Q33 産業医の機能強化を目的とした労働安全衛生法の改正

2019年4月1日から産業医の機能強化のために制度が改正されましたが、具体的にはどのような内容なのでしょうか。

職場巡視頻度の緩和と企業の産業医への情報提供が主な内容です。産業医に求められる役割が変化していること、産業医が対応すべき業務が増加していることから、効率的かつ効果的に職務を実施するための情報収集手段として職場巡視だけではなく企業からの情報提供および勧告の実効性確保が図られています。

事業主が産業医へ行う情報提供

  1. 長時間労働者に関する情報提供

    時間外・休日労働が1か月当たり時間を超えた労働者の氏名、時間外・休日労働時間数に関する情報を当該超えた時間の算定を行った後、概ね2週間以内に産業医に提供しなければなりません。なお、対象者がいない場合でも「該当者なし」と報告しなければなりません。

  2. 事後措置に関する情報提供
    健康診断、ストレスチェックの実施後の事業主が講ずべき措置に関して産業医に情報を提供しなければなりません。

     健康診断後の措置

    医師からの意見聴取を行った後、遅滞なく以下の情報を産業医に提供

    • すでに講じた措置の内容
    • これから講じる措置の内容
    • 措置を講じない場合その理由

    長時間労働者に対する面接指導後の措置

    ストレスチェック結果に基づく面接指導後の措置

  3. 産業医の求めに応じて情報提供
    労働者の業務に関する情報であって産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要と認めるものを産業医から提供を求められた後、概ね2週間以内に提供しなければなりません。

勧告の実効性確保

産業医は、あらかじめ事業者の意見を求めた上で、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができます。事業者は当該勧告を尊重し、勧告の内容及び勧告を踏まえて講じた措置の内容(措置を講じない場合はその旨、その理由)を記録し、3年間保存しなければなりません。
産業医の勧告が実効的になされるようにするため、以下の措置を講じてください。

  • 事業者は、産業医が必要な情報を労働者から直接収集する権限を付与すること。
  • 事業者は当該勧告を尊重し、勧告の内容及び勧告を踏まえて講じた措置の内容(措置を講じない場合はその旨、その理由)を記録し、3年間保存すること。
  • 勧告について衛生委員会に報告すること。
  • 産業医が辞任または解任されたときは、その理由を衛生委員会に報告すること。

巡回頻度を変更しない場合でも時間外・休日労働が1カ月あたり100時間を超えた場合、その労働者の氏名と超過時間に関する情報を産業医に速やかに提供しなければならないとされました。時間外・休日労働が1か月100時間超えた場合の医師の面接指導を確実に実施していくための措置です。

また、安全衛生法に基づく各種健康診断の結果、有所見者の就業上講ずべき措置を医師、歯科医師に意見聴取する際に対象者の業務に関する情報を求められた場合、提供することが義務付けられました。いずれの改正も過労死、メンタルヘルス対策をより有効に行うためのものです。

POINT職場の巡視

職場の巡視は作業環境の維持管理、労働者の健康障害の防止などを目的として行われます。産業医、衛生管理者どちらの職場巡視も「作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講ずること」とされています。具体的な点検項目は定められていませんので、衛生委員会でチェックすべき項目を検討しリスト化すると衛生管理者の週1回の職場巡視が実施しやすくなります。

Profile

答える人
社会保険労務士 中宮 伸二郎 (なかみや しんじろう)

立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。労働法に関する助言を通じて、派遣元企業、派遣社員双方に生じやすい法的問題に詳しい。2007年より派遣元責任者講習講師を務める。

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