Q39 労働時間適正把握ガイドラインの変更点

労働時間適正把握ガイドラインが2017年1月20日に変更されましたが、時間管理の実務上の変更は必要でしょうか。

新ガイドラインでは「労働時間の考え方」を改めて明記したこと、「労働時間の自己申告制の場合の講ずべき措置を厳しく設定」したことの2点が主な変更点です。

労働時間の考え方は、これまでの裁判例を踏まえたものであることから、大きな変化はないと思われます。新ガイドラインでは、労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間を労働時間としています。具体例として以下の3つは労働時間として取り扱うこととしています。

  1. 1.使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間
  2. 2.使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)
  3. 3.参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間

すべて使用者の指示により行うことがポイントであることから、すべての作業準備行為、研修・教育訓練時間が労働時間として取り扱われるものではありませんが、断ることができない状況に置かれている場合、黙示の指示があったということで労働時間として取り扱うことになります。特に研修・教育訓練に関しては自主的な参加によるものと業務として参加するものをあらかじめ明確に区分して誤解が生じないようにしておく必要があります。

労働時間の確認と記録の方法は、原則として使用者の現認かタイムカード等の客観的な記録を基礎にすることとされていますが、自己申告制を用いる場合は、以下4つの措置を講じなければなりません。

  • 労働者および労働時間を管理する者に対して自己申告制を正しく運用するために必要なことを十分説明すること。
  • 自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。
  • 自己申告した労働時間を超えて事業場内にいる時間について、その理由等を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかについて確認すること。
  • 自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設け、上限を超える申告を認めない等、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと。

自己申告制の場合、過少申告が心配されるため実態調査を通じて適正な管理を行うよう求められています。

POINT適正な時間外労働の管理を

時間外労働の削減を経営目標とする場合、無理な規制を課すなど虚偽報告につながる行為は、社員のモチベーション低下を招くだけではなく、労働基準監督署の臨検があれば発覚する可能性も高いことから、正しく申告する習慣をつけた上で業務遂行方法を改善し残業時間短縮に努めてください。

Profile

答える人
社会保険労務士 中宮 伸二郎 (なかみや しんじろう)

立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。労働法に関する助言を通じて、派遣元企業、派遣社員双方に生じやすい法的問題に詳しい。2007年より派遣元責任者講習講師を務める。

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