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もっと知りたい!雇用労働ナレッジノート

「多様な働き方」を推進する環境づくりが活発化しています。
働く人の現状に最良な時間や場所、そして介護や育児などの両立を支える
社会基盤の構築が大切で、そのための法整備が進んでいます。
『雇用労働ナレッジノート』では、変遷する労働法制を
分かりやすくお伝えします。

隔月連載 第E回

「雇用保険法」と「職業安定法」と「育児・介護休業法」の3法が一括改正

就業促進や雇用継続を通じ職業生活の安定を目指す
求職者保護の視点で求人・募集情報の適正化を促進

3月末、働く人と事業者の双方に大切な「雇用保険法改正案」が国会で成立し、4月1日から施行されています。また、雇用保険法と併せて、「職業安定法」と「育児・介護休業法」の2改正法案も成立しており、それぞれ運用に向けた準備が進んでいます。

政府は「急速な少子高齢化が進展する中、就業促進や雇用継続を通じた職業の安定を図り、誰もが安心して活躍できる環境の整備を進めることが重要な課題」との認識に立ち、3法案をセットにしました。そして、雇用保険制度の充実や、子育てと仕事の両立がしやすい就業環境の整備とともに、職業紹介事業などの適正な事業運営を確保するための措置の拡充を連動して進めていく方針です。
今回の「ナレッジノート」では、改正されたばかりの3つの法律の要所をお伝えします。

改正雇用保険法、4月からの「料率引き下げ」と「失業等給付の拡充」が柱

今回の雇用保険法改正は、大きく2つに分類できます。ひとつは、働く人と事業主が折半して国に納めている雇用保険料の引き下げ。もう一方は、保険料を原資に賄っている失業等給付の拡充です。はじめに、保険料の改定ですが、雇用保険料率を2017年度から3年間、収入の0.8%から0.6%へと下げました。この数年は、有効求人倍率や失業率の推移をみても分かる通り、雇用環境が良好であるため、給付費の減少と堅調な保険料収入が維持されています。
このような情勢を踏まえ、保険料率を下げ、さらに給付内容が充実しました。ただし、今回の措置は、2017年4月から「3年間限り」であることに注意が必要です。
まず、保険料率の引き下げを図で見ると、下記の通りになります。

2017年度の雇用保険料率

次に、失業等給付で拡充、変更した主な部分は、下記の通りです。

●2008年のいわゆる「リーマン・ショック」時に創設した暫定措置を終了。その一方で、雇用情勢が悪い地域に居住する者の給付日数を60日延長する暫定措置を5年間実施。また、災害により離職した者の給付日数を原則60日(最大120日)延長できるようにします。

●雇止めされた有期雇用労働者の所定給付日数を倒産・解雇等並みにする暫定措置を5年間実施します。

●倒産・解雇等により離職した30〜45歳未満の者の所定給付日数を引き上げました。具体的には、30〜35歳未満の給付日数を90日から120日に、35〜45歳未満を90日から150日にそれぞれ延長。
(以上は2017年4月1日施行済)

●基本手当等の算定に用いる賃金日額について、直近の賃金分布等を基に、上・下限額等を引き上げます。
(2017年8月1日施行)

●専門実践教育訓練給付の給付率を、費用の最大割合をこれまでの60%から70%に引き上げます。
(2018年1月1日施行)

●移転費の支給対象に、職業紹介事業者(ハローワークとの連携に適さないものは除く)等の紹介により就職する者を追加します。
(2018年1月1日施行)

【雇用保険法とは】

労働者の生活、雇用の安定と就職の促進のために、失業された方や教育訓練を受けられる方などに対して、失業等給付を支給します。また、失業の予防、雇用状態の是正と雇用機会の増大、労働者の能力の開発および向上、その他労働者の福祉の増進等をはかるための二事業を行っています。
二事業とは、(1)雇用安定事業と(2)能力開発事業のことで、

(1)雇用安定事業は、被保険者等に関し失業の予防を図るとともに、雇用状態の是正、雇用機会の増大等雇用の安定を図るための事業です。例えば、雇用調整助成金(失業予防に努める事業主を支援)、特定求職者雇用開発助成金(就職困難者の雇入れを支援)、地域雇用開発助成金(地域の雇用開発を支援)などがあります。

(2)能力開発事業は、職業訓練施設の整備、労働者の教育訓練受講の援助など、職業生活の全期間を通じた労働者の能力開発・向上を図るための事業です。例えば、民間等を活用した効果的な職業訓練等の推進、キャリア形成促進助成金などです。

改正職業安定法、求職者保護のために多面的な角度から環境整備を図る

改正職業安定法は、求職者保護の観点に基づき、「職業紹介事業の機能強化」と「求人・募集情報の適正化」に向けた見直しが行われました。社会経済の変化に伴い、職業紹介事業や募集情報等提供事業など、求職者や求人者が利用する事業の多様化が進む中、求職者等が不利益を被るなどの不適切な事案に対して的確に対応していくと同時に、求職と求人のより適切かつ円滑なマッチングを進めていくことも念頭にしています。募集情報提供事業とは、求人情報サイトや紙媒体などを指しており、改正法の施行は大半が2018年1月で、一部は公布から3年以内に施行されます。主な改正点と、企業が求人や募集を行う際の留意点などを見ていきましょう。

下記の項目が、主な改正点となります。

(1)ハローワークや職業紹介事業者等のすべての求人を対象に、一定の労働関係法令違反を繰り返す求人者の求人を受理しないことを可能とします。公布から3年以内に施行。
※現行法では、受理しないことが可能なのは、新卒者向けのハローワーク求人だけとなっています

(2)求人者について、虚偽の求人申込みを罰則の対象とします。また、勧告(従わない場合は公表)など指導監督の規定を整備します。2018年1月施行。

(3)求人者・募集者について、採用時の条件があらかじめ示した条件と異なる場合等に、その内容を求職者に明示することを義務付けます。2018年1月施行。

(4)職業紹介事業者に紹介実績等の情報提供を義務付けます。2018年1月施行。

(5)ハローワークでも、職業紹介事業者に関する情報を提供します。4月1日施行済。

(6)募集情報等提供事業について、募集情報の適正化等のために講ずべき措置を指針(大臣告示)で定めるとともに、指導監督の規定を整備します。2018年1月施行。

以上の項目については、今後、細部が決まり次第、「ナレッジノート」でポイントを解説していきます。

■求人・募集について、企業側の正しい情報の発信が求められます

今回の改正職安法を総合すると、その中心は、求職者を守るための環境整備をインターネットの普及など時代に合わせて改善・向上を図ったことだと言えます。環境整備の中には、「求人・募集企業の対応」、「職業紹介事業の機能強化」、「募集情報提供事業者(求人情報サイトや紙媒体など)の健全化」などが含まれます。そうした内容が、「主な改正点」に盛り込まれていますが、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の建議(2016年12月13日)や国会審議(3月7日〜同31日)などを踏まえると、(1)〜(3)にも記されている通り、第一義には「求人・募集企業の対応」を重視しており、違反した場合の罰則が加えられています。「求人・募集企業」とは、人材を募集している企業・事業所を指していますので留意しなければなりません。

Q&A

企業の求人に関する情報のあり方(内容や表現など)については、今後も時流に合わせてルールが厳しくなることが予想されます。求人広告を取り扱う業界団体の公益社団法人・全国求人情報協会は、昨年6月、若者雇用促進法で企業(募集主)に義務付けられた「残業時間などを含む職場情報の提供」の趣旨を踏まえ、広告を掲載する企業に周知するための「取り組み方針」を発表しています(第3回ナレッジノート参照)。さらに、今回の改正を先取りする形で、同協会が事務局を務める求人情報適正化推進協議会は今年2月に「求人情報提供ガイドラインと適合メディア宣言制度」を発表し、掲載を差し控えるべき事項などを整理しています。
求人企業は、ルールの変化について、最寄りの労働局やハローワーク、全国求人情報協会が発信する内容にアンテナを高くしておく必要があります。

【職業安定法とは】

職業安定法は、労働者の募集や職業紹介などの基本的な枠組みを定めた法律です。労働者の募集とは、労働者を雇用しようとする求人者が、自分、または他人に委託して、仕事を求めている求職者に対し、労働契約を締結するように誘うことです。職業紹介は、仕事を求めている求職者と人材を求めている求人者(事業主)からそれぞれ求職と求人の申し込みを受け、求職者と求人者の間に雇用関係(労働契約)がマッチングするように斡旋することです。

育児・介護休業法、育休を現行の1歳半から2歳に半年間延長

今年1月に、改正育児・介護休業法が施行されたばかりですが、今年の10月1日から新たな変更が加わります。現在の育児休業は原則1歳までで、保育所に入れない場合などに限り1歳半まで延長が認められています。これを、現行の1歳半から2歳に半年間延長するもので、子供が1歳半になっても保育所へ入所できない場合の“緊急避難措置”です。
雇用保険の育児休業給付の対象にもなるため、セットで改正となりました。この法律については、ナレッジノートの「第2回」で解説しております。

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