Vol.27 仕事と私 挑戦を通じて インタビュー (株)星野リゾート 代表取締役社長 星野佳路さん

星野佳路さんprofile

1960年長野県軽井沢生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、アメリカのコーネル大学ホテル経営大学院修士課程修了。海外でのホテル開発事業に従事した後、91年に星野温泉代表取締役に就任。経営難に陥った各地の観光施設を次々に再生させて注目を浴びる。国土交通省の「観光カリスマ百選」第2回選定委員会から「観光カリスマ」に認定されている。

休みなく挑戦を続けてきましたが、頂上に近づいている感覚はありません。あるところまで登ると、次の山が見えてくるんです。

施設をブランド化しメッセージを強化する

「星のや」「リゾナーレ」「界」。この3つが、星野リゾートの現在の主力ブランドです。私たちがブランド戦略に本格的にチャレンジし始めたのは、3年ほど前からでした。  星野リゾートが運営する施設は、今年中に30まで増やす予定です。地域の魅力を最大限に生かした旅館やホテルを作る。そんなテーマを掲げて、これまで全国の施設を運営してきました。結果、それぞれの施設に地域の魅力を十分に反映させることができましたが、一方、施設ごとに持ち味がばらばらで、お客様が選択する基準が分かりにくいという難点もありました。そこで、「星のや」は日本文化を味わえる和のリゾート、「リゾナーレ」は家族でアクティブに過ごせるリゾートホテル、「界」は高級温泉旅館──と、各施設にブランドを冠し、どういった施設であるかを明確にすることで、お客様がその時々で自分に合った施設を容易に選択できるようにしたのです。

従来、私たちの戦略は「同じ施設のリピーターになっていただく」というものでした。たとえば、「星のや 軽井沢」に来てくださったお客様に、次のシーズンにも来ていただくにはどうすればよいかが課題でした。しかし、私はあるときから、「いろいろな場所に行ってみたい」というのが旅の本質的なニーズではないかと考えるようになりました。軽井沢の次は沖縄、その次は北海道──。それがお客様の偽らざる本音なのです。


現在の戦略は「施設のリピーター」を増やすことから「グループ全体のリピーター」を増やすことにシフトしています。今年は星のや、来年は界、その次はリゾナーレと、全国の施設を楽しんでいただきたい。そんな提案ができるようになったのも、ブランド戦略が功を奏したためだと思います。

ファミリー層をターゲットにした新感覚の施設

昨年オープンした「星野リゾート リゾナーレ熱海」の最大のチャレンジは、熱海に再び家族客を呼び込むことでした。観光地として絶頂期にあった昭和30・年代の熱海は、日本有数の「家族で行きたい温泉地」でした。しかし近年は、決して人気のある観光地とは言えなくなっています。昔のように、熱海を家族客でにぎわう場所にするにはどうすればよいか。その課題を解決するために、すでに閉館していた施設にリゾナーレブランドを冠して再生させたのです。

リゾナーレの特徴は、お子様のいるご家族をターゲットにしている点です。この層は、旅行客中最大のセグメントでありながら、観光業界ではこれまで敬遠されてきました。旅館で静かに過ごすのは難しいし、可処分所得も多くはありません。また、旅行をするのは学校の休み期間に集中するので、オフシーズンの需要も見込めません。私たちはその難しいマーケットに切り込みました。最初にオープンしたのが八ヶ岳で、現在は熱海を含め4館まで増えています。

ご家族で来ていただくには、子どもが遊べる施設やアクティビティがなくてはなりません。また、夫婦でゆったり過ごせる時間も必要です。リゾナーレ熱海では、お子様がシェフに扮してデザート作りができるレストランや、家族で本を読んで過ごせるカフェ、無料の託児所など、従来のリゾート施設にはなかったサービスを用意しました。

星野佳路さん

またこの施設では「社員の育成とチーム作り」にも力を入れました。グループのスタッフと地元で採用した人材が同じ環境下で力を発揮できるよう、混成チームを作り、時間をかけてトレーニングを行いました。これもまた一つの大きなチャレンジだったと言えます。


星野リゾート リゾナーレ熱海

相模湾が一望できる「星野リゾート リゾナーレ熱海」のWブックス&カフェW。本棚には絵本や旅の本がずらりと並ぶ。奥の壁は高さ約6.5mのクライミングウォールになっており、4歳から体験することができる。

日本の観光を「輸出産業」にしたい

これまで休むことなく挑戦を続けてきましたが、まだ道半ばで、頂上に近づいている感覚はありません。あるところまで登ると、次の山が見えてくる。そんな感覚です。

現在は、海外からの旅行客をいかに呼び込み、その数を増やすかに挑んでいます。東日本大震災後、海外のお客様を今以上に意識した施設やサービスを作らなければならないと真剣に考えるようになりました。それがあって初めて、日本は「外国人が訪れてみたい観光地」になると思うからです。

今後の目標は、日本の観光を「輸出産業」にすることです。現在、世界の主要都市のホテルは、どれも清潔で近代的な、ある意味では代わり映えのしない施設になっていると感じます。そこに日本旅館のようないくぶん変わった観光施設があってもいいんじゃないでしょうか。丁寧さ、礼儀正しさ、きめ細かいおもてなしー。今、日本人のホスピタリティは世界中で評価されています。その国民性が最も生かされるのが観光産業だと私は考えています。世界中の都市を日本車が普通に走っているように、当たり前のように日本旅館がある。それを実現させるために、これからもチャレンジし続けていきたいと思います。


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