日本人なら知っておきたい日本の芸術文化や伝統工芸品

芸術の秋と呼ばれる季節になると、美術館や博物館を訪れて絵画や工芸品といった美術品鑑賞を楽しんだり、歌舞伎や落語に足を運んでみたりと、日本の伝統的な文化や芸術に触れてみるのはいかがでしょうか。
日本の多彩な伝統文化は、長い歴史とともに現代まで継承されており、知れば知るほどその奥深さや多様さが魅力に感じられます。
ここでは、伝統芸能や伝統工芸など、日本の伝統文化に関する基礎的な知識をご紹介します。

「芸術の秋」といわれる由来

そもそも、「芸術の秋」と呼ばれるようになったのには、どのような理由があるのでしょうか。
まず、秋は暑さ・寒さがちょうど良く、過ごしやすい気候であることから、芸術品の制作活動に集中しやすいため、という説があります。また、雑誌で「美術の秋」という言葉が使われたことも由来だといわれています。俳句の季語には秋を表すものとして「芸術祭」があり、日本においては昔から秋は芸術に親しむ風習があったと考えられています。ほかにも、日本の有名な美術公募展は秋に開催されることが多いということも大きな理由といえそうです。
このようなさまざまな要素から、「芸術の秋」という言葉として定着したのではないでしょうか。

伝統芸能は教養や娯楽として楽しまれてきたもの

教養や娯楽として楽しまれてきた伝統芸能は、日本に古くから伝わる芸術や技能のことで、演劇や舞踊、演芸などがあります。それぞれの特徴を見ていきましょう。

情景や感情などを動きで表現する「舞踊」

リズムに合わせた動きによって、情景や感情などを表す舞踊には、雅楽や日本舞踊などがあります。

  • 雅楽
    雅楽は、「神楽」などの音楽と舞、管絃と舞楽、さらに声楽曲を合わせた芸能の総称です。宮中を中心に長く伝承されており、現在も宮内庁式部職楽部が、宮中の儀式や饗宴、園遊会といった行事において演奏しています。
  • 日本舞踊
    広義では日本の舞踊全般を指しますが、「舞楽」や「能楽」などの技法を継承し、洗練されて大成されたものが日本舞踊です。江戸文化で発展してきた「踊り」と上方で継承されてきた「舞」の2つの流れに大きく分けられますが、日本舞踊の起源になっている歌舞伎の中で表現される舞踊の枠にはまらない創作を目指す動きもあり、さまざまな流儀が存在します。

音楽と舞踊で表現される「演劇」

おもに音楽や舞踊によって成り立つ、現在の演劇のようなものには、能楽や歌舞伎、人形浄瑠璃文楽といった舞台芸術があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。

  • 能楽
    能楽は、室町時代から600年以上にわたって演じ伝えられてきた芸能です。演者が能面をつけて様式化された物語を演じる能と、セリフによる喜劇が展開される、狂言に分けられます。
    のちの歌舞伎や人形浄瑠璃文楽のほか、現代の芸術活動にも大きな影響を与えた伝統芸能です。

歌舞伎

歌舞伎の始まりは、奇抜な装束や髪型の扮装(ふんそう)で踊った「阿国(おくに)の踊り」だといわれています。江戸時代に当時の流行や芸能を取り入れながら発展した歌舞伎は、舞踊・音楽・セリフ劇などの要素を持つ総合芸術として確立され、現在に至ります。

  • 人形浄瑠璃文楽
    人形浄瑠璃文楽は、語り手である「太夫(たゆう)」と「三味線」「人形遣い」の三業が息を合わせる総合芸術です。三味線を伴奏に物語が語られる「浄瑠璃」に合わせて人形を操る「人形浄瑠璃」へと発展し、文楽座が専門劇場であったことから、「文楽」は人形浄瑠璃の代名詞として親しまれるようになりました。
  • 庶民のための娯楽である「演芸」
    演芸とは、公衆の場で芸を演じることを指し、落語など庶民のための娯楽のことを指します。
  • 落語
    演芸のひとつであり、日本の話芸の代表格が落語です。着物を着て座布団に座った演者(落語家)が、おもしろおかしく演じる芸能です。話の終わりには「下げ」や「落ち」があるため、明治時代に入るまでは「落とし噺(おとしばなし)」と呼ばれていました。

高い技術を誇る日本の伝統工芸

外国人観光客からも人気が高い日本の伝統工芸は、日本の物づくりの原点となっており、高い技術を誇ります。中でも、漆器や陶器、ガラス、織物などの日本の伝統工芸について見ていきましょう。

実用性と美しさを兼ね備えた「漆器」

漆器とは、漆の木の樹液を塗料として用いた食器のことで、美しさだけでなく実用性も兼ね備えています。木材や陶器などをベースとして作られており、輪島塗や山中漆器などがあります。

  • 輪島塗
    日本で最も有名な漆器が輪島塗です。石川県輪島市で作られており、下地に輪島地の粉(じのこ)を用いて漆を塗ります。他の産地とは一線を画した、丈夫さと優美さを兼ね備えた漆器です。輪島塗は装飾の美しさも特徴的で、金粉や銀粉で絵を表現した「蒔絵(まきえ)」や彫った部分に金を沈めた「沈金(ちんきん)」の美しさでも有名です。
  • 山中漆器
    山中漆器は、石川県の山中温泉地区で生産されています。また、山中温泉地区は、漆器の素材となる「木地」の生産が、質・量ともに優れていることで知られています。山中漆器の職人たちが作った木地の品質の高さから、輪島塗など他の産地に木地を提供することもあるほどです。山中漆器の職人が木地を作り、塗りに優れた輪島塗の職人が漆を塗って仕上げることで、より優れた漆器が完成するといわれています。

世界中から人気のある「日本三大陶磁器」

世界中に多くのファンを持つ日本三大陶磁器は、大きく分けて有田焼・美濃焼・瀬戸焼の3つに分けられます。

  • 有田焼
    佐賀県有田町と一帯の地域で焼かれた磁器の総称が有田焼です。非常に硬く丈夫で、耐久力があります。かつて佐賀県の伊万里港から海外へ輸出されていた有田焼は「伊万里焼」とも呼ばれており、海外では「Imari」と親しまれています。有田焼ならではの特徴は、色鮮やかな柄です。
  • 美濃焼
    岐阜県の土岐市、多治見市などおもに東濃地域で作られる陶磁器が美濃焼です。国内における陶磁器のシェアの50%以上を占めており、古墳時代からの長い歴史を持っています。色鮮やかな柄が特徴の有田焼とは異なり、「特徴がないことが特徴」といわれています。決まったスタイルもないため、美濃焼にはさまざまな陶磁器があります。
  • 瀬戸焼
    愛知県瀬戸市で作られる瀬戸焼は、かつて日本の陶器を代表する焼き物でした。現在、陶磁器のことを「瀬戸物」と呼ぶことがあるのはそのためです。釉薬(うわぐすり)を表面にかけているのが特徴で、耐久性の高さにつながっています。

英国の技術が始まりの「江戸切子」

明治時代、日本人が切子(カット)の指導をイギリス人技師のエマニエル・ホープトマンから受けたことで、現代にも伝わる江戸切子の伝統的なガラス工芸技法が確立されたといわれています。時代が進むにつれてさらにカット技術が進歩し、ガラス器も普及したことで、切子は盛んに生産されるようになりました。

大正時代以降はさらなる研究により江戸切子の品質も向上し、工芸ガラスの代表格として発展してきました。昭和60年には、江戸切子は東京都の伝統工芸品に指定され、平成14年になると国の伝統的工芸品にも指定されたのです。

稲作と同時に中国から日本へ伝わった「織物」

麻や絹、綿を使用した糸を植物などの染料で染め、縦横に組んで織り上げた布地のことを織物と呼びます。日本の有名な織物には、西陣織や結城紬などがあります。

  • 西陣織
    京都市北西部で作られており、始まりは古墳時代と長い歴史を持つ絹織物です。西陣織という名称となったのは、室町時代の応仁の乱がきっかけとされています。現在は12種類の品種が西陣織に指定されており、多彩な織り方があることが特徴的です。先染めをしてから織った生地は、後染めの染色法よりも丈夫でしわになりにくいという特徴もあります。
  • 結城紬
    鬼怒川流域で、奈良時代から作られてきた絹織物が結城紬です。名称の由来は、鎌倉時代の領主である結城氏とされています。現在は高級織物として知られている一方で、元々は養蚕業が盛んな地で副業として生産されていました。軽量で柔らかく、保温性にも優れた結城紬の着物は、上質な糸が使われていることから、経年変化によって魅力的な風合いが出てきます。

鮮やかな色で布地を染める「染物」

着物などの色や柄を染めるときの染めの技術は、元々は草木の色素を使用して行われていました。飛鳥時代以降には、中国や朝鮮よりミョウバンや硫酸鉄などを使用した染色技術が伝わり、カラフルな染めが可能になったといわれています。

  • 加賀友禅
    石川県金沢市の一帯で作られる染物が加賀友禅です。「加賀五彩」と呼ばれる藍、黄土、草、古代紫、臙脂(えんじ)を基調とした色合いが特徴で、ほかにも「ぼかし」や「虫喰い」などの独特な表現によって、写実的かつ繊細な模様の魅力が演出されています。金沢の美しい自然が絵画調を中心に描かれており、落ち着きのある武家の風格を現代にも伝えています。
  • 京友禅
    京友禅は、京都府一帯で行われる染色で、色彩豊かかつ絵画的に表現された動物や器物の文様が特徴的です。華やかな色彩が魅力の京友禅は、国内だけではなく世界中で人気となっています。独特な染色技法を採用しており、着物の模様の輪郭と隣り合う模様が混ざらないよう、糊を使用して染料のにじみを防いでいる点も京友禅ならではの特徴です。

強度と保存性に優れた「和紙」

日本の和紙の中では、現在の岐阜県南部にあたる「美濃国(みののくに)」で生まれた美濃和紙が有名です。およそ1300年前には、美濃和紙の原型である「美濃紙(みのがみ)」が作られていたといいます。楮(こうぞ)、三椏(ミツマタ)、雁皮(がんぴ)を原料とし、原料をうまく絡ませるためのネリ(粘液)としてトロロアオイ(黄蜀葵)を使用しています。
原料によって障子紙や便箋、封筒、紙幣、あぶらとり紙など、作られる紙製品の種類も変わってきます。

日本の伝統にふれてみよう

秋には美術館の特別展やイベント、歌舞伎や能楽といった舞台の開催も特に活発になり、さまざまな芸術に気軽にふれる機会が増えます。今まで知らなかった日本の伝統文化や芸術にふれてみることで、新しい発見や感動があるかもしれません。
今年の秋は日本の伝統文化にふれてみて、お気に入りの工芸品や文化を探してみてはいかがでしょうか。

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