リーダーの"とっさの言動"が、チームのやる気を妨げている!?
「アンコンシャス・バイアス」を知り、組織で生かす方法

2018.10.10 WED

「自分の常識は相手の非常識」という教訓があるように、人は自分の思い込みからなかなか抜け出せないもの。ましてや、無意識下にある思い込みや偏見、つまり「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」ならばなおのことだ。「だからこそ、とっさの行動や発言に気をつけたほうがいい」と諭すのは、モリヤコンサルティング代表取締役の守屋智敬氏。自分の思い込みに気づかずに行動すると、チームに負の影響を与えるとともに、ダイバーシティ&インクルージョンの阻害要因にもなりかねない。リーダーが抱きがちな無意識の思い込みの例と、それを取り払い、チームをいい方向に導くためのヒントを紹介する。

こんなとっさの言動をしているのでは?

部下が「大丈夫」と言ったから大きな仕事を任せたのに、実は乗り気ではなかったことを後で聞かされた。順調に進んでいると思っていたプロジェクトが、実は問題が山積みだったことが発覚した――−。「なんで本当のことをもっと早く教えてくれないのか」と、部下の"報・連・相"不足を感じたことはないだろうか。

でも、もし「本音を聞き出せない原因は、あなたにありますよ」と言われたらどうだろう。「そんなはずはありません」と真っ向から否定するか、もしくは、「そうかもしれません」と一度受け入れられるか。ダイバーシティ&インクルージョンが前提となるこれからの組織において、あるべきリーダー像として求められるのは、後者の発言ができるリーダーだろう。

「ここで大事なのは、『なぜ、もっと早く教えてくれないのか』という発想の裏に、自身の『アンコンシャス・バイアス』があることに気づけるかどうかです」と指摘するのは守屋氏。「アンコンシャス・バイアス」を乗り越えるためには、まず自分自身の"思い込み"に気づくことが必要だからだ。

とはいえ自分ではなかなか気づけないからこそ、"無意識"の偏見だといえる。そこで、次のチェックリストを用いて、どのくらい当てはまるかを試してみてほしい。

組織内における「アンコンシャス・バイアス」のチェックリスト

  • 「こんな仕事、自分が同年代のときにはできていた」と部下にイライラする
  • 「子育て中の社員はなるべく負担を減らしてあげたほうがいい」と思う
  • 「最近の若い人は、自分たちとは違う」と思うことがある
  • 経験が少ない若い人には、自分が指示をしたほうがいい
  • 自分と同じやり方をすれば、部下も結果を出せるのにと思う

思い当たる項目がどのくらいあっただろうか。
さまざまな価値観やバックグラウンドを持つ社員の多様性を受け入れ、組織における公平性が望まれる現代においては、知らず知らずのうちに良かれと思ってやっていても、組織の雰囲気が閉塞的になり、ポジティブな意見が出にくくなる状況を招く可能性がある。さらには、イノベーションの弊害にもなりかねない。それが「アンコンシャス・バイアス」だ。では、どうすれば「アンコンシャス・バイアス」から抜け出せるのか。具体例を挙げて説明する。

無意識の"思い込み"に気づくリーダーは何が違うのか?

[CASE1] 部下の本音を聞き出せるリーダーAさん

[エピソード]

チームのある若手メンバーが大きな仕事を任されたときのこと。彼は「大丈夫です」と発言したが、そのときのくぐもった声を聞き逃さなかったAさん。「なぜ、大丈夫だと思うの?」と質問を投げかけると、「実は、心配な点があります」と部下の本音が出てきたという。

[ポイント]

部下との対話などの場面では、言葉以外の声色、表情、態度に敏感でいること。感度の高さに自信がない場合は、「YES/NO」の返事で終わらせず、さらに一歩踏み込んで、「何を」や「なぜ」を質問する。自分の本音に興味を持ってもらえることは、部下にとって嬉しいはずだ。
また、部下に対しても、自分の弱みや強みを含めて自己開示することで、自分が開示した内容と同じようなことを、部下も話してくれるようになる。

[CASE2] 評価や採用の場面で、人を見る目があると評判のリーダーBさん

[エピソード]

評価・採用の場面では、緊張するのは当たり前。そこで、Bさんは「緊張するよね。私も緊張しているよ」と自己開示を忘れない。その上で、「アンコンシャス・バイアス」を外すことを意識しながら、フラットな状態での会話を心掛けている。

[ポイント]

「アンコンシャス・バイアス」に影響を与えやすいのは、初対面で会った人の印象。そこで、初対面で感じた "逆"のイメージを持つようにすることをおすすめする。例えば、おとなしそうに見える人には「この人は、活発な人かもしれない」と考えるようにする。そうすると、その人の良さに自然と目を向けることができるようになるという。

[CASE3] 部下へのフォローが上手と評判のリーダーCさん

[エピソード]

部下の信頼が厚いCさんだが、自分の仕事に自信があるだけに求めるハードルが高くなりがち。ある日、部下に頼んでいた企画書の進捗を問い合わせた際、「まだ半分か」という心の声を口に出してしまった。慌てたCさんが取った行動は、次の通り。
@ 素直に謝り、「あの企画書は2日で作成できる」という自分の思い込みのせいで出た発言だったということを自己開示する
A さらに、「この資料はプロジェクトの成功を左右する。ぜひ引き続きよろしく」と期待の気持ちを添えた

[ポイント]

誰でも「アンコンシャス・バイアス」は持っている。無意識な分、誰もが「偏った考え」がとっさに出てしまうのは仕方がないこと。大事なのは、そこからどう向き合いリカバリーするかだ。ポイントは、心の後味をよくした状態で対話を終わらせることにある。

アンコンシャス・ログで、チームで"思い込み"に気づけるようになろう

「アンコンシャス・バイアス」を取り払って、部下と良好な関係を築けるリーダーになるためのポイントを、具体的なリーダー像を用いて解説してきた。しかし、リーダー自身が変わる必要性に気づいていないケースもある。「その場合は、1週間の"アンコンシャス・ログ"をつけることをおすすめします」と守屋氏。やり方は簡単。1日1つ、仕事上で生じた思い込みの例をチーム内で挙げてもらい書き出すこと。

部下が主導してもかまわない。「チームの雰囲気が良くなるために」と、部下に協力を仰いでやってみてはいかがだろう。もしくは、人事を巻き込んで、ワークショップなどの形式で、「アンコンシャス・バイアス」の研修を導入してもらうのも一案だ。「アンコンシャス・バイアスとはいわば、いびきをかいて寝ている人のようなもの。本人には全く悪気はなく気づいてさえいないけれども、周りは迷惑をしている状態だからです」(守屋氏)。だからこそ、まずは気づくこと。それが最初の一歩になるだろう。

Profile

守屋智敬氏
株式会社モリヤコンサルティング 代表取締役

神戸大学大学院修士課程修了後、都市計画事務所に入所し、地域再開発計画のコンサルティングに従事。1999年人材系コンサルティング会社の立ち上げ期に参画。2015年にモリヤコンサルティング設立。共感を大切にするリーダーの育成をはじめ、経営層や管理職などを対象に、2万人以上のリーダー育成に携わる。著書に、アンコンシャス・バイアスをテーマとした『あなたのチームがうまくいかないのは「無意識」の思いこみのせいです』(大和書房)など。

イラスト/水谷 慶大