Vol.46 先進各国のワークライフバランス支援はどうなっているのか 柔軟な働き方が普及するEU諸国マネジメント改革と社員のキャリア意識向上がカギ

ワークライフバランス(WLB)を実現する「柔軟な働き方」が求められるのは日本だけでなくEU諸国も同様だ。しかし日本とEU諸国では、働き方に違いがあり、「柔軟な働き方」の実践状況も異なる。EU諸国を現地で調査した学習院大学経済学部の松原光代氏は「ドイツ、イギリス、オランダ、スウェーデンのEU4カ国に比べ、日本は『画一的な働き方』」(図1)と話す。

1 EU4カ国と日本の働き方の違い

EU諸国では、90年代から女性や高齢者の就業率上昇、少子化対策を目的とした雇用戦略を受け、各国がWLB政策を実施してきた。国によって政策に違いはあるが、在宅勤務やテレワークなど多様な勤務形態も認めている。「ドイツやオランダは法律を国が作り、足りないものを企業、社会、個人が補完し合うタイプ。スウェーデン、ノルウェーなど北欧は、国が普遍的な制度を構築します。一方、アメリカは、個人が会社と交渉、自分に適した働き方を獲得するのが基本。これらの中で、日本はEU諸国を参考にする傾向があります」(図2、図3)

2 先進国のWLB 支援施策を分類すると

だが日本のWLBはEU諸国に比べ実践度は低い。なぜだろうか?「第一に評価方法が異なります。EU諸国では目標を達成しているか否かが重要。その目標達成のためにどのような働き方を選択するかは本人の裁量に任されています。第二に、目標設定の仕方が異なります。EU諸国の企業では目標を具体的に定めるため、目標の達成度合いを基準に評価することが可能です。たとえば人事部門では『社員満足度を7割に上げます。そのために、この施策を実施します』などと、明確に目標を設定し、やり遂げれば働き方にかかわらず評価は高くなります。一方、日本の目標管理は、ここまでミッションが明確にはなっていないだけでなく、たとえ目標を達成しても、最終的にフルタイム勤務者を配慮した評価になることが少なくありません」
こうした違いの背景には両者の人事管理の違いがある。欧米では、職務給をベースとした人事管理が構築されている。このため職務範囲や目標設定を明確化しやすく、労働時間とは関係のない、成果に応じた評価が可能。一方、日本では職能給を基盤とした人事管理が構築されてきた。これは、働く時間、場所、仕事の内容に柔軟に対応しながらキャリア形成していくことが前提となっている。このため長時間労働に陥りがちになり、柔軟な働き方をすることに抵抗感が出てきてしまう。
また、キャリアに対する考え方もEU諸国と日本では異なる。EU諸国では社員が柔軟な働き方を選択しながらもキャリアをどうするかという意識を持つ。「マネジャーが部下に求めるのは、キャリア意識。たとえば育児休暇をとる女性にキャリア計画を聞き、昇進したいのなら『これだけのミッション遂行と週32時間以上の勤務が必要』などと、時短勤務を利用しながら昇進するための道筋を指南します。そのために各部門が人事権を持つのも特徴です」
労働時間管理についても、EU諸国には日本と異なる特徴がある。「EU法令では週40〜45時間で働くよう定められている上に、仕事を終えてから11時間は働いてはいけないという『インターバル規制』も法令化されています。働く時間の管理ではなく、"休む時間の管理"という発想なのです」
昨今では、こうした柔軟な働き方が男性社員や管理職にも広がり、博士号・修士号取得のために利用する例も増えているという(図4)。

3 ドイツ、オランダの具体的なWLB支援制度は? 4 ドイツ、オランダは管理職も「柔軟な働き方」が特徴

このようなEU諸国の働き方を踏まえ、日本企業がWLBを実現するには何が必要なのだろうか?
松原氏は、6つの条件を挙げている(図5)。「求められるのは、総合的な職場のマネジメント改革。働く本人も自律的にキャリアを構築する意識を持ち、それを多様な働き方で実現するという考え方の変革が必要です」

5 日本とここが違う、ドイツ、オランダ6つのポイント

松原光代氏 学習院大学 経済学部 特別客員教授 博士(経済学)
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東京女子大学卒業後、東京ガス勤務を経て、学習院大学経済学研究科博士課程に進学。専門は人的資源管理論、労働経済学。中央大学ワークライフバランス&多様性推進研究プロジェクトメンバーなどを歴任。

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