ストレスチェックの対応はできていますか?導入手順~実施までの流れを解説

2015年12月から施行された「ストレスチェック制度」、職場環境の改善に役立てているでしょうか。昨今、仕事によるストレスが原因でメンタル不調になる労働者が増加傾向にあり、企業にとってメンタル不調の予防は重要な課題の一つとなっています。

労働者のストレスの程度を把握することは、メンタル不調の予防につながります。働きやすい職場づくりを進めるには、労働者自身のストレスへの気づきと予防、職場環境の改善が大切です。ここでは、ストレスチェック制度の導入から実施までの流れを解説します。

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ストレスチェックとは

近年、仕事や職場での人間関係に関して強い不安や悩みを抱え、ストレスを感じている労働者の増加が問題となっています。そのため、積極的に心の健康の保持増進を図るべく「メンタルヘルス指針(労働者の心の健康の保持増進のための指針)」が、2006年3月31日に公表されました。

しかし、仕事による強いストレスが原因で精神障害を発症し労災認定される労働者は、2006年度以降も増加。2014年6月25日に公布された「労働安全衛生法の一部を改正する法律」でストレスチェック制度が創設されました。このための検査を「ストレスチェック」と呼びます。

ストレスチェックの目的と対象者

ストレスチェックの目的は、メンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)にあります。労働者のストレスが高い状態の場合は、医師の面接を受けて助言をもらい、会社側に仕事の軽減措置を実施してもらうなど、職場環境の改善につなげることが重要です。

ストレスチェックの対象者は「常時使用する労働者」です。「常時使用する労働者」とは、次のいずれの要件をも満たす社員が該当し、パートタイム労働者や派遣労働者も含まれます。

  1. 1.期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年以上である者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む)
  2. 2.その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること

ストレスチェックの実施者は、医師、保健師、厚生労働大臣の定める研修を受けた看護師、精神保健福祉士などです。事業主は、この中からストレスチェックを実施する者を選定します。外部へ委託することも可能ですが、事業場の状況をよく理解している産業医が実施者になることが望ましいとされています。

対象となる企業と実施頻度について

労働者が常時50人以上いる事業所がストレスチェック実施義務の対象となります。常時50人以上とは、企業規模ではなく事業所単位で人数をカウントするので、企業全体で50人以上の労働者がいても、営業所や支店など事業所単位で50人以下であれば実施義務の対象外となります。

常時50人未満の労働者を使用する事業場の場合は努力義務ではありますが、メンタルヘルス不調の未然防止を目的とするものであり、できるだけ実施するようにしましょう。実施頻度は、1年以内ごとに1回、定期的に行う必要があります。実施後は、「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」を所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。

ストレスチェックを導入するには

ストレスチェックの導入は以下の手順で進めていきます。

1. 導入前の準備(実施方法、社内ルールの策定)

最初に、会社として「メンタルヘルス不調の未然防止のためにストレスチェック制度を実施する」方針を示します。次に、事業所の衛生委員会で、ストレスチェックの実施方法を話し合い、以下のことを決めていきます。

  • 誰に実施させるのか(対象者の選定)
  • いつ実施するのか(実施時期)
  • どんな質問票を使って実施するのか(質問票の作成)
  • 面接指導の申出は誰にすればよいのか(申出の方法)
  • 面接指導はどの医師に依頼して実施するのか(面接指導の方法)
  • 集団分析はどんな方法で行うのか(集団分析の方法)
  • 結果は誰が、どこに保存するのか(管理する部署や管理方法)

話し合いで決まったことを社内規程で明文化し、労働者に周知します。

2. 実施者の選定

ストレスチェック実施者、ストレスチェック実施事務従事者、ストレスチェック制度担当者(制度全体の担当者)、面接指導を担当する医師を決めていきます。

  • ストレスチェック実施者は、医師、保健師、看護師・精神保健福祉士の中から選ぶ必要があり、外部委託も可能です。
  • ストレスチェック実施事務従事者は、質問票の回収、データ入力、結果送付など、個人情報を取り扱う業務を担当します。外部委託も可能です。人事権を持つ者は、ストレスチェック実施の事務に従事することはできません。
  • ストレスチェック制度担当者は、ストレスチェック制度の進捗状況を把握し、管理する担当者となります。実施事務従事者と異なり個人情報を取り扱わないため、人事課長など人事権を持つ者を指名することもできます。

3. 質問票の準備

ストレスチェックの質問票は、実施者の提案や衛生委員会の調査審議などを経て、事業者が決定します。ストレスチェックは法律で以下の3つの項目が含まれている必要があると定められています。

1仕事のストレス要因
職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目
2心身のストレス反応
心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目
3周囲のサポート
職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目

国が推奨する57項目の質問票があるので参考にするとよいでしょう。

(厚生労働省:職業性ストレス簡易調査票(57項目)

ストレスチェックを実施する方法について

ストレスチェックの実施の手順を見ていきましょう。

1. 質問票を労働者に配布

準備した質問票を労働者に配って記入してもらいます。セキュリティの確保や実施者以外は閲覧できないように制限がなされているなど条件を満たせば、オンラインでの実施も可能です。

2. 実施者が質問票の回収

記入が終わった質問票を医師などの実施者や補助をする実施事務従事者が回収します。その際、第三者や人事権を持つ職員が、記入が終わった質問票を閲覧することがないようにしなければなりません。

3. 医師による面接指導が必要な高ストレス者の選択

回収した質問票から医師などの実施者がストレスの程度を評価します。自覚症状が高い者、自覚症状が一定程度ある者、ストレスの原因や周囲のサポートに問題があるも者を高ストレス者として選択します。詳しくは、厚生労働省の「ストレスチェック制度実施マニュアル」を参照してください。

(厚生労働省:職ストレスチェック制度実施マニュアル

高ストレス者を選定する場合は、「心身のストレス反応」の評価点数が高い者を選ぶことが必要です。しかし、評価点数の合計が高い者だけを選ぶと、自覚症状が現れていない労働者や周囲のサポートが全くないと感じている労働者など、メンタルヘルス不調のリスクがある者を見逃してしまう可能性があります。「仕事のストレス要因」や「周囲のサポート」の評価点数の合計が著しく高い者も高ストレス者として選定するようにしましょう。

4. 実施者から本人へ結果の通知・保存

結果は、医師などの実施者や補助をする実施事務従事者が本人へ直接通知します。第三者が閲覧できないよう、実施者やその補助をする実施事務従事者が鍵やパスワードで厳重に管理しなければなりません。

実施者は面接指導対象者に対して、医師による面接指導を受けるように勧奨します。医師による面接指導を推奨された労働者は、面接指導の申出について結果を通知されてから1ヵ月以内にする必要があります。また、労働者から申出があった場合には、申出があってから1ヵ月以内に面接指導を行う必要があります。

面接指導を実施した場合、医師から就業上の措置の必要性の有無とその内容についての意見聴取を面接指導後1ヵ月以内に行う必要があります。面接指導の結果については、事業所で5年間保存しなければなりません。意見聴取を踏まえて、労働時間の短縮など必要な措置を実施しましょう。

ストレスチェックを実施する際に気を付けるべきこと

労働者が安心してストレスチェックを受けるためにも、実施する際に以下の点で気を付ける必要があります。

1. プライバシーの保護

ストレスチェックの結果や面接指導の結果などの個人情報は厳正に取り扱わなければなりません。実施者とその補助をする実施事務従事者には法律で守秘義務が課せられ、違反した場合は刑罰の対象になります。事業主が秘密を不正に入手するようなことがあってはなりません。個人情報は適切に管理しましょう。

2. 結果は、本人の同意なしに事業者に開示できない

会社が結果を入手するには、本人への通知後、本人の同意が必要になります。労働者の同意を得て結果の提供を受けた場合には、事業者は検査の結果の記録を作成して、5年間これを保存しなければなりません。

3. 面接結果をもとに労働者に不利益な取り扱いを行うことは禁止

次のことを理由に労働者に対して不利益な取り扱いを行うことは禁止されています。

  • ストレスチェックを受けないこと
  • ストレスチェック結果について事業者への提供に同意しないこと
  • 医師による面接指導の申出を行ったこと
  • 面接指導の要件を満たしているが、申出を行わないこと

また、面接指導の結果を理由として、解雇、退職勧奨、雇い止め、また、不当な自由による配置転換や職位の変更を行うことも禁止されています。

メンタルヘルス不調を未然に防止。アデコのストレスチェックサービス

自社でストレスチェックを実施するには、質問票の回収、データ入力、結果送付など煩雑な事務処理が伴います。そして、重要な個人情報を取り扱うストレスチェック制度の導入には、セキュリティ対策もおろそかにできません。

アデコのTLSP(トータル・ライフ・サポート・プログラム)は、企業の生産性の向上という観点からよりよい職場環境づくりに役立つソリューションを提供する独自の従業員支援プログラムです。専門の知識を持つ社員と外部機関が連携して、トータルな「メンタルヘルス対策」から「職場の活性化」まで、企業のニーズに合わせた組織の仕組みづくりを支援します。

アデコのトータル・ライフ・サポート・プログラム

TLSPでは、従業員の心身の健康を図るだけでなく、組織全体の生産性向上を行う上で重要な「メンタルヘルス対策」「組織の活性化」に焦点をあて、様々なサポートを展開しています。

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まとめ

ストレスチェックの目的は、メンタルヘルス不調の未然防止にあります。法的な義務を果たすだけでは意味がありません。今、企業に求められているのは、ストレスチェック制度を積極的に活用し、ストレスの少ない働きやすい職場環境をつくることです。メンタルヘルス不調を未然に防止することは職場にとってもよい結果をもたらします。ストレスチェックをきっかけにメンタルヘルス対策に取り組み、よりよい職場環境づくりに役立てましょう。

弊社では、上記のような人事ノウハウをわかりやすくまとめ、定期的に更新しております。
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Profile

社会保険労務士加治氏写真
加治 直樹氏
社会保険労務士

銀行に20年以上勤務し、融資及び営業の責任者として不動産融資から住宅ローンの審査、資産運用や年金相談まで幅広く相談業務の経験あり。在籍中に1級ファイナンシャル・プランニング技能士及び特定社会保険労務士を取得し、退職後、かじ社会保険労務士事務所として独立。現在は労働基準監督署で企業の労務相談や個人の労働相談を受けつつ、セミナー講師など幅広く活動中。中小企業の決算書の財務内容のアドバイス、資金調達における銀行対応までできるコンサルタントを目指す。法人個人を問わず対応可能で、会社と従業員双方にとって良い職場をつくり、ともに成長したいと考える。

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