仕事の未来 働き方 —本業以外の2枚目の名刺を持った活動— ”自己”と”社会”と”会社”に新たな風を吹き込む

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2018.08.30

組織人としての名刺とは別の「2枚目の名刺」とは、「こんな社会を創りたい」という自身の価値観を表現し、実行しようとするときに持つ名刺です。そうした名刺を人に手渡し、自らの活動を説明していく。こういった機会を繰り返していくことで、自身の考えが練り込まれ、行動も変化していきます。

私にとって「2枚目の名刺」の原点は英国のビジネススクールに留学した時のプロジェクトにあります。国籍も経歴もさまざまな仲間4人で、ベトナム商工会議所に農産物の対日輸出促進プランを作成。生産、流通、マーケティング、検疫など、未知の分野ながら現地で多くの人たちと関係を築き、具体的な提案にまとめていきました。

「このプロジェクトのおかげで次の展開につながるよ」とベトナム関係者から言葉をもらった時、「組織を離れた個人として、本業以外でも価値を生み出すことができるんだ。今回、たくさんの失敗があったけれど、自分自身の資産として還元されていくはずだ」という確信を持ちました。
同時に、ベトナム人起業家から「ベトナムは若い力に溢れているが、日本はどうだ。君は帰国してただ会社員に戻るだけなのか?」と問われたことも刺激になりました。さらに、留学したてのころ、教授陣とのディナーの席で、「Who you are?」と問われたことにも価値観を揺さぶられました。「お前は何者だね?」という価値観と人生の目的を聞く本質的な問いに、当時の私は即答できませんでした。それらの経験が、組織を離れ自分の名前で勝負し、自分の価値観をはっきりさせるきっかけになったと感じています。

自分が味わった人生を変えるような「自分が変わる」経験を、より多くの人に共有してもらいたいと思って始めたのが、NPO二枚目の名刺として、たくさんの「2枚目の名刺」のきっかけを届ける取り組みです。

私たちの活動は、「2枚目の名刺」を持って自律的に動く人間になるための"あと半歩"を踏み出しあぐねている人たちを支援しています。例えば、社会活動に向き合い活動を展開するNPOの代表者と、本業以外でも社会を創ることに関わりたいと望んでいる人の架け橋となる、期間限定の「NPOサポートプロジェクト」はその取り組みの一つです。
この取り組みは、NPOの事業推進への貢献だけでなく、参加者に変化が生まれることが特徴です。NPOのビジョン、パッションに触れ、自分とは違った価値観に触発される。他者との関わりの中で、自分の能力や得意なことを発見する。そうした刺激が自己を磨き、さらにその次の発想や行動を生み出すのです。

プロジェクトで変化した社会人は、所属する組織や企業にもこれまでにない変化をもたらすはずです。企業にとっては社内だけでは醸成し得なかった新たな視点を獲得することにほかなりません。人の変化は組織や企業にとって既存の枠を超える活力をもたらし、同時に越境して得た知見・ネットワークは、新たなイノベーションの源泉となるはずです。

子どもたちが生きる未来を創るのは今しかありません。私は、2枚目の名刺というアイテムが当たり前の選択肢となり、たくさんの人に刺激と変化をもたらし、思い思いに社会を創る活動に関わる二枚目な社会人を増やしていきたいと思っています。

Profile

廣 優樹氏
NPO法人二枚目の名刺 代表

1979年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、日本銀行勤務。英・オックスフォード大学経営学修士課程(MBA)修了。現在は、商社で食料・食品の海外事業開発に取り組む。2009年NPO二枚目の名刺(11年からNPO法人)を立ち上げ、本業以外に社会をデザインする「2枚目の名刺」を持つスタイルを提唱。社会人がNPO事業推進に取り組む「NPOサポートプロジェクト」などを手がける。4児の父。