Vol.33 特集:世界と日本の今を見る 若者が働くこと、若者を育てること

2003年以降、急速に社会問題化している若年労働者の雇用。最近では、高齢者に関連する雇用制度とも重なり、問題はより複雑化しているかのようだ。若年者雇用問題の核はどこにあり、何が若者の「働く」を阻害しているのか。若者の雇用・育成をどう捉え考えていくべきか──問題の本質に迫る。

3.日米欧に見る 高齢者雇用と若年者雇用の関係

「高齢者雇用が若年者雇用を圧迫するは本当か」

高齢者が優遇され、若者がワリを食っている―。今春施行の「改正高年齢者雇用安定法」により、そんな『世代間格差論』が過熱している。だが前出の濱口氏は「日本の若年労働者は欧米と比べ、どのような状況にあるか」の議論を抜きに、高齢者雇用と若年者雇用の関係性は語れない、と話す。「欧米の採用は、欠員補充が基本です。企業は、『Aという仕事=職務ができる人』という内容で募集を出し、対象者が応募するという形です。日本のように何のスキルもない若者を一括で採用すること自体、非常に稀なのです」

濱口氏はOECD(経済協力開発機構)の『世界の若者と雇用』という本の監訳をしたとき、世界レベルでいうところの「勝ち組」と呼ばれる層の定義に驚いたという。それは図6の説明にあるようなもので「OECDの定義なら日本の大卒の90%以上が勝ち組になります。日本の若者の失業率は、10%以上が当たり前の海外と比べても低い。このように世界と見比べれば日本の若者は、まだ恵まれているといえます」

【図6】  高校生が職業に就くまでの経路

もっとも欧米も、若者雇用対策を試みてきた。「1970〜80年代、欧州先進国では年金支給年齢を下げるなどして高齢者のリタイヤを早め、その空白を若者の雇用で埋めようとしました。しかし実務能力のない若者に熟練の代替は難しく、この政策は失敗しました」

日本でも高年齢者を若者層に置きかえれば若者の雇用が増えるという主張があるが、濱口氏は「そうでないことは、歴史が証明している」と言う。「人口の高齢化に直面する先進国は、高齢者を含め労働者を増やし年金など社会保障制度を支えるパイを大きくする必要がある。そうしなければ社会保障費負担はかえって増大してしまいます」

ただし濱口氏は日本の若年者雇用の現状を肯定しているわけではない。「氷河期に就職できなかった人がそのまま正社員になれず『ミドルエイジの有期雇用者』になったように、日本の新卒一括採用は、一度失敗すると、その後も労働市場のメインストリームに戻れない構造問題を抱えている。就活時の景気に一生を左右され、再チャレンジできないこの構造が大きな問題です」

他方、欧米では就職することを「ジョブを得る」というように、雇用契約を職務として締結する。そのため技能を身に付ければ、一度や二度の就職の失敗は取り戻しやすい。「ドイツは学校に行きながら週2日ほど就労して職能を身に付ける『デュアルシステム』を導入、若者の雇用を増やしました。OECDもこの成功に倣い、若年雇用問題解決は『高齢者の追い出し』ではなく、『若者の育成』へシフトしています。しかし日本では、実務を学べる場が企業の中だけで、そこに入らない限り、永遠にメインストリームに戻れないまま。それを改善するためには、日本型雇用そのものを変えていく必要があります」

【図7】  フリーターから正社員への転職状況

濱口氏はその案として、「リーダーやマネジャーを育成する既存の『新卒コース』と、地域や職務を限定した『限定社員コース』の二本立てで社員を採用し、後者で過去の新卒採用枠からもれた人を吸収する。そうすることで若者が再チャレンジできる社会に変えていくのです」。働き方が多様になれば、埋もれた優秀な人材の発掘にも繋がり、組織の活性化も期待できそうだ。

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