Vol.38 仕事と私 挑戦を通じて インタビュー テラモーターズ株式会社代表取締役社長 徳重徹さん

挑戦の結果が失敗だったとしてもその経験から学んだことは必ず仕事や人生の糧となります

挑戦は決して怖いことではない

大学卒業後に就職した損害保険会社を辞めたのは、29歳のときでした。その後、自費で渡米してMBAを取得し、シリコンバレーでベンチャー企業の支援事業に従事しました。電動バイクの製造販売を行うテラモーターズを起ち上げたのは、2010年のことです。

僕は、大学受験に失敗して浪人生活を送っていた頃から、経営者の伝記や歴史書、城山三郎の企業小説などを読み漁ってきました。それらの本から学んだのは、かつて日本にはチャレンジングな人たちがたくさんいた、ということです。しかし、今の日本人は総じて挑戦する気概を失ってしまっている。ならば、自分が率先してやってやろう──。これまでの僕のチャレンジを支えてきたのは、そんな思いでした。

徳重徹さん

現代の日本人の多くが挑戦する気持ちを失ってしまったのはなぜか。失敗を恐れるからです。とくにエリートと呼ばれる人たちにそういう傾向がある気がします。経歴をスムーズに積み重ねてきた人ほど、キャリアの小さな汚点を気にするのかなと。

僕のこれまでの人生は、挫折の連続でした。入りたかった大学に入れず、会社を辞め、親から絶縁されてまで挑んだ米国のビジネススクールには門前払いを受け、かろうじて入学できた学校で必死の思いでMBAを取得しました。自分の半生を振り返れば、間違いなく成功よりも失敗のほうが多かった。しかし、そこから学ぶべきことはたくさんありました。

チャレンジの結果は、成功か失敗かのどちらかしかありません。むろん誰もが成功を目指すべきです。しかし、失敗したとしても、その教訓がその後の仕事や人生に生きるとすれば、失敗もまた貴重な経験となる。そう考えることができるのなら、挑戦は決して怖いものではなくなるはずです。

チャレンジする人の裾野を広げていきたい

挑戦には常にリスクがつきまといます。この「リスク」という言葉は日本では誤解されていると常々感じてきました。リスクとは「危険」であり、「不確実性」である。それが多くの人の理解です。しかし、リスクの本義はボラティリティ、つまり「変化の幅」であって、結果はマイナスとプラスの両方向に振れる可能性があるのです。大失敗する可能性もあるが、同じくらい大成功する可能性もある。それが「リスクをとる」ということです。なのに、なぜ人々は成功の可能性に目をつぶってリスクを語ろうとするのでしょうか。

あえてリスクを冒しながら、テラモーターズをアップルやサムスンを超える日本発のメガベンチャーに育てること。それが僕の目標です。僕のやり方はめちゃくちゃだとよく言われます。何しろ、ベンチャーでありながら製造業であり、電動バイクという新しい商品を、はじめから世界市場に売っていこうというのですから。しかし、そこまでのリスクとハードルを自分たちに課さなければ、メガベンチャーを作るという大きな目標は達成できないと思うのです。

高い目標を設定することで、人は大きく成長できます。僕は元来、頭の切れるほうではありませんでしたが、仕事の中で目標達成に向けて努力するうちに、以前よりはるかに記憶力がよくなり、判断力が磨かれてきたことを実感しています。5年前にはできなかったことが今ならできる。そんな感覚を新たにしながら進化を続けなければならないと、日々社員に伝えています。

企業としてのテラモーターズはまだまだこれからです。ベンチャー企業は、0から1の段階まで進むのにたいへんな時間と労力を要します。製品開発に時間のかかる製造業ならばなおさらです。しかし、1の段階に至れば、そこから100に進むのにそれほど時間はかからないはずです。設立5年目となる今年からの1、2年が、僕たちにとっていよいよ本格的な勝負となるでしょう。

この事業を通じて、チャレンジする人たちの裾野を広げ、日本にいわば志のネットワークを作っていくことが僕の夢です。テラモーターズで経験を積んだ若い人たちが、自ら新しい事業を起こし、それまでになかった価値を次々に生み出し、この国を支えていく。そんなビジョンがいつか現実となる日まで、挑戦を続けていくつもりです。

徳重徹さん
profile

1970年山口県生まれ。九州大学工学部卒業後、住友海上火災保険(現・三井住友海上火災保険)に入社。商品企画などを手掛ける。退社後、渡米し、サンダーバード国際経営大学院にてMBAを取得。シリコンバレーでベンチャー支援事業に携わる。2010年、電動バイクの製造販売を手掛けるベンチャー企業、テラモーターズを設立。創設から2年で国内シェアトップの地位を獲得する。12年にはベトナムとフィリピンに現地法人を設立した。著書に『世界へ挑め!』(フォレスト出版)がある。


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