Vol.26 特集 大学の秋入学で採用はどう変わるか 秋入学論議を契機に教育界と産業界の国際化について考える

秋入学、私はこう考える3
楠木ライフ&キャリア研究所代表/元関西大学非常勤講師 楠木新氏 秋入学の仕組みがフィットするかどうかは企業ごとに異なる

企業内で長年採用を担当してきた経験から見て、秋入学の仕組みがフィットするかどうかは、企業の人事戦略によって異なると、私は考えています。企業の基本的なスタンスは、「希望に適う人材をほしい時期に採用する」ことであり、伝統的なスタイルの日本企業は依然、「採用の適当な時期は4月」と考えているのが実情です。

企業の人事担当者にとって、採用活動は大きな労力を必要とするものであり、それが年に数回、あるいは通年で発生することになれば、その負担は相当なものです。一括採用のサイクルの下では、採用回数が増える分研修も増加し、結果、社内のリソースが追いつかなくなるといったケースも想定されます。

現在の日本の新卒一括採用のメリットとして、人材教育を同じタイミングで行えることに加え、採用の際に「比較しやすい」こと、同時期に入社することによって、「横のつながり=連帯感」を醸成しやすいことなどが挙げられます。転職市場が活発化している現在でも、「同期」という結びつきは重要視されており、もともと「繋がり」に重きを置く日本人にとっては、仕事を進めるうえでの潤滑油になると考えられています。

秋入学のメリットとして、グローバルなセンスを身に付けた人材の輩出が挙げられます。それは期待すべきことですが、必ずしもそうした人材を必要とする企業ばかりではないと、私は考えています。もちろん、企業は主体性のある人材を必要としていますが、組織の中で協力・連携しながら働くことができるという点を重視しているケースも少なくないと思います。

一方、秋入学の議論が活発になる機会に、各企業は自社の採用方針や採用方法、社員の育成体制を改めて根本から見直すとよいと思います。これは秋入学の動きを前向きにとらえるきっかけにもなるのではないでしょうか。

現在、秋採用をめぐる議論は、多くの場合「総論」ですが、各企業の採用活動はあくまで「各論」の世界です。その点で、メディアの論調と企業の人事部の現実的な感覚には、まだ開きがあります。今後、企業の意見も交え、より一層の議論を重ねることで、実現の可能性が高まっていくのではないか。そんな実感を私は持っています。

楠木新氏

京都大学卒業後、大手企業に勤務。人事・労務関係を中心に、経営企画、支社長等を経験。昨年まで、関西大学非常勤講師も務める。『人事部は見ている。』(日本経済新聞出版社)など著書多数。

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