BCP(事業継続計画)の基礎を徹底解説。注目される背景、策定の流れについて

新型コロナウイルスの感染拡大という、例を見ない非常事態への対応に翻弄された方も多いのではないでしょうか。この事態を受け、BCP(事業継続計画)策定の重要性が以前にも増して認識されるようになりました。

企業が、地震や豪雨などの自然災害や情報セキュリティ被害など緊急事態を迅速に乗り切るには事前の備えが不可欠です。ここでは、BCPが注目されている背景や策定までの流れについて詳しく解説します。

災害や緊急事態への備えに、BCP(事業継続計画)が注目される背景

自社内でのBCP(事業継続計画)方針・計画の作成について
(n=680、単一回答)
方針を策定している45.0% これから準備する19.4% 方針を策定していない21.3% 分からない14.3%

弊社がおこなったアンケート「新型コロナウイルス感染拡大への対応について」において、自社内でのBCP(事業継続計画)方針・計画の策定の対応について質問したところ、「方針を策定している」「これから準備する」という回答は64.4%。「方針を策定していない」もしくは「わからない」の回答は35.6%でした。6割以上の企業が、緊急事態に備える意識を持っていることがわかります。

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昨今、地震や豪雨などの災害・被害の規模は甚大化しており、影響を受けた多くの企業が事業縮小や倒産を余儀なくされています。テロやサイバー攻撃など企業運営を脅かすリスクも無視できません。そして2020年、新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの企業が危機的状況下に置かれています。

このような状況を受け、中小企業庁はBCP策定の普及促進に取り組んでいます。特設サイトではガイドラインや、入門〜上級とレベル別の手引きなどBCP策定の知識やヒントが公開されています。このようなサポートツールの登場も、BCP策定に対する意識の広がりを後押ししているようです。
中小企業庁:中小企業BCP策定運用指針

BCP(事業継続計画)とは?防災計画、BCMとの違いについて

では、あらためてBCPの概要と目的を詳しく見ていきましょう。防災計画やBCMとの違いについても解説します。

BCPとは?

BCPとはBusiness Community Planの略で、事業継続計画のことです。自然災害やテロ攻撃などの緊急事態によって企業が受ける影響や損害・被害を最小限に留めるための方法や手段の計画のことを指します。緊急時における対策だけでなく、予防策としての平常時の活動・整備計画も含まれます。

BCPの目的

BCPの主な目的は以下のとおりです。

  • 事業を停止させない
  • 迅速に事業を復旧・再開する
  • 企業を存続させる
  • 社会的責任を果たす
  • 企業価値の維持・向上

防災計画やBCMとの違い

BCP
BCPは、「企業の存続性を守る」ことに視点を置いて計画されます。この施策が解決すべき問題は、事業が停止したり倒産したりすることです。したがって事業を継続・維持していくために必要な対策・計画が中心となります。
防災計画
防災計画は、発災の事前対策として機能する計画です。企業資産とともに従業員の命を守ること、つまり被害の防止・回避が目的となります。地震、津波、台風など災害の種類ごとに設定する対策・計画となります。
BCM
BCMは、Business Continuity Managementの略で、日本語では事業継続マネジメントです。事業を継続するための管理プロセス全体(一連)を指すもので、BCPはBCMの一部といえます。

BCP(事業継続計画)のメリット、デメリットと注意点

ここからは、企業としてBCPを策定するメリットとデメリットを見ていきましょう。

メリット

早期対応、再開、損失最小化、回復
BCPを整えておくことで、有事の発生確認時点からただちに対処(行動)をスタートできます。これは、損失・被害の最小化と早期再開・回復への第一歩であり、事業継続性の確保につながります。また、BCPが策定されていることにより、経営者・管理職はもちろん、従業員一人ひとりが緊急時対応の連携マニュアルや手順に応じて、自らの役割ややるべきことを冷静に把握し行動に移せるでしょう。
顧客の信頼性や企業イメージの向上
BCPは言い換えれば、事業の混乱・停滞の防止策でもあります。緊急事態が発生しても自社事業の流れを維持し、商品やサービスなどの供給・提供を継続できる企業は、取引先や顧客にとって安心して頼れる存在となります。熟達したBCPを持つ企業は、顧客の信頼とともに社会的イメージも向上できるでしょう。
企業の強みと弱みの明確化
BCPの策定時には、業務を洗い出し、優先業務を明確にします。非常時に何が止まるとどこに影響するのか、どのような部分が停滞しやすいかなども見えてくるでしょう。
万が一、何らかの事態が発生すれば、自社の弱い部分が顕在化するものです。見えてきた点への対処・対策を随時BCPに盛り込むことで、その計画をさらに成熟させることができます。事業の継続性や従業員の安全性をより高めていくことが可能です。

デメリットと注意点

策定にコストがかかる
BCP策定には一定の時間がかかります。また人件費、コンサルティング費用、教育費、設備費など経済的コストも大きいものがあります。直接利益に結びつく経費とはいえないため、特に中小企業にとっては大きな課題といえるかもしれません。
策定したBCPに対応しきれない
策定するBCPが「自社」に合っていることが非常に重要です。他社の策定事例などを参考にするとしても、自社で対応できない内容もそのまま盛り込んでしまっては意味がありません。財務面、従業員規模、事業の特質、業務フローなどを細かい部分にまで「自社」を反映させましょう。できるだけ具体的に策定しておくことで実効性が高まります。
策定したBCPが機能しない
緊急事態において、どのようなことがどれくらいの規模で発生するかわかりません。想定外の事象も当然発生すると考える必要があります。想定外を考慮していない場合、せっかく練りに練ったBCPであっても、機能しないケースがあります。

BCP(事業継続計画)策定の流れと手順について

では、実際にBCP策定はどのような流れで行っていくのでしょうか。ここからは、BCP策定の流れや手順について解説していきます。

1BCP基本方針の策定
はじめに、自社のBCPがどのような目的の達成を目指すものなのか、軸を明確にすることが大切です。これにより策定内容がぶれることなく、実行の場面でも皆が目的に基づく判断が可能になります。困難な状況下で立ち返る場所にもなり、適切な判断や行動を促すことにつながるでしょう。
2BCPの運用体制確立
方針が定まったら、運用体制を整えます。指揮を執るのが誰なのか、どのように連携するのかといった仕組みを具体的に決めましょう。
3事業の選定
次に、自社において最も重要な事業を選定します。緊急事態において、その中核事業の継続・回復に必要な資源を把握する必要があります。また、万が一、中核事業が停止した場合の目標復旧期間や会社が持ち堪えられる許容期間の暫定も出しておきましょう。取引先や顧客、従業員などのあらゆるステークホルダーへの影響や自社の将来的ビジョンなど、自社の存続に関わることを分析しながら考えていくことが大切です。
4事前案を策定
実際に災害や緊急事態が発生したときの対処や対策を具体的に検討していきます。あらゆる事象を想定し、その影響や対処法をシミュレーションしましょう。
災害などの発生によって必要資源を失ったとき代替資源を何にするか、どのように確保するかといった検討も必要です。前項で設定した目標復旧期間に照らして、各対処の実行可否をある程度見積もっておいたほうがいいでしょう。
5BCPの策定
ここから実際のBCP策定に入っていきます。まず、発災後、事業がどのような状態になったときにBCPフローに移るのかの基準を明確にしましょう。そのうえで、各種対応(例:取引先、事業、社員)部門や担当者など、BCP発動時の具体的な体制・役割分担までを決めていきます。決定事項は漏れなく適切に文書にまとめておきましょう。
中小企業庁ではBCP策定の参考になる指針やテンプレートなどを公開しているので、ぜひご活用ください。
中小企業庁:中小企業BCP策定運用指針
6教育と訓練の実施
自社のBCPの内容や運用体制は、策定担当者や経営上層部だけでなく、すべての社員が「事前」に理解していることが成功のカギです。事前の周知を徹底するのはもちろんのこと、発災を想定した訓練や勉強会を実施しておきましょう。
7BCPの見直し
BCPは策定後も随時見直していく必要があります。状況や環境に合わせて、ブラッシュアップしていきましょう。以下のような場面が、見直し・改定が必要となるタイミングです。
  • 社内組織に変革があった場合
  • 中核事業を変更した場合
  • 大きなステークホルダーの変動があった場合
  • 社内システムやネットワークを変えた場合
  • 行政や法律が改定された場合
  • 業界の動向に変化があった場合

では、実際にBCP策定はどのような流れで行っていくのでしょうか。ここからは、BCP策定の流れや手順について解説していきます。

BCP(事業継続計画)を策定する際のポイント

BCP策定の流れを理解したところで、BCPを策定する際のポイントについて解説します。

中核事業に絞り込んで策定する
BCPを策定する際には、緊急事態下でのあらゆるリスクを洗い出したのち、自社の存続や業務遂行に影響の大きいものに「絞り込んで」対処・対策を考えましょう。あれもこれもと小さなリスクにまで対処の範囲を広げすぎると復旧効率が下がります。複数事業を展開している企業ほど意識しておきたいポイントです。
主要事業の復旧までの目標時間を設定する
緊急事態が発生した際には、少なからず社内や業務に影響が出ます。どれくらいの時間で復旧させるかという目標時間を設定しましょう。復旧までの時間が長期化するほど、復旧の難易度は高まります。目標時間を基準にして必要、かつ現実的な対策を立てておきましょう。
あらかじめ取引先と協議しておく
自社のBCP策定には取引先も大きく関わってきます。事前にお互いの問題・課題を把握し、対処や解決の方法を協議しておくことも重要です。例えば復旧時間、連絡手段、応援要員などについて方針や指針のすり合わせをしておけば、発災時での連携や協力体制もスムーズになるでしょう。
事業継続のための代替案を確保しておく
発災した際でも中核事業を継続するためには資源確保が不可欠です。復旧が難しくなりそうな資源(ヒト・モノ・カネ・情報)については代替策を確保しておきましょう。確保が困難なものは中長期計画のもと整備します。また、そういった損失・損害の予防策を講じておくのも一策です。
従業員へのBCPの方針、内容の共有を徹底する
BCPの内容は文書化し、従業員の誰もが確認できる状態にしておきましょう。策定した内容を冷静に円滑に実行してもらうための重要な事前対策です。例えば、命を守るための連絡網や移動手順の確認、また発災直後の社内システムやデータの取り扱いやバックアッププロセスなどを共有します。

不測の事態に活きるBCP! 方針や内容は社内周知を徹底する

災害など緊急事態が起きてしまった場合、BCPを策定しているか否かが事業の復旧・回復に雲泥の差をもたらします。実際にBCPを発動する場面は訪れないのが一番ですが、外的環境は企業能力に関わらず変化するものです。経営における重要なリスク管理の一環としてBCPの整備・アップデートをしていくことをおすすめします。

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