Vol.52 Column 国や大学ごとに多様な欧米のインターンシップ事情

欧米は採用とインターンシップが直結

欧米では、多くの大学などの教育機関が授業とインターンシップ(企業での実習)を交互または同時進行で行う教育システムが普及しており、採用とインターンシップはほぼ直結している。欧米のインターンシップ事情に詳しい電気通信大学特任講師の田中宣秀氏は、「日本でいうと、病院での臨床実習や臨床研修が医学部の教育システムに組み込まれていますが、これこそがインターンシップの典型的な形態です。各大学、学部がそれぞれの教育目標、目的に従ってカリキュラムを組んで実習をするのが、海外インターンシップ制度の大きな特徴となっています」と語る。

アメリカの場合、1906年にシンシナティ大学で始まったCO-OP(コープ)教育という、専門分野の座学と企業での実習を交互に行うカリキュラムが学習効果を高めるとして今日、広く普及している。
「たとえばノースイースタン大学では、教養教育、経営、法律など6学部で実施され、1年次は座学、2〜4年次は春から夏の期間が実習、5年次は座学となっており、多くの学生が実習先の企業に就職します」

アメリカではCO-OP教育以外にも、企業が主体となって実施するインターンシップなど、3カ月程度の就業体験も普及している。社員(専門家)や経営者の仕事を観察して学習するシャドウイングや、夏休みなどに短期プロジェクトに取り組むものなどがあり、これらのインターンとして採用されることが就職するための最初の関門となる。
またイギリスでも教育目標に沿って大学独自のインターンシップ制度がある。なかでもブリューネル大学では3年次に1年間の就業体験をもったり、半年間の就業体験と座学を2度繰り返したりするサンドイッチ・コースがあり、有名だ。また多くの学生は入学前に1年間、海外に出て就業体験などをするGap Year 制度を利用して異文化体験をしている。

一方、ドイツは徒弟制度という12世紀以来の伝統を引き継いだデュアルシステムが今も残るのが特徴で「週に3日企業で訓練を受け、残りの2日を職業学校で資格取得を目指して勉強しています。その後に大学に入学しますが、学術大学ではインターンシップが必修ではないケースもありますので、入学後に自らインターンシップを体験する学生もいます。また3年次に海外インターンシップ研修が必修になっているブレーメン経済工科大学のような専門大学もあります」。

学生を育てるという精神が必要

このように欧米では産学連携教育が盛んだが、実は日本でも戦前には行われていた。東京大学の前身・工部大学校では校中修学と実地修学が交互に行われ、また東京工業大学の前身・東京職業学校でも現業練習があった。これら実習先に就職することも不思議ではなかったという。
「しかし日本では戦後、企業実習と採用を結びつける考えは採用の早期化を招くと大学側は考え、また企業側は入社後に育成するという方針もあって、長期インターンシップは促進されませんでした。97年のインターンシップ制度の導入以降、インターンシップを単位認定する大学は増えましたが、企業にとっては短期インターンシップで採用の母集団を作る手段という性格が一般的に強まっているのが実情です」
昨今では、新卒採用のミスマッチを防ぐ観点から政府がインターンシップと採用を結びつける方向を探る検討を始めている。また長期の企業実習を導入する理系大学や、外国人インターン生を長期間受け入れる大手企業も出てきている。

国や学制、学校により異なるインターンシップ アメリカ 専門分野の学習と実務経験を相互に行うCO-OP教育が有名。選択制ではあるが、教育学・経営学・工学・法律・保健の各学部で実施。CO-OP先に就職する学生も多い。ほかにも企業が実施する数カ月単位のインターンシップもある。 イギリス 専門的な技術大学で実施されることが多いサンドイッチ・システムが知られる。1年間の就業体験を行う4年制大学もあれば、数年の間半年の就業体験を2回実施する場合もある。総合大学では2〜3週間の就業体験、という学部もある。ドイツ 大学入学前に座学と実務を同時に学ぶ就業体験(デュアルシステム)を行う。専門大学と総合大学とで異なり、大学・学部によっても違いがある。インターンシップを実施しない学部もあれば、海外でのインターンシップが必修という学部もある。

田中宣秀氏
電気通信大学特任講師
情報理工学部 共通教育部 キャリア教育部会
日本インターンシップ学会理事
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