テレワーク下のコミュニケーションは対話機会の確保と工夫が大切 ~楽天コミュニケーションズ事例~

コロナ禍に見舞われる前から、テレワーク導入に前向きに取り組み、オンライン会議システムやチャットツールなど、さまざまなコミュニケーションツールを積極的に活用してきた楽天コミュニケーションズ株式会社。

コロナ禍においては在宅勤務を基本とし、以前から実施していた「1on1ミーティング」などの強化に尽力。コミュニケーションの質を高める努力を重ねた結果、社員満足度はコロナ禍以前よりも高まっているといいます。

環境変化にいかに円滑に対応してきたのか。派遣社員も含めた全社的なテレワーク状況下で、コミュニケーションの質をどのように維持してきたのか。エンプロイー・エクスペリエンス部 部長の中丸博禎氏と、営業本部 パートナービジネス部 マネージャーの野田恵里氏に話を聞きました。

テレワーク下で社員エンゲージメントのスコアが最高値に

楽天グループにおいて通信事業を手がける楽天コミュニケーションズは、各種の通信サービスのほか、独自のオンライン会議システムなどを以前から開発・提供しており、日本のテレワーク環境整備に貢献してきた企業の一つです。今回のコロナ禍においても、感染拡大が国内で本格化した2020年3月、顧客企業が在宅勤務を円滑に実施できるよう「テレワーク導入支援プログラム」をいち早く提供しました。

もちろん同社自身も、コロナ禍の前から総務省や厚生労働省の推進する「テレワーク・デイズ」への参画など、自社のテレワーク導入に積極的に取り組んできました。コロナ禍においては、2020年2月半ばにテレワークの全面導入に向けて検討を開始し、まずは在宅勤務申請を前提としたテレワークを導入。その後3月下旬には「原則在宅勤務」の方針に切り替えました。通信事業という業務の性質上、高度な情報セキュリティ管理が求められる部署を除いて全社的にテレワークを導入した結果、全社員の9割以上が恒常的に在宅で勤務しています。

同社では毎月、社員エンゲージメントを測るパルスサーベイを実施しています。以前から上昇傾向にありましたが、コロナ禍以降さらに上昇し、最高値を記録したといいます。「想像以上に、テレワーク制度がうまく実施できたというのが率直な感想です」と、これまでテレワークの全面実施を主導してきた、エンプロイー・エクスペリエンス部部長の中丸博禎氏は振り返ります。

「メイン指標であるeNPS(エンプロイー・ネットプロモータースコア)が最高値というだけでなく、『コミュニケーション』や『コラボレーション』のスコアなどが特に高い数値を記録しています。テレワーク下の状況でこの結果には驚いたのですが、以前からテレワーク導入に取り組んできた経験と、コロナ禍における危機意識(センス・オブ・アージェンシー)の共有、今回取り入れた各種のコミュニケーション施策などがうまく機能したのだろうと感じています」(中丸氏)

どのようにテレワークを浸透させたのか

1経営陣の危機意識共有と企業風土

同社では、自社サービスも含め、以前から各種オンラインツールの活用を進めていたので、今回新たに導入したツールそのものはなかったといいます。その意味で非対面でのコミュニケーションに慣れていた面はありますが、それ以上に経営陣の危機意識の共有や企業風土がうまく機能したのではないかと中丸氏は話します。

経営環境が劇的に変化する中で、経営陣やマネジメント層が強い危機意識を共有し、不確実な状況の中で何がベストかを考え、さまざまな施策をスピード感を持って打ち出せたのが社員エンゲージメントにプラスに働いたのではないかと捉えています。また、組織としての敏捷性や変化への適応力を自認している楽天グループの社風といいますか、会社の強みが発揮できた面もあると感じています」

後述するように、同社では既存の「1on1ミーティング」や各種の研修プログラムをコロナ禍に伴って強化しています。それも「今のコロナ危機を、学びのインプット期間として前向きに捉えよう」という経営トップのメッセージがいち早く発信され、全社的に浸透していたことが背景にあります。これらが原動力となり、もともとあった仕組みをさらにブラッシュアップして、コロナ禍への対応力に変えることができたのだといえそうです。

2オンとオフに配慮したデジタルツールの活用

同社では以前から、ZoomやMicrosoft Teamsのほか、楽天グループのメッセージアプリであるViberなど、さまざまなオンラインツールを活用していました。とはいえ、大半の社員が日常的に在宅で勤務するような事態は想定していませんでしたので、テレワークの実践の中で、円滑なコミュニケーションのためのツールの使い方について、いろいろと配慮してきたそうです。

その一つが、コミュニケーションツールにおけるオンとオフの使い分けです。「たとえば、自宅で勤務中の派遣社員の方々に対し、業務に関する指示や連絡などをLINEで送るのは抵抗感があります。LINEはプライベートのコミュニケーションツールとして定着しているからです。そこで業務に関する連絡はMicrosoft Teamsのチャット機能を使ったり、ビジネス利用を前提としているViberを活用したりしています。細かいことにみえるかもしれませんが、非対面でのコミュニケーションの質を高めるには大切なことだと思います」

営業本部パートナービジネス部マネージャーで、派遣社員のマネジメントに携わっている野田恵里氏はこのように語ります。

「同様の理由で、当社のサービスである『モバイルチョイス“050”』を活用するケースが増えました」と中丸氏は付け加えます。

「これは、個人の携帯電話に業務専用の050番号を付与して、ビジネスとプライベートで番号と通話料を自動的に使い分けできるサービスです。一般に営業職の社員が、自分のプライベートの番号で得意先との業務用通話をするケースは珍しくありませんが、人事・総務・経理などバックオフィスの社員が在宅勤務中、行政などとのやり取りに個人の電話番号で通話するのは抵抗感があるはず。『モバイルチョイス“050”』なら番号の使い分けができるので、特にバックオフィスの社員にとっての利用価値が高まりました」(中丸氏)

3コミュニケーションの質的向上

オンラインツールを活用したとしても、オフィスで皆が顔を合わせていた出社時に比べればコミュニケーションの量は少なくなりがちです。意識的にコミュニケーション機会を確保していくことは、社員のモチベーション向上はもちろん、健康管理やメンタルヘルス維持のためにも重要といえます。

「基本的なことですが、オンライン会議では必ずビデオモードを『オン』にするよう徹底しています。たとえ画面越しであっても、顔を合わせることでお互いの様子がわかりますし、仮にメンタル不調の予兆があっても気づきやすくなります」(中丸氏)

オンライン面談の機会も増やしたそうです。

「以前から社長が主催するカジュアルラウンドテーブルを実施していましたが、毎月1回30分×3セットだったのを、毎月2回×6セットに倍増しました。以前は組織単位でグルーピングしていましたが、場の雰囲気に変化をつけるため、『同期の社員だけ』『今月が誕生日の社員だけ』、あるいは『女性のマネージャーだけ』を集めて、社長と一緒に会話させてみたり。もちろん社長と話せることも重要なのですが、社長が触媒になって、社員同士の接点が生まれることも大きな狙いです。特に最近入社したばかりで顔を合わせる機会がない社員にとっては、会社と同僚を知る貴重な機会になっています」(中丸氏)

また、同社ではテレワークを派遣社員も含めた全社的な施策として位置づけているため、派遣社員との「1on1ミーティング」にも力を入れています。

「通勤の負担がないなどのメリットがある半面、特に事務系業務を担当している派遣社員の方々は、仕事を通じたコミュニケーションの機会が生まれにくく、孤立感・孤独感が高まりやすいのだと改めて感じました。ごく短時間でも、できるだけ頻繁にオンラインで声掛けをするようにしています。コミュニケーション頻度が多いと、『じつは自宅のパソコンのモニターが小さくて業務効率が上がらない』といった、小さな悩みや不満も吸い上げやすくなります。実際このケースでは、オフィスで余っているモニターを貸与することで解決できました」(野田氏)

このほか、同社ではテレワーク下においても社員への研修プログラムを減らすことなく、オンラインで実施し続けているそうです。
「研修で何かを学ぶことももちろん大切なのですが、そのプログラムの中ではブレイクアウトセッションという形でいろんな部署の方とグループワークをする機会があるんです。普段接する機会のない方とオンラインでお話しでき、研修内容にとどまらない学びを得ることができました」(野田氏)

アデコのテレワーク派遣

アデコでは、派遣社員の在宅派遣を行っています。貴社のテレワーク用機器の不足を解消し、広範囲からテレワーク人材を提供することが可能です。

新たに浮上した課題をどう克服するか

このように、楽天コミュニケーションズのテレワークはおおむね順調に進んでいますが、まだまだ課題もあるといいます。

「社員の孤独感を軽減する取り組みは、まだまだ工夫の余地があると感じているところです。また、オンラインツールを対面コミュニケーションと同等に活用するには、やはり慣れも必要です。管理職層の間では、対面での部下への声掛けはできるものの、チャットを通じた意思疎通がなかなかうまくいかないという悩みも出ています。我々人事部門としてサポートを検討していく考えです」(中丸氏)

こうした課題を乗り越えて、「テレワーク巧者」を目指したいと中丸氏は語ります。
「私自身だけでなく社員全体が、テレワークを巧みに使いこなせる存在になっていけたらと考えています。オンライン会議のやり方にしても、プレゼンテーション資料の見せ方にしても、一人ひとりに得手不得手があると思いますが、そこにもともと我々が持っている技術の強みや組織風土などを上手に付加していくことで、会社全体でテレワーク巧者となることを目指していきたい。それは長い目でみれば当社の独自性にもつながるでしょうから」(中丸氏)

取材協力:楽天コミュニケーションズ株式会社

Profile

楽天コミュニケーションズ株式会社中丸氏
中丸 博禎氏
楽天コミュニケーションズ株式会社 エンプロイー・エクスペリエンス部 部長
2013年にフュージョン・コミュニケーションズ(楽天コミュニケーションズの前身)に中途入社以来、一貫して人事を担当。2018年よりエンプロイー・エクスペリエンス部(2020年に人事部から改称)部長に就任。
採用・育成・労務等、従来からの人事機能に加えて、従業員サーベイの活用やエンゲージメント向上施策等、新たな領域にチャレンジしている。
楽天コミュニケーションズが2016年から全社で推進している経営品質向上プログラム”Quality Journey”では、立ち上げ時から事務局リーダーとして組織変革に取り組む。
楽天コミュニケーションズ株式会社野田氏
野田 恵里氏
楽天コミュニケーションズ株式会社 営業本部 第二グループ マネージャー
2014年に楽天コミュニケーションズの前身であるフュージョンコミュニケーションズに入社。6年間モバイルチョイスシリーズの営業を担当。
サイバーエージェント社やNTTデータCCS社など多くの企業へBYODを用いた働き方改革や通信コスト削減を提案。
2018年に同社史上最年少でサブマネージャーとなり、2020年には女性最年少でマネージャーに就任。現在、サービス・販促企画やメンバーの育成にも従事。

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