秋入学のメリット、デメリットと、企業の人事戦略への影響を考える【前半】

秋入学論議を契機に教育界と産業界の国際化について考える

2011年7月、東京大学が「9月入学」、いわゆる「秋入学」の導入を検討すると発表、これ以降、教育界と産業界を巻き込んだ大きな議論へと発展しています。
秋入学のメリット、デメリットと、それが企業の人事戦略にどういった影響を及ぼすかを考えます。
また後半では、教育界・産業界それぞれの視点からの意見を紹介します。

国際基準導入の背景にある“グローバル化”

東京大学の「入学時期の在り方に関する懇談会」(座長=清水孝雄副学長)は、3月29日、「秋入学」への全面移行を検討すべきであるという最終報告書をまとめ、学長に提出しました。これにより、昨年から続いてきた秋入学に関する議論が、さらに活発化しています。

従来の4月入学から、国際標準である9月入学に移行することにより、グローバルな人材を育成していく──。東大は秋入学の意義をこのように説明し、筑波大や東京工業大など国立大9校(※1)と、早稲田大学、慶應義塾大学の私立大2校に協議会への参加を呼びかけてきました。これらの有力校が秋入学の検討を始めたことは、他大学へも影響し、実際、2月に日本私立大学連盟が加盟121校に調査したアンケートでは、回答した98校のうち8割にあたる78校が、秋入学移行の是非を「検討中」か「今後検討予定」と回答しています(図1)。

図1

東大が秋入学への移行を検討し始めた背景には、日本の大学の国際的地位が下落しているという危機感があります。イギリスの調査会社が発表した2011年の世界大学ランキングでは、東京大学25位、京都大学が32位。同じく、イギリスの高等教育情報誌『The Times Higher Education』が発表した同年のランキングでは、東大30位、京大52位となっています(図2)。日本でトップクラスの大学が、世界では20位以内にも入らないのが現状なのです。その最大の理由は、日本の大学の国際化の遅れにあると考えられています。海外に留学する日本人学生数は、中国やアメリカ、インド、韓国を下回っており、しかも近年さらに減少傾向にあります(図3)。昨年の東大の学内調査によれば、学部学生1万4000人中、留学しているのはわずか53人でした。

国立大学協会の調査によると、海外留学に行かない理由として67.8%の大学が「帰国後の留年の可能性」を挙げています(複数回答可)。これを欧米と同じ9月入学(※2)にすることによって、学生は留年を心配することなく、海外の大学に留学しやすくなる。同時に、海外留学生も日本への留学が容易になり、国際的な人的交流が盛んになる。そして、日本の学生たちもグローバルスタンダードに則した幅広い教養を習得できる──。秋入学導入の計画は、そのようなビジョンのもとに進められています。

  • ※1北海道大、東北大、筑波大、東京工業大、一橋大、名古屋大、京都大、大阪大、九州大
  • ※29月入学は欧米のスタンダードで、アジア諸地域では国によって入学時期は異なる
図2
図3

VOL.26特集:大学の秋入学で採用はどう変わるか

秋入学論議を契機に教育界と産業界の国際化について考える

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