Vol.51 Expert Knowlege 個人と組織のパフォーマンスを高めるマネジメント術とは? 部下を主体にした会話をすれば、効果的でスピーディーなフィードバックが可能

パフォーマンス・マネジメントで重要なのが、フィードバックの頻度と内容。ビジネスの変化が早く、人財のバックグラウンドも多様な現代では、短いサイクルで個人に合わせた対応が不可欠。デロイト トーマツ コンサルティング執行役員の土田昭夫氏に、有効なフィードバックの手法を聞いた。

パフォーマンス・マネジメントとは、目標設定、コーチング、評価、インセンティブなど、多様な手段を通じて、個人のパフォーマンスを最大化するマネジメント手法です。その目的は、個人の能力向上や成果改善によって、組織全体の業績を向上させ、より変化に対応しやすい組織にすることです。

米国の先進企業が従来のレーティング評価を見直し、コーチングとフィードバックに軸足を置いたパフォーマンス・マネジメントに注力し始めました。従来の評価制度ではマネジャーに負担を強いるわりに、期待したほどの成果が上がらなかったことが理由の一つです。また、長期的に評価する既存の制度では、変化が早く、先の予測が難しい現代のビジネス環境にそぐわないという側面もあります。

ですから、新たに導入したフィードバックに今まで以上に手間がかかっては本末転倒です。その意味でパフォーマンス・マネジメントには効果が期待できると同時に、シンプルなフィードバックが求められます。

米アドビが導入した「チェックイン」の場合、各部門のマネジャーは、例えば1週間に1回ほどの短いサイクルで、すべての部下と面談を行います。15 分程度の面談時間で、簡潔で効果的な声掛けをするのです。

フィードバックで重要なのは、マネジャーが一方的に発言せずに、部下本人を会話の中心に据えること。これは一般的なコーチングと同様です。「仕事の効率が良いね」などと褒め、現在できている良いことは続けさせ、改善すべき点は「こうすればもっと良くなる」と前向きな表現で伝えれば、部下の意欲も高まります。不調な部下には、「なぜできないのか」と頭ごなしに叱らず、うまくいかない原因を二人で考えるのです。部下自身に考えさせるために、簡潔なアドバイスを心がけましょう。

もちろん、経験の浅い社員と、高い成果を上げている社員とでは、声掛けの質も内容も変わってきます。どんなフィードバックを求めているかを部下自身に尋ねれば、彼らの悩みや希望を聞き出せるはずです。それをもとに部下と一緒に原因や対策を考え、本人だけで解決できない場合は適宜アドバイスをするとよいでしょう。

フィードバックはその社員の仕事上のパフォーマンス向上が目的ですが、彼らの中長期的なキャリアプランや、ワークライフバランスなどへの配慮も大切です。社員の意欲低下の原因が職場ではなく、家庭などのプライベートにあるケースも少なくないからです。

パフォーマンスの高さは、人財の「能力」と「意欲」の掛け算で導き出されます。能力が高い人でも、意欲が減退すると良い成果は得られません。デリケートな部分なので配慮が必要ですが、上司のさりげない目配りとケアで解決することもあります。

パフォーマンスの向上には、上司・部下の関係だけでなく、組織や人事制度の見直しも必要です。中長期的には、現場に責任と権限をできるだけ移譲し、各部門がイノベーションの契機となる小さなトライアルを自発的に繰り返せる組織風土や企業文化を構築していくべきだと考えています。

【フィードバックのポイント】 1 信頼関係を築く 「この人になら何を話しても大丈夫」と思えるような 関係であれば、部下は多くのことを相談するようになり、マネジャーの助言も素直に聞いてくれる。2 面談の回数と時間を決める 面談は決められた日時に短時間で行うようにする。1週間に1回、15分間程度なら、日常業務の妨げにもならず、習慣化するので続けやすい。 3 部下を主体にした会話をする 「今の業務で困っていることは何か」「どんなプロジェクトをやってみたいか」と尋ねれば、部下も悩みや希望を話しやすい。上司も部下がどんなフィードバックを望んでいるのかが分かり、効率よくコーチングできる。4 現場のマネジャーに責任や権限を委譲する 評価は現場で行われるもの。マネジャーと部下の間で 問題が解決するよう、責任や権限を委譲していけば、パフォーマンスの向上につながる。

土田昭夫氏
デロイト トーマツコンサルティング 執行役員パートナー ヒューマンキャピタル
ユニットリーダー
profile
製造・サービス・金融など多様な業種を対象に、組織と人財のマネジメントに関するコンサルティングを手がける。人財戦略立案、人事制度構築、PMI、コーポレート・ガバナンス改革等の領域において豊富な経験を有する。主な著書に『世界で勝ち抜くためのグローバル人材の育成と活用』(共著 中央経済社)。その他、人事専門誌、経済誌等に執筆実績多数。
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