Vol.24 仕事と私 挑戦を通じて インタビュー 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科特別招聘教授 ドワンゴ取締役 夏野剛さん

夏野剛さんprofile

年神奈川県生まれ。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別招聘教授。ドワンゴ取締役。88年、早稲田大学卒業後、東京ガスに入社。93年にペンシルベニア大学経営大学院ウォートンスクールに留学。ハイパーネット副社長を経て、NTTドコモに入社、iモードビジネスの立ち上げに携わる。08年より現職。ほか、10社以上の社外取締役を務める。『1兆円を稼いだ男の仕事術』(講談社)ほか著書多数。

社会を少しでも良くしていきたい。そんな気持ちで仕事に臨めば、理解してくれる人と必ず出会えます。

会社と個人のあるべき関係を教えてくれた恩人

会社や社会に初めて関わったのは、大学時代にリクルートでアルバイトをした時のことでした。当時、リクルートで編集の仕事をしていた松永真理さんは、私にこんなことを教えてくれました。会社イコール自分ではない。会社と適切な距離を保ち、自分を活かしながら会社にも貢献できるのが、正しい社会人のあり方だ──。それは強烈な言葉でした。私はその後、大学を卒業して社会人人生をスタートさせることになりますが、いつも「個人として自立しながら、会社とより良い関係を結び、社会の役に立つ」ということを自分の原則にしてきたように思います。

松永さんは、後にNTTドコモに私を呼んでくれ、ともにiモードビジネスをゼロから作り上げていくことになります。まさに、私の人生の転機を作ってくれた恩人です。

iモードを成功に導いた2人の大器との出会い

私が入社した当時にNTTドコモの社長だった大星公二さんと、私の上司だった啓一さん。このお2人との出会いも、私の人生を大きく左右しました。

大星さんは、経営者として、本質を見極める力をお持ちの方でした。入社して間もない頃、NTTドコモに、当時発足したばかりだったJリーグチームのスポンサーにならないかという話をいただいたのですが、この案件を決定する会議で大星さんがおっしゃった言葉は、今でも耳に残っています。「スポンサーにはなります。しかし、ユニホームにNTTドコモの社名を入れないでください」。理由はこうです。NTTドコモは連戦連勝でなければならない。一方、サッカーチームが勝ち続けることはどんなに強いチームでも不可能である。負ける可能性がある以上、NTTドコモの名前を使うことはできない──。ビジネスの本質を見ている方だと思いました。「スポンサーになるからには、企業名を露出すべし」という常識に捉われないすばらしい経営者だと思いました。


私が大星さんから学んだことは、一種のファイティングスタイルです。簡単に喧嘩をしてはならないが、道理が通らないこととは断固として戦う。そしてその喧嘩には必ず勝つ。そういったスタイルを教えていただきました。

もう1人の榎さんは、外部から入社した私の庇護者であり続けてくれた方です。いつの時代、どの会社でもあることかもしれませんが、前例のないことや革新的なことをやろうとすると、必ず周囲から反発を買うものです。しかし、榎さんは「夏野のやり方でいい」と言って、いつも周囲を説得してくださいました。彼の存在があったからこそ、私は自由に発想し、考えた通りに事業を進め、そして確かな結果を残すことができたのです。

大星さんと榎さんがいなければ、iモードはあそこまでのビッグビジネスになることはなかったかもしれません。私の人生もまた、今とはずいぶん異なったものになっていたと思います。

「好きな人」とのつながりが自分の成長を促す

私は、自分の人生は自分では決められないと思っています。一寸先は闇、5年後に自分が何をやっているかなど、まったく想像できません。だからこそ、自分がすべきことは、日々の仕事に全力で取り組むことであり、それによって社会に貢献していくことだと思っています。自分のポジションを守るためとか、お金をたくさん稼ぐためではなく、社会全体が少しでも良い方向に向かうように何かをする。そんな気持ちで必死に働いていれば、必ず自分を理解してくれる人と出会えるものです。そうして、そこから新しいネットワークが生まれていくのです。

11年間勤めたNTTドコモを退社した時も、さまざまな方から連絡をいただきました。慶應義塾大学の村井純先生、ドワンゴの川上量生(のぶお)さん、セガサミーホールディングスの里見治さん、SBIホールディングスの北尾吉孝さん、グリーの田中良和さん、NTTの鵜浦(うのうら)博夫さん、トランスコスモスの奥田昌孝さん──。私は今、慶應義塾大学の教壇に立ち、計12社の社外取締役を務めていますが、このような環境はすべて、互いの志や仕事のスタイルに共感し、信頼し合える方々とのネットワークによって実現しました。

気の合わない人や嫌いな人とも分け隔てなく付き合うことが人間的な成長につながる。私たちはそう教えられてきました。しかし、私は違うと思う。気の合わない人とあえて付き合う必要はありません。自分が好きな人、信頼できる人と付き合い、ポジティブな共感の輪を広げていけばいい。それが、出会いを自分の成長に結びつける秘訣です。

夏野剛さん

現代はITツールを活用することで、人と人のつながりを多様かつ緻密にすることができる時代です。ITを上手に活用して魅力的な人たちと出会い、顔を合わせて互いの思いやビジョンを語り合う。そこから次の何かが生まれていく。私はそう思っています。


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