東神楽町が挑む子供たちの「学びがい」を高める学校教育の推進。
自己肯定感を高める新たな中学校授業の取り組みとは?

東神楽町が挑む子供たちの「学びがい」を高める学校教育の推進。自己肯定感を高める新たな中学校授業の取り組みとは?

東神楽町様は、子ども一人一人の学びがい、生きがいを高める教育の推進をしています。生徒が答える「自分には良いところがある、将来の夢や目標がある」というアンケートの結果において、小学校時代より中学校時代の方が落ち込む傾向があり、中学校において子供たちの自己肯定感を育む具体的な取り組みが必要でした。

産官連携の協定を元に、アデコ株式会社のAcademy部門が生徒の内発的動機を高めるプログラム「IKIGAI Compass」(カスタマイズ版)を中学校授業として実施。教育推進課と先生とのチームワークで授業を構成し、教育課程を見直して、総合的な学習の時間に「IKIGAI Compass」を組み込みました。

この記事では、導入背景と効果、今後に向けた取り組みについて教育長と指導主事に伺った内容をお届けします。

写真左から:

アデコ株式会社 Academy事業部 IKIGAI Compass ファシリテーター 今井
東神楽町 東神楽町教育委員会教育推進課 主査・指導主事 山下様
東神楽町 東神楽町教育委員会 教育長 金谷様
アデコ株式会社 Academy事業部 事業推進部長 矢﨑

導入前の課題

  • 中学校生徒の自己肯定感を高める具体的な取り組みが必要と感じていた

Adeccoを選んだ決め手

  • 包括連携協定のパートナーシップの下での共創の姿勢
  • 教材とファシリテーションが魅力的なプログラムの存在

導入後の成果・効果

  • リアルの場とオンラインの場の双方で対話の機会がつくられ、生徒の嬉しそうな笑顔が見られた
  • 中学校教諭にとって生徒との対話の在り方を考える機会となった

中学校授業への導入、その背景は?

――この度は、弊社のIKIGAI Compassプログラムを東神楽中学校のキャリア教育授業として実施させ ていただきありがとうございます。はじめに導入前の背景や課題を教えてください。

金谷教育長 様々な課題がありますが、1つは全国学力学習状況調査の結果がきっかけでした。生徒に「自分には良いところがあると思いますか?」と質問したことに対して「まったく無い」と回答した生徒の割合が1割弱おりました。

東神楽町 東神楽町教育委員会 教育長 金谷様

まったく良いところがないと言い切っている生徒の心の奥底には何かがあると感じました。例えば自分のことを表現できない、自分の力を発揮できない、友達にも認められていないといった何か満たされないものがあるだろうと。それを徹底して洗い出したいと考えており、校長会でも議論を重ねていた背景がありました。

――このような傾向は増えているのでしょうか

山下指導主事 年々増えている状況です。コロナ禍で他者との接触が減りアフターコロナで回復すれば改善するとみていたがそうはならかった。単純にリアルで他者と接触が増えれば良いということではないことがわかりました。

金谷教育長 要因はおそらく1つではなく、学校教育だけに要因があるというわけではないと思いますが、(学校教育のなかで)何か1つでも子供たちが自信を持っていることが大切ではないかと思いました。例えば「算数は全然できないけど、かけ足は速いよ(誇らしげに)」と思ってもらえる子が増えるようなことが大切だと思います。自己有用感を持っていないと困難な状況に立ち向かえなくなるでしょう。

「IKIGAI Compass」の魅力とは?

――そのような状況下でIKIGAI Compassをお知りになり、どういった点で実施の方向を決めたのか、決めたきっかけは何だったのでしょうか

アデコ株式会社 Academy事業部 IKIGAI Compass ファシリテーター 今井

金谷教育長 東神楽町とアデコグループが令和3年11月に人材育成に関する包括連携協定を締結し、その後の打合せにてIKIGAI Compassというプログラムを知りました。町の職員向けに体験会を実施されていた内容を拝見して、参加者が色々なことを考えて話し合い、お互いの意見を認め合い、そして自己有用感を高めるものであることを知りました。これを中学校でできたら非常にありがたいことだと思い、先ほど申し上げた課題の解決につながると感じました。

――最初にご覧になって特にどの部分に価値を感じていただいたのでしょうか?

金谷教育長 1つは「正解のない問い」という教材の内容が面白いこと。そしてもう1つは、教育界でも心がけているが「みんな違ってみんないい」という問いかけや、参加者の回答発表に対する受容して共感を示すファシリテーションですね。参加者が自分の意見を積極的に受け止めてくれたことに対してとても心地よさを感じていた。受容されたときの嬉しさでしょうね。意外かもしれないが、今の子供たちには心から褒められるような機会が乏しいのではないか、子供たちが心底喜べることやドキドキしながら一生懸命発言したことに対して、ほんとうに良かったねー、とか頑張ったねーと、声をかけられていないのではないかと思います。そのような声掛けが要所に散りばめられていたことで参加者が楽しそうに自己開示していたことが見受けられて、これはぜひ取り入れたいと思いました。

――金谷様は対話を重視しておられますよね

金谷教育長 私自身、生徒に対しての一方的に教える授業はしたくないという教師としての在り方を大切にしています。教師と生徒との会話だけではなく生徒同士が意見を交わす、自然とそこには対話が生まれるということになります。聞く側が興味を持って問うことが学びにつながる。今回の授業に限らず、他の授業においてもやっていきたいことですね。

山下指導主事 聞く側が興味を持って聞くことで、聞かれた側が考えを深められますよね。自分自身の理解に深みをもつことができたと思います。

――今回実施した中学1年生向けのIKIGAI Compassの授業についてどのようにご覧になりましたか?

金谷教育長 オンラインとリアルの場があったが、オンラインのブレイクアウトルーム内で生徒同士の対話の機会が見られた。一方の生徒が他方の得意なことを認める発言があり、それを受けて喜ぶ生徒の姿がオンライン上でも見られた。これだけでも十分な成果と思う。また、リアル授業では、ファシリテーターの立ち位置や仕草によって、生徒の目線を上げさせて授業に意識を集中させる工夫を凝らしていた。たいしたものだと思いました。クラスを「社会」と見立てて、どのようなクラスにしていきたいか?を考えて意見しあうのは良い取り組みでしたね。

山下指導主事 社会に開かれた教育課程の実現が求められているなか、大人向けの人材育成プログラムを中学生向けに提案いただいたことは、生徒のみならず先生方の刺激にもなったのではないかと思います。

今後の課題や継続していきたいことは?

――学校の様々なイベントにおける生徒の関わりは社会への関わりと言えると思います。もっと授業前後の生徒の取り組まれた行事などについても事前に理解を得て、接していきたいと思いました。
本取り組みに関する今後の課題やご期待はいかがでしょうか。

金谷教育長 小学校のキャリア教育プログラムと今回の中学1年生のIKIGAI Compassを通じたキャリア教育と続いて、中学2年生にどうつなげるかが課題。2年生の職業体験プログラム、3年生の進路を考える機会でも、生徒たちが自己有用感を持ちつつ考えを深めていってほしいと考えています。それぞれが単発のイベントになっているのではなく、つながりを持たせたい。例えば、アデコさんのIKIGAI Compassの授業の最初に、一言、小学校の時のキャリア教育のプログラムを思い出すようなお話があるだけでも良いと思います。また中学2年生のプログラムのときに今井さんが問いかけていただくような機会があったら良いと思います。プログラムについては、教材、ファシリテーション、そして運営いただく人、どれをとっても素晴らしく感服いたしました。

――大変光栄です。一緒に創らせていただいたお陰ですし、まだまだ発展途上だと思っております。
最後に、こういった機会を通じて今後どう教育推進されていきたいですか

金谷教育長 東神楽町の教育として「学びがい」を大切にしています。学校に行きたくない、授業を受けたくない生徒は存在しますし、それには私たち教員が、対話型の授業をすることによって変えていけたらよいと思います。今回のIKIGAI Compassの授業がひとつのきっかけとなり、他の授業においても対話の機会が増えるという波及効果を期待しています。国語でも数学の授業でも、3,4人のグループディスカッションがあっても良いと思います。教えるのは上手で、そこに加えて対話の機会を増やすことで、子供たちがつまらない学校ではなく、授業こそたのしいと思える、学びがいが育まれる教育を推進していきたい。

――私自身も子供がおり、学校教育が身近にあるなかで、東神楽町の対話の授業を推進されている取り組みについては先進的であり、このような機会にチャレンジをさせていただいたことをとても誇りに思います。このような素晴らしい教育を推進されている東神楽町を全国にも広くお伝えできたら嬉しいです。お話をお聞かせくださりありがとうございました。

※本事例の内容は、2024年11月時点の取材にもとづき掲載しています。

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