「聴くこと」が企業の人事課題を発見して解決につなげる最大のツール

アデコでは、2020年にCustomer Experience(カスタマーエクスペリエンス。以下、CX)推進部を立ち上げ、同時にCXプロジェクトとしてCXを高める活動を全社横断的に取り組んでいます。このCXの向上のために活用しているのがNPS®(ネット・プロモーター・スコア®)という指標です。アンケート形式でアデコの推奨度をうかがい、お客さまのアデコへの信頼や愛着度合いを顧客ロイヤルティとしてはかっています。
今回は、神奈川営業部の支社長の有賀浩と営業担当の鯛洵平に、現場でお客さまの声を聴くことの重要性、やりがいについて話を聞くとともに、Customer Experience推進部の部長、多賀智美にアデコのCXへの考え方と取り組みについて話を聞きました。

法人営業の現場でも「聴いて解決」がカギ

――CX向上プロジェクトの一翼を担う営業担当者は、最前線で企業の担当者と商談、ソリューション提案を行っています。お客さま企業の抱えるさまざまなニーズ、ウォンツに対して、どのようにCX向上を図っているのでしょうか?

有賀:アデコのような人財サービス業の営業というのは、お客さま企業の人事課題を聴いて、それを解決する役割が求められています。

人手が足りないならば人財を派遣しますし、課題が見えてきたら、日々のコミュニケーションで収集したキーワードを基にソリューションを提案しています。人事部門のサポートをするのが第一の役割だといえます。

鯛:入社して初めて担当した企業とは、最初はうまくコミュニケーションが取れませんでした。それでも「ちゃんとやってよ」「鯛くんの意見はどう」と声を掛けていただいていく中で、今の自分に何ができるのかを考え、お客さまの声を聴くことに注力したコミュニケーションを心がけました。すると「レスポンスが早い」「新サービスをすぐに提案してくれる」「ウチのことを考えてくれている」と高い評価をいただけるようになり、「アデコに頼むのではなく、鯛くんに頼みたい」とまで言ってくださるようになりました。

有賀:最初から自社の人事の課題をきんと把握している担当者は、実は多くないと感じています。私たちが深掘りして聴くことで課題の本質が浮き彫りになり、解決策を提案できるケースが増えてきました。聴くことが一番大事ですし、聴くことで初めてお客さまの目線に立てると感じます。営業担当者が提案に至る過程で、課題の本質に気付くことがとても重要なのです。

私にとっては、派遣先企業とそこで働く派遣社員の双方に喜んでもらえることが業務の励みになっています。転職してアデコに入社して間もない頃、企業と派遣社員の間でトラブルがありました。そこで双方から話を聴いてトラブルを解決したところ、企業と派遣社員の両方から対応について良かった、という言葉をかけていただいた経験があります。私の原点はそこかなと思います。最終的にその派遣社員の方は直接雇用にもつながり、こうした機会を紡げたことは、15年過ぎた今も記憶に残っています。

鯛:コロナ禍により、入社後の研修などはすべてオンラインでした。それでもお客さまとは対面でコミュニケーションを交わすことが大切だという認識はあり、できる限り直接お目にかかるようにしています。オンラインだけでは企業の雰囲気などを肌で感じられず、お客さまの目線がつかめないと感じることはあります。

コミュニケーションツールとして現場で生きるNPS®

――具体的なNPS®の活用術についても聞かせてください。

鯛:NPS®は私たち営業にとっての重要なコミュニケーションツールになっています。法人営業の立場からアデコのNPS®のスコアを見ると、営業担当者の提案力だけでなく、その職場で働く派遣社員のことも含めてトータルで評価していただいていると感じます。これは、逆にいうとNPS®のスコアが低かったときに、私個人の力ではどうにもならない課題が数多くあるということです。そういった課題が発見されたときは、プロジェクトチームが全社の課題として対応策を考えることになります。

有賀:NPS®アンケートでは、もちろん高い評価が得られればベストです。しかし、私はスコアよりも今は回答率を大切に考えるようにしています。法人向けのNPS®の回答率は、戦略神奈川支社の場合では25%ほどと、一般のアンケートと比較すると高い比率かもしれません。それでもまだ4分の3のお客さまからは声をいただけていないのです。私はお客さまの多種多様な課題を頂戴して一つひとつを解決していきたいですし、その過程で、戦略神奈川支社の回答率を日本一にしたいと考えています。

その目標を達成するには、企業の担当者の方との日々のやり取りが大切になります。お客さまの気持ちにきちんと寄り添えたとき、より幅広いご相談をいただけるような気がしています。NPS®も、訪問した際に「アンケートを送っているのでご回答をお願いします」とお話しすることで回答に前向きになっていただけると考えています。

鯛:法人向けのNPS®は、派遣社員の方の就業スタート時と終了時の2回メールで送られます。就業スタート時のNPS®のスコアは、アデコのサービスの品質と営業の努力があれば高いスコアをいただくことはできるかもしれません。しかし、派遣期間終了後のNPS®で高い評価を得るのは簡単ではありません。キャリアコーチや営業担当者が密なコミュニケーションを取って連携し、就業中の派遣社員へのフォローを適切に行うことで、企業担当者の方の安心や満足に結びつくのだと実感しています。

有賀:また、NPS®の回答を通じて、課題を率直に書いていただき次にどう改善するかという視点を持つことも重要です。改善したほうがよいことを書いていただくことで私たちはステップアップができます。人と人の関係はなかなか本音が見えにくいものですが、NPS®アンケートを通して教えていただけるのはありがたいことです。

鯛:良い事例も悪い事例も共有して、こういった事例があったならば自分なりにこうしようと考えることを習慣づけています。お客さまに信頼いただくためには、自分に置き換えて考えるしかないと思います。

有賀:お客さまとのコミュニケーションのツールとして重要なNPS®ですから、理想は100%のご回答をいただくことです。でもそれはなかなか難しいので、まずは50%ご回答いただける関係性をつくり上げていきたいですね。アデコがお客さまの求めている体験を提供し続けて行けば、実現できると考えています。

Profile

鯛 洵平(たい じゅんぺい)
鯛 洵平(たい じゅんぺい)
首都圏西事業本部 神奈川営業部

2020年に入社した営業担当。人とかかわることが好きで学生時代のアルバイトも一貫してサービス業を選択、就職活動でも人とかかわる仕事を求め新卒でアデコを選ぶ。

有賀 浩(ありが ひろし)
有賀 浩(ありが ひろし)
首都圏西事業本部 神奈川営業部 支社長

営業職として2007年に中途入社。2021年からはマネージャーを務め、メンバーが躍動できるような自律した組織づくりを目指している。

CX向上は特定部門の仕事ではなく全社横断的な取り組み

――人財の躍動化、ビジョンマッチングなど、アデコは常に明確なメッセージを発信しています。こうした企業活動の土台部分として、お客さまの顧客体験を向上させる取り組みがあると聞きました。具体的にはどのようなことを行っているのでしょうか?

多賀:Customer Experience(CX/顧客体験)の向上を目指し、CX推進部を立ち上げたのは2020年です。同時に全社横断のCXプロジェクトを立ち上げました。

最前線でお客さまと向き合っている営業担当者やキャリアコーチだけがCX向上の役割を担っているわけではないと強く感じたためです。CX向上は、全社横断的にそれぞれの役割でお客さまに向き合っていく必要があります。

そういう思いをきっかけに、営業担当者やキャリアコーチはもちろん、垣根を越えてマーケティングやIT、オペレーショナル部門など全部門を集結させました。そのメンバーで、しっかりお客さまの声を分析し、呼応するようなアクションを考える場を作ることがCXプロジェクトの根底にあります。

Adecco Group Japanのビジョンとして、「『人財躍動化』を通じて、社会を変える。」というものがあります。「人財の躍動化」を実現するためには、「企業の躍動化」をかなえるアプローチが必要であり、そのためにはお客さまに寄り添い知る必要があります。お客さまの課題をきちんと理解した上でソリューションを提供していくための第一歩が、お客さまの声を聴くことです。

一つひとつの声が、アデコの提供するサービスやお客さまとのかかわり合い方を改善するヒントになると考えています。寄せられた声(課題)の解決がすなわちCX改善です。「アデコのビジョンの実現」=「CX向上」だという考えを社内でいつも共有しています。

お客さまの声を真摯に受け止めるコミュニケーションツール

多賀:CX向上において重要なことは、常に人財とアデコ、企業とアデコそれぞれの間にある双方向のコミュニケーションだと思っています。

アデコではお客さまの声を聴く日々のコミュニケーションを大事にしており、並行してNPS®(ネット・プロモーター・スコア®)という仕組みを用いて、日常的なやり取りでは聴くことができないお客さまからの声も集めています。

具体的には、アデコのサービスを利用いただいた方に、他社の人事担当者にどの程度アデコのサービスをお勧めいただけるかについて、11段階で回答していただくアンケートをお送りしています。このアンケートには、フリーコメントでもご意見を書き込めるようになっています。

社内ではNPS®を「双方向のコミュニケーションツールです」と話をしています。一般的なアンケートは回答したら終わりの一方通行になることが多いのですが、アデコではNPS®アンケートを通じてお客さまの声を一件一件拝見しています。その中から特定できた課題を解決していくことで、お客さまにメリットを還元します。このPDCAのサイクルをしっかり実行していくことで、お客さまにはアデコにもっと意見を伝えたい、期待したいというような信頼関係を構築していこうと取り組んでいます。

Profile

多賀 智美(たが ともみ)
多賀 智美(たが ともみ)
Marketing本部 Customer Experience推進部 部長

2004年にアデコに入社し人財派遣事業や人財紹介支援部門を経て、2011年よりマーケティング部門。全社的なCXの強化をリードする部署として2020年にCX推進部が新設され現職に着任。NPS®認定資格を所有。

注:ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、ネット・プロモーター・スコア、NPS、そしてNPS関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、NICE Systems, Inc.の登録商標又はサービスマークです。
「NPS®」の取り組みについて に戻る

人材に関するお悩みがございましたらお気軽にご連絡ください