Vol.35 特集:新卒採用に一石を投じるか 日本のインターンシップ制度 組織と人の今とこれから

ミスマッチが原因となり生じる離職とその割合の高さ──。
問題点を指摘されながらも、今なお採用の中心である「新卒一括採用」。
このミスマッチを軽減する方法としてインターンシップ制度が注目されている。
日本のインターンシップの現状を探ってみた。

元来、インターンシップの本場欧米では、3カ月程度の長期にわたり「就業体験」する場合がほとんど。その定義も『就業体験』と銘打ち、『インターンが就職条件の大前提』として扱われており、企業・学生双方にとって日本とは異なる役割を担っている(詳細は「米国のインターンシップ事情」を参照)。一方日本では文部科学省がまとめた「インターンシップ導入と運用のための手引き」(09年)によると、大学の約70%、企業ではおよそ60%が「高い実習効果を得るには1か月以上の期間が必要」と考えているのに対し、実際には、1か月以上のインターンシップを実施する企業は2%程度に過ぎなかった。こういった結果からも分かるように、日本でのインターンシップは、さまざまな形に“ガラパゴス化”している(図2)。

特に大企業に多いのが、「セミナー・見学型」だ。「セミナー型は、平たく言うと、『とても早い会社説明会』。1日もしくは2日間、魅力的な社員がその会社の良さや仕事の魅力について語る“広報活動”で、採用にも直結せず、学生からの評判はあまりよくありません」(坂本氏)

見学などができても、その内容は店舗や工場見学や社員との交流会などが主体のため、学生が“お客様”であることに、あまり変わりはない。

こうした現状を受け、経団連は09年にインターンシップの在り方を「5日間以上の期間を持って実施され、学生を企業の職場に受け入れるものであること」と「採用選考活動と関係ない旨をホームページなどで宣言」すること、さらに、「企業広報としてのプログラムについては、インターンシップの呼称を使わないこと」を求めた。とはいえ経団連などが望む長期インターンシップ、上図でいうところの「職務実践型」は、簡単には普及しないようだ。「外資系企業は以前からこのやり方で優秀な人財を獲得してきましたが、日本企業は現場に学生を出すリスクを恐れる。単純に職場を見せたくない場合もあるでしょうし、現場の社員がインターンシップの実施に時間が割かれることで、営業機会を損失するなどの可能性があること、またそれを嫌がる現場で、受け入れ態勢が整わず、協力的でないことなどが要因です」(坂本氏)

【図2】 日本におけるインターンシップの分類と内容 「セミナー・見学型」 期間:1日から2〜3週間 内容:会社説明や店舗・工場などで業務を見学し、グループで作業体験などをする。社員との懇談を設けることもある 特徴:実施期間が短いため、多人数が参加できる・現場体験を通して業務を理解できる・ただし業務の実態を体験できるわけではなく、企業と学生との間にミスマッチが生じる可能性もある 「課題解決型」 期間:数日から1週間程度 内容:一つの課題が与えられ、グループで相談しながら解決策を探る。解決方法をプレゼンテーションし、順位がつく場合も 特徴:社員との交流や議論の場などがあるため学生に社風が伝わりやすい・採用とは結びつかない例もある 「職務実践型」 期間:数週間から1カ月、なかには数カ月に及ぶ場合もある 内容:実際のオフィスに配属され、実務を体験する。取引先を訪問したり、企画を立案したりと、社員と同等に近い職務を行う 特徴:実務を社員とともに経験するため、業務内容を理解しやすい・学生と長期間接するため企業側も学生の資質を把握しやすい・長期にわたる受け入れのため、社員の負担は重くなる 「採用直結型」 期間:数日から数週間 内容:グループディスカッションなどに参加する姿を見ながら、採用選考の一助にする。実際のオフィスに配属され社員とともに働く場合もある 特徴:採用選考の1過程になるため、インターンシップのプログラムを緻密に考える必要がある・費用や社員の負担は高傾向・ミスマッチが起こるリスクを軽減できる

短期型と長期型の折衷案?課題解決型の登場

そこで、最近は「セミナー・見学型」と「職務実践型」の折衷案として、「課題解決型」を導入する企業が増加している。「特に熱心なのが、希望に合致する層を競合に取られてしまいがちな業界二番手の企業や、人財の採用が大手と比較すると難しい中小企業です。学生に業務改善プランや新商品開発などを社員と同じように実際に担当させて、そのアウトプットに対してフィードバックを行う。この過程で、その企業で働く醍醐味や社会に与える影響を体感した学生が『この会社に入りたい』と就職を希望するケースも増えています」(坂本氏)。

古閑氏も、「行政と企業が協働して各地の観光資源をPRする業務に学生が参加する『観光インターンシップ』や、各地のお祭りに大学と地域と地元企業が連携して参加する『お祭りインターンシップ』など多様なインターンシップも増えている」とその効果に期待を寄せる。

ただ、いずれのインターンシップも、成功させるには、「学生と人事部や現場などの関係者がその“目的”を共有すること」(坂本氏)が鍵になる。「人事部は推進しているのに、現場が面倒に感じている、あるいは学生は就業体験だと思っているのに会社は青田刈りとして実施しているなど、どこかに温度差があるとズレが生じてうまくいきません」(坂本氏)。何のためのインターンシップか──。企業は、その目標を経営や現場と共に考え、現場と目線を合わせ、全体最適のインターンシップ体制を構築していくことが望まれている。

リバースキャリアパートナーズ代表 坂本章紀氏

profile

早稲田大学卒業後、日本電信電話(現NTT東日本)入社。
2004年、ジャパンビジネスラボに移りキャリアデザインスクール「我究館」の館長として就職・転職活動を支援。11年に独立、リバースキャリアパートナーズ設立。

嘉悦大学ビジネス創造学部教授 古閑博美氏

profile

東洋大学大学院文学研究科教育学専攻修士課程修了。
東京都講師や国立教育会館研修講師を経て現職に至る。
編書に『インターンシップ―キャリア教育としての就業体験』(学文社)、著書に『ホスピタリティ概論』(同)などがある。

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