キーワードで見る2019年の雇用・労働
⑤「新卒採用」
経団連が就活ルールを廃止。
通年採用が増えるなど「新卒一括採用」見直しの契機に

2019.04.09 TUE

2019年は働き方改革関連法が施行され、これまで3年以上議論してきた働き方改革が本格的な実行段階に入ると同時に、新たな政策課題として浮上した外国人労働者と高齢者の雇用拡大に取り組んでいく――。日本の雇用・労働にとって大きな節目の年として記憶されることになるかもしれない。
法整備の過程では労働者の保護が議論の中心となったが、企業が取り組むうえでは生産性向上につなげる発想が欠かせない。創業時から働きやすい魅力的な職場づくりに力を入れているスタートアップ企業が日本でも増えており、改革に出遅れた企業は人財獲得競争でも劣勢に立たされていく。
2019年に注目されるトピックスのなかから、企業とそこで働く人はどんなことに留意するべきか。雇用・労働の専門家に話を聞いた。

2018年秋、経団連が新卒学生の採用活動時期を定めた就活ルールを21年春入社の採用から廃止することを決定した。これを受けて、政府と企業と大学で話し合いがもたれた結果、21年卒の就活は現行と同じ「大学3年生の3月に会社説明会、大学4年生の6月に採用選考を解禁」となっている。
注目されるのは、この経団連の指針が日本企業の「新卒一括採用」の見直しにつながる可能性があることだ。当面は現状のルールがある程度踏襲されると見られるが、今後、通年採用や秋季採用を導入したり、中途採用を強化したりする企業が増えれば、従来の新卒一括採用の比重が相対的に低下していくかもしれない。
皆が一斉に就活をスタートする一括採用が見直されれば、学生にとっては時間をかけて適職を考えることができ、専門性を身につける時間も確保できる。企業側も期間に縛られず、自社に適した人財を見極めやすくなる。

「とはいえ新卒一括採用は、日本の大学の教育システムなどとも密接な関係があり、就活ルールの廃止だけですぐになくなるというわけではありません。ですが今後、企業側と大学側が連携しながら日本の雇用・人事のあり方全体を見直すという発想で取り組んでいけば、非常に大きな潮流になる可能性はあります」(濱口氏)

19年で非常に大きなトピックだと話すのは、法政大学でキャリアデザインを教える武石恵美子教授だ。
「大学生活のある特定の時期に集中的に就職活動をして初職を決定するというのは、変化の激しい現代には合理性がありません。採用チャネルの多様化が、学生にとって適職選択の機会の拡大につながることを期待しています」

Profile

濱口 桂一郎氏
独立行政法人労働政策研究・研修機構 労働政策研究所長

東京大学法学部卒業。労働省(現厚生労働省)入省。 東京大学大学院法学政治学研究科附属比較法政国 際センター客員教授、政策研究大学院大学教授な どを経て現職。専門は労働法政策。近著に『働く 女子の運命』(文春新書)。

武石 恵美子氏
法政大学 キャリアデザイン学部 教授

お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士課程修了。博士(社会科学)。労働省(現 厚生労働省)、ニッセイ基礎研究所、東京大学社会科学研究所助教授等を経て、2007年より現職。
著書に、『キャリア開発論』(中央経済社)など。厚生労働省「労働政策審議会 障害者雇用分科会」、「労働政策審議会 雇用均等分科会」等の公職を務める。