをつくり、チームの目標を達成することです。

売り上げ目標やコスト削減目標など、組織が掲げた目標をメンバーが自分ごととして捉え、個性や能力を生かして能動的かつ活動的に業務を遂行できるようになるために、さまざまな取り組みを行います。

コミュニケーションの活性化

チームビルディングの過程では、ワークショップなどを通じてコミュニケーションが活性化します。

生産性を高め目標を達成するには、メンバー間の活発な意見交換は必要不可欠です。チームビルディングを通じて互いを深く理解できれば、コミュニケーションの質も高まります。とくに若手メンバーにとっては、積極性や主体性を身に付けるよい機会となるでしょう。

マネジメント層の育成

チームで目標達成するには、当然ながらリーダーのマネジメント力を磨く必要があります。そのため、チームビルディングの取り組みそのものを、マネージャーやリーダーといったマネジメント層の育成のために行う場合もあります。

マネージャーやリーダーが自らチームビルディングに取り組むことで、将来、事業の中核を担うマネジメント層がしっかりと育てられるのです。

チームマネジメントとの違い

チームマネジメントも、チームの目標達成や生産性向上のために行います。その違いはなんでしょうか?

チームビルディングがコミュニケーションや相互理解に重きを置いているのに対し、チームマネジメントは業務効率化や動機づけ、評価など、その取り組み範囲が多方面にわたるのが特徴です。

チームマネジメントのなかにチームビルディングが含まれるというイメージをもってもらうとわかりやすいでしょう。

チームビルディングのメリットや効果

チームビルディングのメリットや効果にはどのようなものがあるのでしょうか? 具体的に確認していきましょう。

エンゲージメントの向上

チームビルディングを行うことで、従業員のワーク・エンゲージメントを高めることができます。意見が言いやすく、働きやすい環境ができ、それによりチームの生産性の向上につながります。

生産性があがることで、個々のメンバーに対する評価がされるようになるとモチベーションもさらに高まるでしょう。

チームビルディングに取り組むことで、このようなプラスのサイクルを生み出すことにつなげられます。

離職率の低下や、早期離職の予防

メンバーの離職や定着率は、人材の流動性が高まっている現在では多くの企業の悩みになりつつあります。チームビルディングによってワーク・エンゲージメントを高められれば、離職率なども改善できます。

コミュニケーションが活発になることで、メンバーぞれぞれの悩みや課題を吸い上げやすくなる効果もあるでしょう。

可視化された個々の課題に対しては、人事とも連携しながら適切なフォローを行うこともできます。その結果、従業員満足度を高められ、離職率や定着率が改善されることになります。

組織のMVVの浸透

チームビルディングは、企業における理想の姿・あるべき姿を言語化した、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を浸透させることにもつながります。研修やワークショップを通して、事業や仕事の目的・あるべき姿について再認識する機会を設けられます。

MVVを深く理解することで、目的意識をひとつにでき、よりチームの一体感が得られるといえるでしょう。

タックマンモデルとは

チームビルディングに関する理論としてアメリカの心理学者、ブルース・タックマンの理論が有名です。チームの成長を5つのステージに分類するタックマン理論は、1960年代に開発されて以来、70年代に改良され今に至るまでチームビルディングにおける基本的な考え方となっています。

1形成期(Forming)

チームが形成された最も初期の段階が形成期です。メンバーが互いのことを十分理解しておらず、目標や目的に対して能動的ではなく、受動的な状態を指します。この段階では、まずは互いに理解を深めあうための取り組みが重要といえるでしょう。

チームビルディングではゲームやイベントなどの施策を通じて、チームや会社組織への理解を促進させるフェーズになります。

2混乱期(Storming)

混乱期にはチームにコミュニケーションがうまれ、個々の役割や責任、方針などについて活発に意見交換が行われます。それぞれの立場や考え方の違いが鮮明になり、ときに衝突や対立が生まれやすくなります。

このときにはメンバーの「心理的安全性」をいかに確保するかが重要になるでしょう。心理的安全性とは、どんな言動をしても、チームが受け入れてくれるだろう、という強い安心感のことです。

心理的安全性を醸成するには、チームビルディングのプロセスを経た、日々の前向きなコミュニケーションが欠かせません。

3統一期(Norming)

チームのメンバーが目標を共有し、チーム内でのルールや指針が明確になる段階です。メンバーは目標や課題に対し共通認識をもち、それぞれの役割や責任を理解するようになります。

課題に対しチームとしてどのように解決していくべきか、それぞれのメンバーはどう役割分担すべきかなど、リーダーはメンバーの強みや弱みを的確に把握した上で、マネジメントを行う必要がでてくるでしょう。

4機能期(Performing)

課題をチーム一丸となって乗り越え、さらに結束力が強まってくる段階です。共通の目標に対して、各メンバーが役割を認識し、それぞれ主体的かつ能動的に行動するようになってきます。

組織の課題を自分ごととして捉え、チーム内において活発で建設的な意見交換がなされるようになります。チームとしてはここである程度完成された段階といえるでしょう。この状態を維持・向上させることが重要となります。

5散会期(Adjourning)

プロジェクトの終了などにより、チームがその役目を終えた状態が散会期です。チームは解散となりますが、そこで得た知見やノウハウなどは集合知として組織にストックされることが理想となります。

集合知を蓄積するためには、社内Wikiなどノウハウを記録して共有する方法をあらかじめ決めておくのがよいでしょう。

Googleの調査から学ぶチームビルディングのポイント

Googleは、チームビルディングのプロセスにおいて何が重要なのかリサーチを行い、生産性の高いチームに固有の条件を見出しました。チームビルディングを行ううえで参考になる点も多いためご紹介します。

心理的安全性

Googleはチームがパフォーマンスを発揮するための最も重要な要素として「心理的安全性」をあげています。

チームビルディングを活用し相互理解を深めることは、心理的安全性を醸成するのに役立ちます。チームのルールとして相手の言動を否定しない、といった項目を定めることも有効です。

相互信頼

互いの信頼性が高いチームは、協力し補完しあい生産性を高めることに注力しています。反対に信頼性が低いチームは、成果に対する責任を互いに転嫁するという悪循環に陥っています。

相互信頼を高めるためには、タックマンモデルの形成期や混乱期にしっかりとメンバー同士の理解を深めることが重要です。

ワークショップ、あるいはオフサイトミーティングなどの取り組みは、メンバーの新たな面を引き出し、相互理解や信頼感を生み出す機会になります。

構造と明確さ

構造と明確さとは、チームが目標を達成するうえで、個々の役割や責任が明確になっている状態です。チームメンバーが個々の役割をしっかりと理解し、受け入れたうえで行動することが重要になります。

タックマンモデルでは混乱期から統一期にかけて、リーダーが中心となって役割やルールを定義します。個々の目標を定めるには「OKR(Objectives and Key Results)」を使うのも効果的でしょう。

「OKR」とは、シリコンバレーのIT企業において広く採用されている目標管理の手法です。目指す結果や目標を「定性的」かつわくわくするような、人を鼓舞する内容に設定し、行動した結果を「定量的」に表すというやり方が取られます。

仕事の意味

それぞれのメンバーが仕事に対する目的意識を認識することが重要です。ここでいう「仕事の意味」とはあくまで個人としてのものであり、収入を得る、キャリアアップするなどさまざまです。

チームビルディングあるいは日々のコミュニケーションにおいて、メンバーそれぞれがどのような目的意識を持っているか、つまり「どうなりたいのか」をリーダーは正しく把握しておく必要があります。

インパクト

ここでいうインパクトとは、チームメンバーが自分の行動や成果がチームの目標に貢献していると感じられているかという観点です。つまり、自分の仕事に対するやりがいや意義を感じられているかどうかです。

タックマンモデルの機能期においてチームの状態を維持、向上させるために重要となってきます。個々の成果を可視化する、1on1ミーティングなどでフィードバックする、表彰制度を活用するなどが有効です。

効果測定

またGoogleはその調査のなかで、チームを評価することの重要性についても言及しています。チームの評価は、売り上げや生産性といった定量的なものだけでなく、チームへのアンケート調査やヒアリングなど定性的な指標でも行えます。

定性的な評価も行うことで、チームビルディングがどの程度、効果を発揮しているのかを測定し、改善につなげることが可能になります。

チームビルディングの手法

チームビルディングにはいくつか手法があります。コロナ禍でテレワークが普及したことにより、需要が高まっているオンラインでできるものも含めて、代表的なものをいくつか紹介します。

ゲーム

チームビルディングでは、互いに打ち解けあい、理解を促すためにゲームもよく用いられます。制限時間内に乾燥パスタとマシュマロ、簡単な道具でどれだけ高いタワーを立てられるか競う「マシュマロチャレンジ」や、宇宙で不時着してしまったというシチュエーションのなか、残されたアイテムに優先度をつける「NASAゲーム」などが有名です。

オンラインでゲームを実施するケースも増えてきており、「NASAゲーム」もオンラインで実施可能です。人と接する機会が少ないといわれるテレワークでもゲームを通じて盛り上がったり、一体感を得ることができたりします。

イベントやアクティビティ

スポーツや合宿などのイベントやアクティビティも、チームビルディングに役立ちます。代表的なアクティビティにはキャンプやバーベキュー、サバイバルゲームなどがあり、チームでひとつの目標に対して、一丸となって取り組み成果を出すという達成感を得られます。

普段の仕事では見られない意外な一面も発見でき、相互理解にもつながるでしょう。

研修やワークショップ

チームビルディングに関する研修やワークショップを行うことも代表的な手法の一つです。チームビルディングの意義や目的、考え方などを学べて、MVVの再確認などもできます。オンラインで参加できる外部研修やセミナーも開催されているので、活用できる機会が増えています。

1on1ミーティング

1on1ミーティングを行い、個々の状況や課題・ニーズを理解することはチームビルディングに非常に有効です。メンバーの仕事の目的、将来のありたい姿、今何に悩んでいるかといったことも、定期的に1on1ミーティングを設定することで吸い上げやすくなります。

テレワーク中などはコミュニケーションの機会も限られるため、オンラインで1on1ミーティングを行うこともおすすめです。

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チームビルディングの取り組み事例

チームビルディングにはどのような成功事例があるのでしょうか? 3社の取り組みをご紹介します。

株式会社メルカリ

フリマアプリなどの事業を手掛ける株式会社メルカリ。同社のPRチームではチームビルディングの一環として定期的に「PRランチ」を実施しています。「PRに関するディスカッション」など毎回テーマを設定し、コロナ過においてもWeb会議ツールを活用して、オンライン上で開催しています。

また別のチームでは「Gartic.io」というチャット形式のゲームをオンラインで行うなど、テレワークで減りがちな「人と話す機会」を、オンラインツールを活用し増やすことに成功している事例といえるでしょう。

コミュニケーションが希薄になることで、メンバーの心理的な不安が増すこともあるため、同社のような取り組みは、テレワークを行う企業にとって参考になるのではないでしょうか。

参考:リモートでチームビルディング!?メルカリCRE Mobileチームの試みに参加してみた #メルカリな日々 | mercan (メルカン)

株式会社ヤッホーブルーイング

株式会社ヤッホーブルーイングは「よなよなエール」という銘柄で知られるビールメーカーです。2020年時点で、15年連続の増収増益となっており、その背景にはチームビルディングへの積極的な取り組みがあります。

楽天株式会社が楽天大学という取り組みのなかで提供していた、TBP(チームビルディング・プログラム)を経営トップ自ら受講し、「共通の目標」と「メンバーの強みを理解すること」の重要性を実感したことが、同社がチームビルディングに取り組むきっかけとなりました。学んだ内容を同社流のTBPにアレンジし、継続的に実施しています。

アレンジしたヤッホーブルーイング流のTBPでは、外部講師を招いたプログラムや、リーダー層を対象にしたプログラムなど豊富なバリエーションが用意されている点が特徴です。3時間で完結する短いプログラムなどもあり、子育てや介護など、家庭の事情で時間を捻出しにくいメンバーも参加しやすい工夫がされています。

その活動が評価され2017年には「働きがいのある会社」ベストカンパニーに選出されています。

そんな同社も、赤字から脱却したばかりの2008年ごろの社内における雰囲気はとても暗いものだったそうです。そのような状況から「働きがいのある会社」に選出されるまでに変貌を遂げたことは、チームビルディングの効果を大いに示しています。

研修とワークショップという形で、チームビルディングそのものの大切さを従業員に伝えている点も大きなポイントでしょう。

参考:ヤッホーブルーイングが「Work Story Award2020」受賞 | 株式会社ヤッホーブルーイング コーポレートサイト

株式会社ソニックガーデン

ソフトウェアの企画開発・運用などを行う株式会社ソニックガーデンでは、2016年から全社員がテレワークで勤務しており、管理職もおいていないという先進的な企業です。多くの企業がそうであるように、コロナ過によって経営陣と従業員だけでなく、従業員同士の関係が希薄になることへの危機感を持っていました。

そこで同社は社長を中心とした社内広報チームを発足し、YouTubeで「社内テレビ」の放映をスタート。会社からの強制や押し付けではなく、「自主的に見たくなる番組づくり」を目指し取り組んでいます。

具体的には毎週違う社員をゲストに呼び、プレゼンしてもらうことでその人の理解を深めたり、幹部に匿名で質問できる人生相談コーナーなども開催したりしています。

多面的に同僚の人柄・考えについて知る機会をつくることで、間接的な離職率の抑制につながっているという手ごたえもあるそうです。

社内での視聴率調査の結果、社員の95%がほぼすべての回を視聴するなど、同社の欠かせない社内広報ツールとなっています。

参考:全社員リモートワークのソニックガーデンが 社内広報の取り組みで「Work Story Award 2020」を受賞

まとめ

本記事ではチームビルディングの目的やメリット、手法などを具体的にお伝えしてきました。テレワークが普及したことで、時間を効率的に使えるなど、メリットが生まれる一方、コミュニケーションの問題が顕在化しています。オンラインも含め、チームビルディングはますます重要になるでしょう。

具体的な手法を選ぶ際には、実施する人数の多寡や職種などを基準として選んでみるのも一つの手です。

最初はうまくいかないこともあるかもしれませんが、試行錯誤しながら、自社に合った方法を探してみてください。

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