Q53 需給調整指導官が派遣先にやってくる

労働局の需給調整指導官が派遣先指導のために来社するのですが、何をしに来るのでしょうか。また、なぜ、派遣社員を受け入れていると知っているのでしょうか。

労働局需給調整事業部(都道府県により課、室)が指導のために派遣先を訪問することは珍しいことではありません。派遣元は3年~5年に1回程度、定期指導監督を受けています。その際に派遣先の事業所名と従事する業務内容、人数等を記載した名簿を提出しています。労働局はその名簿によって派遣社員を受け入れている事業所であることを把握し、ときどき派遣先の指導に行きます。原則として突然、訪問することはなく事前連絡があり、日程調整の上で訪問しています。
指導の際に確認するのは、主に以下の4点です。

  1. 派遣契約に関する書面
  2. 派遣先管理台帳
  3. 事業所単位の抵触日
  4. 派遣社員の就業環境

派遣先管理台帳は、派遣開始時にサービスの一環として派遣元から送付されることもありますが、本来は派遣先が作成するものです。また、派遣先管理台帳の記載事項には派遣開始時には記載できないものも含まれているため、派遣元から受け取った派遣先管理台帳そのままでは不適切な台帳ということになります。記載事項のうち「派遣就業をした日ごとの始業、及び終業した時刻並びに休憩した時間」は、派遣就業の日ごとに追加される事項であり、タイムシート等の勤怠記録を指していますが、始業・終業時刻だけ記載して、休憩時間の記載がないことを指摘されることが多いようです。「派遣労働者から申出を受けた苦情の処理に関する事項」「教育訓練を行った日時及び内容」は、苦情を受け付けた際、教育訓練を実施した際に書き加える必要があります。

事業所単位の抵触日に関して、受け入れ期間を延長した場合には、保存が義務付けられている意見聴取の結果を確認すると思われます。

  • 事業所単位の抵触日を延長した場合の意見聴取内容の保存義務はQ48をご覧ください。

派遣社員の就業環境については、苦情処理や均衡待遇確保に関するヒアリングですが、派遣先担当者だけではなく、就業中の派遣社員にヒアリングを実施することもあります。
確認の結果、問題がなければそのまま終了。不適切な事項がある場合は、文書で是正を求められるので、是正結果を文書で報告して完了です。

POINT派遣先管理台帳の例外

派遣先管理台帳は、事業所における派遣労働者の数と当該派遣先が雇用する労働者の数を加えた数が5人以下のときについては派遣先管理台帳の作成義務はありません。ただし、労働時間の管理は派遣先の役割と定められているので勤務時間は記録してください。

Profile

答える人
社会保険労務士 中宮 伸二郎 (なかみや しんじろう)

立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。労働法に関する助言を通じて、派遣元企業、派遣社員双方に生じやすい法的問題に詳しい。2007年より派遣元責任者講習講師を務める。

関連記事

お役立ち情報 に戻る

人材に関するお悩みがございましたらお気軽にご連絡ください