Interview:改正のポイントは、これまでの派遣法の「常用代替防止」という考え方を転換している点にある

今回の改正案の意味とは。労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎氏に、その改正のポイントと、その背景にある派遣法の狙いや変遷について伺いました。

今回の改正案で最も重要なポイントは、この30年近く、日本の労働者派遣法の中で一番重要な法目的とされていた「常用代替防止」をもはや重要な法目的ではないというスタンスにシフトしたことです。

では、そもそも「常用代替」とは何なのか。歴史をさかのぼると、1985年に日本の派遣法は「業務限定」という世界でも例を見ない仕組みで始まりました。この時、業務を限定する理由が常用代替防止だったのです。その根底には、新卒一括採用から定年まで雇用を維持していく「日本型雇用システム」をベースに継続していく、という考えがあります。正社員が行っている業務と同じ内容を派遣労働者が行った場合、その業務は、派遣労働者が代替できる、という意味合いになる。これが「常用代替」です。

そのため、この常用代替を防ぐことを目的に、正社員が行っていないような専門的技術的業務のみ限定的に派遣を認めることになりました。しかし、実は最初から、限定された業務の中に正社員が行っている事務業務などが入っていましたので、全く現実に即していないものでした。

そして1999年の大改正で、専門26業務以外の自由化業務については常用代替の恐れがあるので、それを防ぐために「期間制限」を設けることになりました。当初は1年、これが2003年から3年に伸びました。そして、ここでも期間制限する理由は、あくまでも「常用代替防止」でした。

さらに言えば、常用代替というのは、派遣労働者の視点ではありません。派遣先の正社員が代替されるかどうか、という視点で考えられています。

以上のような問題意識に基づいて、今回の改正案は「専門26業務は現実に即していないから廃止する」、そして「常用代替防止という派遣先の正社員保護の発想から、派遣労働者自身の保護へとスタンスを切り替える」というのが、基本的な考え方になっていると思います。

今回の改正は「派遣労働者と派遣会社との間で結ばれている雇用契約が無期契約であること」にプラスの価値を置いているように見えます。その点に「労働者保護」の方向性への転換を感じます。バランスの取れた改正案になっているのではないかと、私は考えています。

濱口桂一郎氏 労働政策研究・研修機構 労使関係部門 統括研究員
1983年東京大学法学部卒、同年4月労働省入省。その後、東京大学大学院客員教授、政策研究大学院大学教授等を経て、2008年8月より現職を務める。

記事の本質〜派遣制度改正案を報じた新聞記事から〜 派遣見直し来年春から、無期雇用を拡充、労使で決着、人材会社、全て許可制に。 日本経済新聞2014年1月29日朝刊1ページ (略)派遣制度の規制緩和は、流動性の高い労働市場の形成を重視するアベノミクスの成長戦略にも沿った動きだ。民主党政権時と比べて今回は企業が派遣社員を活用しやすい点に重きが置かれているが、派遣社員にとっても働き方の選択肢拡大につながる。人材活用と雇用の安定を両立できるかが問われる。

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