Vol.36 特集:キーワードで読み解く 2014年の雇用と労働 組織と人の今とこれから

加速する高齢化、上向きつつある景気――。
環境が変わるなか、雇用と労働市場にも変化の兆しが見受けられる。
迎えた2014年、いったいどのように動くのか。
日本型雇用はこのまま続くのか。
今年のキーワードとなりえる語句から探ってみた。

限定正社員 賛否両論の限定正社員 導入するメリットとは

2014年、雇用をめぐる話題として最大のキーワードが「限定正社員」だ。もっとも、これは新しい雇用形態ではない。「これまでにもあった転勤のない『地域限定社員』や、職種が限定された『職種別採用』も限定正社員の一種」であり、一部企業では定着した雇用形態だ。それがなぜ、急速に議論の対象になっているのか?「それは、解雇の問題と絡んでくるからです」と安藤氏は言う。

この仕組みは、地域や職種などを限定した上で雇用契約を結ぶことだが、雇用保証の範囲も限定的にならざるを得ない面がある。たとえば「地域限定社員が勤務する支店がその地域から撤退する場合は、契約は終了となる(解雇する)」などと雇用契約に書き込めるかどうかが議論されている。そして、この議論が「限定正社員=解雇されやすい社員」との印象を与え、一部からの反発につながっている。しかし限定正社員は本当に解雇しやすい形態なのだろうか?

「確かに『就業当初から業績が伸び悩み赤字が続くケースでは整理解雇できる』といった雇用契約を締結した場合は、正社員よりは不安定な形態になる可能性もあります。しかし会社側の一方的な都合で解雇できるかと言えば、全くそうではありません」(安藤氏)

前出の濱口氏は、むしろ柔軟な働き方が可能になるなど労働者側のメリットが大きい仕組みだと指摘する。「育児中の女性社員はもちろん、男性も今後は介護など職場以外の生活面で責任を負う局面は増えるはず。そういった時に転勤がない地域限定の働き方は、むしろ従業員のワークライフバランスを担保する上でも有効です」(濱口氏)

安藤氏は、そもそも「日本の正社員の“無限定”な働き方は時代の変化や諸外国の常識とは異なる」と言う。

「『どこにでも転勤します、どんな仕事でもやります』という無限定な働き方では、働く側も専門性を高めにくいですし、往々にしてワークライフバランスがとりにくくなってしまいます」(安藤氏)

会社側にとっても、その時々の事業の盛衰に伴い、柔軟に組織を変革できる人員配置にしておくことは、競争力を高める上でも重要なことだ。「職種や業務内容、責任範囲に限定がない働き方が当たり前だったことにより、日本人は、自分の職を得る“就職”という意識が低く、会社に“就社”する思想が強い。そのため、生涯のキャリアプランを描きにくく、会社に万一のことがあった場合など、変化に対応しにくい。雇用契約満了の基準が明確になることと、上記のような働き方と、どちらがより柔軟で、働く側も組織も向上できるのか、照らし合わせて議論する必要があります」(濱口氏)

ライフスタイルに合った、かつ専門性を高める働き方を選ぶか、会社に働き方を委ねるか。長きにわたって横たわってきた、無限定な働き方を考えなおすスタート地点に2014年がなりそうだ。

労働政策研究・研修機構 統括研究員 濱口桂一郎氏

profile

1958年生まれ。東京大学法学部卒業後、労働省(当時)入省。欧州連合日本政府代表部一等書記官、東京大学客員教授、政策研究大学院大学教授を経て現職。

日本大学大学院 総合科学研究科 准教授 安藤至大氏

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1976年生まれ。東京大学大学院修了。政策研究大学院大学助教授などを経て現職。専門は契約理論、労働経済学。著書に『雇用社会の法と経済』など。

【図2】 減少する正社員、増加する契約社員(2007 年と2012 年での増減率)

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