Q45 特定行為はなぜ禁止されているのか

派遣を受け入れる際に職場に合う派遣社員を選びたいのですが、事前に面接などを行うことはできないのでしょうか。

派遣先が派遣社員を特定することは労働者派遣法第26条第7項で次の通り禁止されているため、派遣先が事前面接等により派遣社員を特定して受け入れることはできません。

労働者派遣(紹介予定派遣を除く。)の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約の締結に際し、当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない。

特定行為が禁止される理由は、派遣先の事前面接等を経て派遣社員が決定するということは、直接雇用において採用選考を行うことと何ら変わりがなく、実質的に派遣先が雇用しているように見えてしまうからです。派遣先と派遣社員に雇用関係が生じてしまうと、派遣社員にとって派遣元と派遣先の二重の雇用関係が生じてしまうため、職業安定法第44条で禁止する労働者供給事業に該当する可能性が生じてしまいます。また、派遣社員の保護のために職業能力以外の観点で選別が行われ派遣社員の就業機会が狭められてしまうことを防ぐという目的もあります。

一方、派遣社員が派遣先を選ぶ行為は禁止されていないため、派遣社員が業務内容や職場環境を確認するために事業所を訪問することは問題ありません。その際に派遣先が業務内容や求められる技能について説明することになりますが、派遣労働者を選別するための面接や試験を実施することはできません。

POINT特定行為を行った場合の罰則

条文は「努めなければならない」なので特定行為を行った場合の罰則はありませんが、都道府県労働局から是正するよう指導されます。また、二重の雇用関係が生じることから派遣先の雇用責任が問われる等、通常の派遣受け入れでは生じないリスクが発生する恐れがあります。

Profile

答える人
社会保険労務士 中宮 伸二郎 (なかみや しんじろう)

立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。労働法に関する助言を通じて、派遣元企業、派遣社員双方に生じやすい法的問題に詳しい。2007年より派遣元責任者講習講師を務める。

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