Q7 マタニティハラスメントに関する派遣元、派遣先の責任

派遣社員が妊娠を理由に短時間勤務を求めてきたので、派遣元に交代を要請したところマタハラになるからと断られてしまいました。派遣先にもマタハラ防止の責任があるのでしょうか。

派遣先にも責任があります。男女雇用機会均等法のうち以下の3つは派遣先、派遣元両方に雇用主としての責任を課しています。

  • 第9条 (妊娠出産を理由とした不利益取扱の禁止)
  • 第11条 (セクハラ防止)
  • 第12条 (母性健康管理の措置)

派遣社員が医師の意見により短時間勤務を求めている場合、母性健康管理の措置としてこれに配慮しなければならないため、第12条に違反しています。次に派遣社員の交代を求める理由が、母性健康管理措置を求めたことであれば不利益取扱に該当し、第9条に違反していることになります。不利益取扱は、交代要求だけではなく派遣社員の希望しない配置変更や自宅待機、派遣社員の就労を拒むこと等、直接的なものだけではなく「就業環境を害する」行為も含まれています。妊娠したことについて嫌味を言ったり、遠まわしに退職を勧めたりする行為も含まれています。

派遣元も同様の責任を負い、妊娠、出産等を理由に雇止めや派遣社員の希望しない配置変更を行うことはできません。そのため、派遣先から妊娠出産を理由にした交代を求められてもお断りすることになります。法違反の不利益取扱を行った場合、事業主名の公表が行われることもあり、もし派遣社員について法違反があれば派遣元、派遣先両方の社名が公表される恐れがありますので、適切な対応が必要になります。

POINT男女雇用機会均等法が変わります

2017年1月1日から男女雇用機会均等法が改正され、妊娠、出産、育児休業等、介護休業等を理由とする職場での就業環境を害する行為を防止するために雇用管理上必要な措置を講じることになりました。前述の通り就業環境を害する行為を行うことは現行法でも禁止されているのですが、企業に防止策は求めていませんでした。今回の改正で労働者への周知・啓発、相談・苦情処理の整備を行い、セクハラの相談窓口と一元的に運用することが望ましいとされています。

Profile

答える人
社会保険労務士 中宮 伸二郎 (なかみや しんじろう)

立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。労働法に関する助言を通じて、派遣元企業、派遣社員双方に生じやすい法的問題に詳しい。2007年より派遣元責任者講習講師を務める。

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