採用氷河期!中小企業が良い人材を確保するための7つのポイント

新年度に向けて採用活動が活発になっています。しかし、人手不足の影響もあり、とりわけ中小企業では採用難の状況が続いています。中小企業が良い人材を確保するには、どのような点に注意すればいいのでしょうか。人材獲得に詳しい、千葉商科大学国際教養学部専任講師の常見陽平さんに重要なポイントを伺いました。

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採用難の状況が続く“採用氷河期”

現在の採用状況について、働き方評論家で若手人材の採用と育成に詳しい常見陽平さんは「採用氷河期」と表現します。企業規模を問わず経営者や採用担当者から「売り手市場だから、今年は採用ができなかった」という愚痴を聞くことが多いそうです。そんなときにはこんなふうに返すといいます。「では来年になれば採用できるのでしょうか」。

「もちろん意地悪でいっているのではありません。現状をきちんと認識してほしいだけ。大企業と中小企業、人気業種とそうでない業種、都市部と地方など採用においてさまざまな差があるなか、多くの中小企業は弱い立場であることが多い。それでも、『売り手市場だから』と諦めていては、状況の改善は望めません。同様の条件のなか、採用に成功している中小企業があるのもまた事実なのですから」(常見さん)

では、どうすれば採用の勝者になれるのか。「大切なのは、パワーをかける覚悟を持つこと。具体的にはお金と時間をかけなければなりません」。そして、「自社の採用に関する考え方を見直すことです」と常見さんは断言します。

中小企業が陥りやすい面接での失敗

中小企業では、働くメンバーがいつも同じな上、取引先もなじみの人が多く、“見られている”という意識がどうしても低くなりがちです。面接にしろ、説明会にしろ、採用活動は求職者から“見られる場”になります。“見られている”という意識が低いと次のような失敗が起こりやすくなります。

陥りやすい失敗①:個人的な昔の苦労話や自慢話をする

求職者との信頼関係がきちんと築けていない状態で、面接官が個人の苦労話や自慢話をしてしまいがち。するとしても、ちゃんと企業の組織風土や強みなどが伝わる武勇伝として話さないと意味がありません。そうでないと、求職者に最近の働き方の変化に対応していない会社なのではないかと疑われてしまいます。過去の栄光に偏りすぎないようにしましょう。

陥りやすい失敗②:「ゆとり世代は」などと、ひとくくりにする

同じ世代のなかでも個人差があるのは当然。目の前にいるのはあくまで個人であって世代の代表ではありません。実態の伴わない言葉で大ざっぱにくくるのは避けましょう。ひとくくりにされた求職者は、「自分のことをきちんと見てくれていない」と思ってしまうからです。大切なのは求職者一人ひとりをきちんと見て、誠実に向き合う姿勢を見せることです。

人材を確保する際に意識するべき7つのポイント

人材確保の前提となるのが、自社にとって本当に必要なのはどういう人材なのかを改めて考えること。そして人事部の採用担当を強化することです。そのためには、採用担当が積極的に動く、“営業部化”、“マーケティング部化”が必須です。人材市場を見据え、体制を整えつつ、まずは以下の7つのポイントに取り組んでみましょう。

①自社の魅力をきちんと抽出する

自社の魅力はどこにあるのかを客観的に見直してみること。それもファクトに基づいていなければなりません。中小企業では見つけにくいと思うかもしれませんが、意外に気づいていない魅力も多いものです。地域で一番の老舗であるとか、自社技術が高く評価され、表彰されたことがあるなど、社内ではあたりまえと思っていたことが、実は大きな魅力につながることもあります。

ただし、根拠が曖昧では意味がありません。例えば、『うちはとてもアットホームな会社です』という魅力の紹介。何をもってアットホームといっているのかを伝えるために、「月に1回、お疲れ様会がある」とか、「年に2回、社長も含めて全員がBBQに参加する」といった具体的な事柄で表現する必要があります。

②働く環境を整える

どんなに美辞麗句で飾っても、リアルな現場と格差があってはなりません。例えば、工場で新たに事務の女性を雇用したいと思ったら、先行すべきはトイレや更衣室の整備。トイレが男女兼用だったり、女性専用の洗面化粧室がなかったりしている場合、求人募集をする前に改善しておきたいもの。働く側の身になって整えることが大切です。

③自社のホームページを見直す

昨今の求人サイトは複数のサイトを横断検索できるため、さまざまなキーワードによる検索であらゆる情報が手に入るようになっています。ピンポイントで検索されていた頃と異なり、想像以上に自社サイトが見られる機会が増えていることを認識すべきです。

採用ページは特に重要で、構成やデザインはもちろんのこと「求人募集。委細面談」など、たった1行の情報だけでは求職者は怖くて応募できません。求人募集の際は、職種や業務内容などの情報をできるだけ具体的に掲載することが重要です。ホームページは自社の入り口と心得ましょう。お金をかけた分のリターンはあります。今ではパソコンよりもスマートフォンでの閲覧が圧倒的に多いため、ホームページはスマートフォンへの対応も不可欠です。

④誰にでも分かるように自社のことをプレゼンする

「採用コンサルティングを依頼されたときによく申し上げるのは、『大変申し訳ありませんが、御社のことは驚くほど知られていません』というフレーズです。企業のなかの人は自社のことを“知られている”前提で考えている人が少なくありません」(常見さん)

頻繁に繰り返される事業再編など、企業が置かれる環境が日々変化する昨今、大企業でさえ、現在のメイン事業が何なのか知られていないことも多々あります。どうすれば自社を知ってもらえるか、分かりやすく伝えることができるかを真剣に考えましょう。そのためには誰にでも一目で分かるようにプレゼンテーションする意識を持つことが大切です。

⑤弱みを強みに変える

自社のファクトチェックをしたら、上がってくるのはマイナス要因ばかり……。それでも事実を隠したり嘘をついたりすることは絶対にやるべきではありません。むしろ発想を転換することで、プラスの評価にできるものもあります。

「勤務地が地方にしかない⇒転勤がなく持ち家を実現しやすい」「組織が小さいためさまざまな業務をやらなければならない⇒いろいろな業務ができて、会社の全貌が分かりやすい」といった具合。マイナス事項を包み隠さず、プラスの側面も語りましょう。

⑥採用のポートフォリオを見直す

働き方が多様化している現在、企業としてそれを活用しない手はありません。まずは全体を俯瞰して、どんな働き方の人にどの業務を任せるのが最適なのかポートフォリオを組んでみましょう。この仕事は派遣社員の方、こっちの業務はパートやアルバイトに、そして、この部署は正社員で固めようといった具合に、全体のバランスを考慮し、さまざまな人材をどう組み合わせるかを考え続けるのが経営者と人事の役割です。

ただし、自社の事情だけを考えていても、時代にマッチした最適なポートフォリオは組めません。他社の動向や最近の人材事情に詳しい人材会社の担当者や人事コンサルタントなどの意見なども参考に、ベストな人材ポートフォリオを見つけましょう。

⑦ほしい人材像を明確にする

常見さんの採用ワークショップで必ず実施するのが「欲しい人材を絵にして、吹き出しをつける」ことです。これを行うことで採用についての会社の考え方が分かり、それぞれの特徴が出てきます。

必要としている人材は“創造的な業務を担う人”なのか“同じ業務を正確に繰り返す人”なのか。さらに、現在の体制を組み替えることで間に合うのか、社内にリソースがなく新規に人材が必要なのかなどを考慮し、本当に獲得すべき人材像を明確にすることが大切です。そして、それに見合った働き方を提示することで希望する人材を確保できる確率は上がっていきます。例えば、正社員ではなく、業務範囲や時間を区切ったパートや派遣社員を採用したほうが、いい人材が確保できることもあります。これまでの常識を疑ってみましょう。

まとめ

最後に、常見さんから、採用担当者にお勧めの具体的なポイントをさらに2つ伝授いただきました。

その1つは、採りたい人が集まる場所に行くことです。例えば、新卒採用を考えるなら、近場の大学に行ってみる。多くの大学には学食があり、一般の人も利用ができるところも結構あります。これを利用してキャンパス内の様子を実際に肌で感じてみることも一つの手。採用したい人材を知ることにつながるかもしれません。

もう1つは、普段から“求職者の目で”求人広告を見ること。
「うちは広告出さないから関係ない」ではなく、求職者になったつもりで求人広告を見てみる。採用する側からされる側へと立場を変えてみると、競合他社や大企業の訴求ポイントや表現の仕方などから学ぶべき点を見つけられます。また、業界全体の傾向や時代の流れをつかむにも、求人広告は有用な情報源。常にチェックしておきましょう。

企業を成長させるのは、採用力と企業力。この両輪が必要です。常に時代を読み、人と時間とお金をかけて採用に取り組んでください。

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Profile

常見 陽平氏【監修】
千葉商科大学国際教養学部専任講師、働き方評論家/いしかわUIターン応援団長

北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業、同大学大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。大手情報会社、玩具メーカー、ベンチャー企業、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。専攻は労働社会学。大学生の就職活動、労使関係、労働問題、キャリア論、若者論を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。

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