Vol.28 特集 経営戦略としてのダイバーシティ・マネジメント なぜ企業はダイバーシティを実現しなければならないのか

ダイバーシティ・マネジメント実践事例 Case Study1 多様な働き方を支援し人材を活かす人事システム イオン株式会社

雇用形態の区分を取り払い「機会の均等」を実現

一般的には正社員と有期雇用労働者の間に仕事の内容や処遇、会社からの期待値などの点で明確な区分けがある場合が多い。「イオン」をはじめとする小売店舗を全国で展開するグループ会社のイオンリテールは、2004年からその区分けを可能な限り廃止し、多様な働き方を選択できる仕組み作りに取り組んでいる。

同社の従業員のカテゴリーは現在、「N(ナショナル)社員」「R(リージョナル)社員」「コミュニティ社員」「アルバイト」の4 つ。「N 社員」は国内外の転勤の可能性がある社員、「R社員」は地域ブロック内での転勤の可能性がある社員、「コミュニティ社員」は転居をともなう転勤のない社員である。この「コミュニティ社員」は、働き方をフルタイムとパートタイムのいずれかから選択することができる。

一般的な区分けでは、「N社員」と「R社員」が無期雇用の社員、「コミュニティ社員」と「アルバイト」が有期雇用の従業員ということになるが、イオンリテールでは、この区別が事実上取り払われている。「資格や登用機会の違いは一切なく、社内の教育制度も同等に活用することができます。コミュニティ社員の立場で主任や店長になることもできるし、登用試験を受けてR 社員になることも可能です」

222店のショッピングセンター、590店の総合スーパー、1,537店のスーパーマーケットを展開する(2012年2月末)。写真は2011年にオープンしたイオン伊丹昆陽店。

そう説明するのは、イオンのグループ人事部の二宮大祐部長だ。現在、コミュニティ社員の中で課長クラス以上のポジションに就いている人はおよそ60 名。主任は650 名を超えている。

ライフスタイルに応じて選択できる働き方

全従業員の7割以上を占めるコミュニティ社員は、「お客様を最も熟知した社員」だと二宮さんは言う。「小売業は地域産業であり、お客様はその地域で生活している方々です。コミュニティ社員は、弊社の従業員であると同時に、お客様と立場を同じくする生活者でもあります」

柔軟で透明性のある人事制度は、コミュニティ社員のモチベーションを向上させる。地域生活者であるコミュニティ社員が役割と責任感を持って働くことで、顧客の心を適確につかむ店舗が実現する──。それが、この仕組みに期待される効果の一つだ。「もちろん、すべてのコミュニティ社員がキャリアアップを目指すわけではありません。本人の希望やライフスタイルに応じた働き方を選べるのがこの制度の特徴です。主任になってフルタイムで働き自分の能力を思い切り発揮することもできるし、1 日数時間だけ働いて、残りの時間をプライベートに充てることもできます」

環境・社会貢献活動にも積極的なイオン。全国でさまざまなイベントなどを開催している。

イオングループでは、現在、「鮮魚士」「寿司マスター」「農産マスター」「生活家電アドバイザー」など、約30の社内認定資格を用意している。こういった資格試験を受けて、特定分野のスキルを高めていくこともできる。

 働き方やキャリア作りの多様性を実現し、それぞれの従業員が自分のスキルや希望に応じて働くことができる仕組み。このような新しいシステムは、「理念」と「環境」との掛け算によって生まれると二宮さんは話す。市場や社会環境は日に日に多様化し、複雑になっている。一方、イオングループには、「国籍・年齢・性別・従業員区分を排し、能力と成果に貫かれた人事を実現する」という変わらぬ理念がある。その掛け算の結果、必然的に導かれる解。それがイオンのダイバーシティだ。今後、他のグループ企業にも、業態や規模などに応じた新しい人事システムが導入されていく予定だという。

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