Vol.25 特集 アジアでの事業展開に必要な「組織作り」 アジアにおける人材の獲得と育成

アジア進出が拡大し続ける一方で、日系企業の多くが「人材採用・育成」において悩みを抱えています(表1・2)。
求める人材を採用し、一人ひとりが高いパフォーマンスを実現する組織を作るにはどうすればよいか。
現地での人材採用・育成を行う際の重要な視点と、有効な方法をご紹介します。

「就職したい企業」にランクインしない日本企業

スウェーデンの大手市場調査会社、ユニバーサム社が発表した「理想的な企業(2011 年版)」に関する調査結果は、日本企業にとって大変ショッキングなものでした。この調査は、アジア各国の学生を対象にした、いわゆる「就職したい企業ランキング」ですが、対象となった中国、香港、シンガポール、インドのいずれの結果を見ても、日本企業は上位100社に、1、2 社しかランクインしていない、という惨憺たる結果でした。さらに50位以内となると、日本企業の名前が見られるのはインドのみになります。

「これは文系の学生を対象とした調査なので、エンジニアなどを目指す理系の学生では、いくぶん違った結果になる可能性もあります。とはいえ、アジアにおける日本企業の存在感が大幅に低下しているのは、紛れもない事実です」

そう話すのは、人事・財務分野における世界有数のコンサルティング会社、タワーズワトソンの鈴木康司氏です。グローバル展開を進める日本企業の人事制度構築などをサポートしている鈴木氏は、この5 年ほどの間に日本企業のアジアでの人気が、目に見えて落ちていることを痛感していると言います。

「工場など生産現場での人材の定着率は、そう悪くはありません。しかし一方で、営業やマーケティングなど売上・事業戦略に欠かせない部門での定着率は低迷しており、企業によっては、入社後数年で退職するケースも多く見られます」

表1

「昇進のスピードに大きな差」

それでは、なぜ日本企業は、アジア諸国においてそれほどに「人気がない」のでしょうか。その理由の一つは、「日本企業の給与は低いというイメージがあるため」と鈴木氏は指摘します。もっとも、これはあくまでもイメージに過ぎません。実際、欧米やアジアの同規模の企業と比較して、日本企業の給与水準が格段に低いということはないからです。しかし、そのイメージの定着を裏付ける根拠はあります。

「日本企業における昇進のスピードが、欧米系企業と比較して非常に遅いことは確かです。『職務給』が基本の欧米企業では、企業が望む成果を上げることができれば、入社後数年でマネージャーになることも可能です。30 代で部長になるケースも珍しくありません。一方、日本企業は依然として横並び意識が強く、いまだに年齢や勤続年数、あるいは学歴などを根拠とする昇進制度を踏襲している会社が少なくありません」

たとえば、給与水準が同程度の日本企業と欧米企業に同時期に入社した場合、昇進スピードが異なるため、数年後には年収に大きな差が生じます。このため、一部分だけを切り取ると、「日本企業は低給与」というイメージになるわけです。

しかし、本質的な問題は、給与の多寡ではありません。アジアの若者の多くは、ハングリー精神が旺盛で、20 代から30代前半のうちに、自分の能力やスキルを向上させ、少しでも上を目指したいと考えています。日本の高度成長期に多くの日本人が持っていたような上昇志向や立身出世の志向に共通するマインドです。したがって、キャリアアップに時間がかかる企業や将来のキャリアパスが見えにくい企業は、おのずと敬遠されます。

「最大の問題は、多くの日本企業のアジアにおける人事制度が、依然として『終身雇用』を前提に構築されているということであり、ルールに従順な人材を重視するカルチャーが根強く残っているということです。会社の仕組みに従い、周囲と足並みを揃え一定期間時間をかけて昇進する。そういったカルチャーを受け入れることができる人材は、その企業に定着はしますが、いざチームを統制する立場になった時、統率力を発揮することは難しいでしょう。組織や業務をマネジメントする経験を積んでいないからです。結果、そういった組織では、そのエリアの従業員がマネージャーになることはまれで、日本からの駐在員がマネジメントを行うことになります」 

優秀な人材は数年で辞めていき、定着する人はマネジメント力が不足していることが多いため、現地の人材の有効活用は実現しない。そのような悪循環が続いているのです。

表2

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