Vol.49 特集 「人財獲得競争時代」を勝ち抜く経営力 高度人財にとって日本は「魅力不足」“国際人財競争力調査”で見る課題と対策

日本は高度人財を惹きつける魅力に乏しい―。国際的な人財競争力調査により、そんな結果が裏づけられた。優秀な外国人財を獲得するためには何をすべきか。
人財獲得競争において、日本が抱える課題について探った。


研究機関が実施している「Global Talent Competitiveness Index(GTCI:人財競争力に関する国際調査)2015-16」が公表された。日本の"人財競争力"の総合ランキングは、調査対象国109カ国中19位という結果だった。

この調査は、起業のしやすさ、移民や外国人労働者などに対する市場の開放度など、6分野48の項目を測定してランク付け。グローバルな観点で魅力を感じる国はどこか、高度人財を惹きつける求心力として何が必要かを明らかにしている。3年連続1位となったスイスを筆頭に、ランキング上位は欧州勢が多くを占めている(右図)。

日本はEnable(外部環境要因)分野は高評価を得ているものの、Attract(人財に対する国の魅力度)分野で低評価だった。結果として、前年の20位から順位はほぼ横ばいとなった。

GTCIの諮問委員会メンバーに名を連ねる、一橋大学名誉教授の石倉洋子氏はこう指摘する。
「日本は移民の受け入れに消極的で対外開放度が低く、国内の人財流動性も乏しい。つまり他国の人を惹きつけ、優秀な人財を集める力はないとみなされていることが、国の魅力度を下げているのです。国内においても多様な人財への許容度が低いとみなされており、この傾向はGTCIがスタートした2013年から変わっておらず、最大の課題といえます」

変化を受け入れることが人財競争力を高める第一歩

世界的に見ると、通信技術が発達し、どこでも仕事ができる環境になったことで、人財の国際流動化はより加速している。同時に難民問題も深刻化し、移民の受け入れは重要なテーマとなっている。こうした世界情勢の変化に対応できていない日本は、グローバルにビジネスを展開するうえで、競争力の低下が懸念されるところだ。

2030年には、ロボットの進化や技術革新による自動化などで、多くの仕事が代替されてしまうともいわれる。少子高齢化もより深刻化し、日本では3人に1人が65歳以上の高齢者になると予測されている。社会の構造や価値観も大きく変容していくだろう。そんな環境の変化や多様化に対応するため、ダイバーシティ(多様性)の必要性が指摘され、取り組みを始める企業は増えている。しかし、変化に対する抵抗感からか、これまでと変わらない企業も多い。これは日本の国民性や文化の影響が大きいと考えられる。
「日本は多民族国家ではないため、未知の文化に柔軟に対応するスキルを磨く機会が他国に比べ乏しかったという歴史的背景があります。しかし、第4次産業革命が始まった今、最も必要なソーシャル・スキルを磨かず、変化のスピードに追いつけないことは、日本にとって大きな痛手となります」(石倉氏)

これからの時代に、グローバルな課題を解決に導ける人財を確保することは必要不可欠だ。しかし、世界的に進む少子高齢化などにより、高度人財は世界中で奪い合いの様相を呈してきている。
「国際的に人財の流動性が高まり、求められるスキルや経験がより高度になっていく中、個々人もこれまで以上に新しいスキルを磨き、キャリアアップを図っていかなければなりません。人財に対して、そういった成長機会を提供できる組織こそ、高度人財も惹きつけられるのです。日本企業は、多様な国の人々と共に働く職場の実現や若手社員の海外派遣など、社員が成長できる環境や制度づくりを進めるべきでしょう」(石倉氏)

石倉洋子氏 一橋大学名誉教授
profile
バージニア大学経営大学院(MBA)、ハーバード大学経営大学院(DBA)、マッキンゼー社を経て、青山学院大学国際政治経済学部教授、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授などを歴任。専門は経営戦略、競争力、グローバル人材。著書に『世界で活躍する人が大切にしている小さな心がけ』(日経BP社)など

自社の魅力を英語で発信し人財のニーズに応える柔軟な制度を

では、海外の高度外国人財の獲得に向けて、日本企業はどのようにアプローチすればいいのか。

企業向けに外国人社員の採用や活用について研修などを行っている、グローバル人材戦略研究所の小平達也所長はこう話す。
「まずは、自社の強み、経営戦略、将来の展望など、企業の魅力に通じる事柄を、誰にでもわかるように体系立てて明確にすること。それを、海外に向けてしっかりと発信することが第一歩です」

その際、日本語だけでなく、英語を中心とした国際的に通用する言語で発信することが重要だ。異文化マネジメントでは、相手に伝わる明確な言葉でなければ、メッセージは伝わらない。
「外国人が理解できるように、会社の制度などをグローバルスタンダードに合わせることも一つの手立てです。しかし、それは勤勉さや協調性の高さなど、日本企業の良さを捨てることではありません。面倒だと諦めずに、相手に理解してもらうための努力を怠らないことが重要です」(小平氏)

次に大事なのは、外国人財が何を求めているかを見極め、それを自社ではどう提供できるのかをしっかり伝えることだ。
「企業側と外国人財、それぞれのニーズを明確にして、どのような働きを望み、期待しているのかを明確に提示できなければ、有意義な採用にはなりません。そのためには経営層だけでなく、人事担当者も自社の事業や経営戦略のビジョンをしっかり把握し、人事戦略に反映していく必要があります」(小平氏)

外国人の大卒者を採用する際は、自社の製品やサービス、および社風について本人の理解が足りないケースも多い。それが内定辞退につながるので、人事担当者としては内定後のフォローも、外国人に対しては日本人以上に行うことが大切だ。人事担当者はそれだけ自社についての知識と理解、経営戦略までも見通す目が必要になってくる。

また、外国人財が求めるものは、高い給与だったり、育成システムやキャリアプランだったり、コミュニティだったりと、人それぞれだ。日本人とは異なる価値観を持っているということを前提に、外国人と向き合っていくべきだろう。

働き方や報酬のあり方についても、外国人を従来の"日本企業型"に無理やりあてはめようとすると、なかなか理解されにくい。例えば、日本では新卒で採用した若手社員は、時間をかけて育成することもあり、給与水準は抑えられている。しかし、外国人は長期雇用よりも数年単位の短期契約や転職によるステップアップを望むことが多い。その場合は、成果に応じて報酬が決まるジョブ型の働き方のほうが受け入れられやすい。
「何もすべての社員を同じ給与体系や労働条件にする必要はありません。社員が望む働き方に応じて制度を適応させるような柔軟性の高いシステムは、日本人にとっても魅力的なはずです。海外でマネジメント経験を積んだ人財であれば、"プロフェッショナル採用枠"を設けてまったく違う給与システムにする代わりに3年の契約社員とするなど、やり方はいろいろあるのではないでしょうか」(小平氏)

そうして、異なる文化、価値観を共存させていくことこそが、人財獲得競争を生き残る経営力となる。

小平達也氏 グローバル人材戦略研究所 所長
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「世界で通用する人づくり、組織づくり」をテーマに活動。海外赴任者向け研修ほか、英語、中国語で行うマネジメント研修への参加者出身国は25カ国以上。異文化経営学会会員。著書に『外国人社員の証言 日本の会社40の弱点』(文春新書945)など。

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