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もっと知りたい!雇用労働ナレッジノート

「多様な働き方」を推進する環境づくりが活発化しています。
働く人の現状に最良な時間や場所、そして介護や育児などの両立を支える
社会基盤の構築が大切で、そのための法整備が進んでいます。
『雇用労働ナレッジノート』では、変遷する労働法制を
分かりやすくお伝えします。

隔月連載 第C回

「改正障害者雇用促進法」の動きと企業の着眼点を解説

雇用分野で障がいを理由とする差別を禁止、 精神障がい者を加えた法定雇用率見直しとは

働くことに軸足を置いた、全員参加型社会の実現を目指す流れが加速しています。それは、長時間労働の是正などを柱とする「働き方改革」の視点だけでなく、多様な人材が同じ職場で一緒に働く「職場の環境の変化と意識改革」が重要なカギを握っているとされています。若者雇用の促進や高齢者雇用を後押しする法律が多面的な角度から進められる中、今年4月から施行された「改正障害者雇用促進法」も全員参加型社会の一環と位置付けられています。
企業や職場が障がいを持つ人と共に働く「多様性のある職場環境」を整備することが明確に示された法改正で、少子高齢化時代に企業の枠を超えた社会全体に期待される効果もあります。
そうした「改正障害者雇用促進法」ですが、1年半後の2018年4月から法定雇用率の算定基礎に精神障がい者を加えることが決まっていることもあり、既に今春施行された分と合わせ、法改正に関連するさまざまな情報があふれているように見受けられます。
そこで、今回は、「改正障害者雇用促進法」について企業がいま知っておくべき基本的事項と要所を解説します。

「障害者雇用促進法」の対象はすべての企業、雇用率制度導入から半世紀

障がい者の雇用を促す法制度は、日本では半世紀以上も前からありました。1960年の「身体障害者雇用促進法」で「雇用率」が導入され、これまでに時代の変化に合わせて改正を重ねてきています。特徴はすべての民間企業、特殊法人、自治体、教育委員会などが対象となっている点です。

導入当初、民間企業は「努力義務」でしたが、工場現場などの事業所が1.1%、事務関係の事業所が1.3%と「明確な数字」が定められていました。その後、1968年に一律1.3%、1976年には法的に義務化(法定雇用率)されて割合も1.5%に上がりました。そして、1980年代に1.6%、1990年代に1.8%と拡大方向で推移。現在は2013年に定めた民間企業2.0%、特殊法人2.3%、自治体2.3%などとなっています。このように障がい者雇用に対する環境整備が段階的に進められてきたことがうかがえます。

どうして、いま、障がい者雇用の対応が注目されているの?

企業に法定雇用率などが十分に認識される期間と変遷を経てきたにもかかわらず、どうしていま、改正法に対する企業の対応があらためて注目されているのでしょうか。それは、今年4月から施行された「差別禁止と合理的配慮の提供義務規定」だけでなく、障がい者の定義が明確化されて「精神障がい者」が加えられるとともに、2018年4月から法定雇用率に「精神障がい者」が追加されることが決まっているからです。これまでの職場の環境整備向上に「プラスワン」の義務化。まずは、法改正の骨格を見てみましょう。

改正障害者雇用促進法の要所

「精神障がい者の定義」と2018年4月施行の「法定雇用率」の関係

全体像の概要を紹介してきましたが、最も関心の高い「精神障がい者の定義」と、2018年4月施行の「法定雇用率」について合わせて説明していきます。

まず、「精神障がい者」との単語だけでは、一般的にはこれまでの身体障がい者や知的障がい者よりも判断しにくいのではないか、という声も聞かれます。改正法で新たに定義した精神障がい者は、「発達障害を含む、その他の心身の機能の障害」となります。もう少し具体的に説明すると、
(1) 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者
(2) 統合失調症、そううつ病またはてんかんにかかっている者
とあり、「雇用にあたっては、症状が安定し、就労が可能な状態にある者」とも記されています。

また、発達障がいは、「自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害 、学習障害、注意欠陥多動性障害などを指し、日常生活または社会生活に制限を受ける者」と定義されています

これらを踏まえて、一年半後に導入される「法定雇用率の算定基礎の見直し」について、下記の表でお伝えします。

「法定雇用率の算定基礎の見直し」の要所

改善の見られない企業名の公表 未達の場合の「納付金制度」

厚生労働省(以下、「厚労省」)は、障害者雇用促進法に基づき、民間企業に対して常時雇用する従業員の一定割合(2.0%)以上の障がい者雇用を義務付けています。雇用状況が一定の水準を満たしていない場合は、厚生労働大臣が「障害者雇入れ計画書」の作成命令や計画の適正実施の勧告を行い、勧告に従わない場合は、企業名を公表しています。

これまでに、実際に2009年から今年3月までに31社の企業名が公表されています。直近の動きをみてみると、2015年度は、2013年1月1日から2014年12月31日までに「雇入れ計画書」を作成させた221社のうち、雇用状況が特に悪かった35社と、2014年度に企業名を公表または公表を猶予した20社の計55社を対象に指導を実施しています。
その結果、今年3月29日発表の報道発表では、「一定の改善が図られ、企業名公表の該当企業なし」となりました。ゼロとなったのは2年ぶりのことです。

留意しておく必要がある「公表基準」は、最新のケースでは2016年1月1日現在において、2014年の全国平均実雇用率(1.82%)未満の場合、としています。ただし、下記2つのいずれかに該当する時は初回の公表に限り猶予措置をとっています。

(1)直近の障がい者雇用の取り組みの状況から、実雇用率が速やかに2014年の全国平均実雇用率(1.82%)以上、または不足数が0人となることが見込まれるものであること。

(2)特別指導期間終了後の1月1日から1年以内に特例子会社の設立を実現し、かつ、実雇用率が2014年の全国平均実雇用率(1.82%)以上、または不足数が0人となると判断できるものであること。

毎年、基準とする割合は変わりますが、傾向として対応企業が増えているため、基準となる割合は年々上がってきています。

公表企業数の推移

働きやすい環境づくりを目指して創設

また、法定雇用率が未達の企業に対して「障害者雇用納付金制度」があります。障がい者を雇用するには、作業施設や設備の改善、特別の雇用管理など、相応の企業負担が発生します。そうなると、法律や法定雇用率を順守している企業と、そうでない企業に経済的な不公平感が生じてしまいます。

これを解消、調整するために設けられた仕組みが「障害者雇用納付金制度」です。具体的には、法定雇用障がい者数に不足する人数に応じて、1人につき月額5万円が課せられます。その代わりに、常時雇用する労働者数が200人を超える企業で障がい者雇用率(2.0%)を超えて雇用している場合は、超えている人数に対して1人につき月額2万7,000円の障害者雇用調整金が支給されます。

精神障がい者の就職が急増、2018年を見据えた企業の動き

厚労省が発表した2015年度「障害者の職業紹介状況」によると、ハローワークを通じた障がい者の就職件数は9万191件(前年度比6.6%増)と大きく伸びて7年連続で増加、過去最高を記録しています。就職率も48.2%(同1.0ポイント増)に上昇、精神障がい者の就職が大きく伸びているのが特徴です。障がい者の新規求職申し込み件数は18万7,198件(同4.5%増)でした。

障がい別の就職件数は、身体障がい者が2万8,003件(同0.6%減)と減少したのに対して、知的障がい者は1万9,958件(同6.6%増)、精神障がい者も3万8,396件(同11.2%増)となり、精神障がい者が大きく増えていることが分かります。

産業別では「医療・福祉」の3万3,805件、製造業の1万1,933件、卸・小売り業の1万1,577件が上位3位。職業別では「運輸・清掃・包装等」が3万1,393件と最も多い35%を占め、「事務」が1万8,469件、「生産工程」が1万1,599件、「サービス」が1万819件と続いています。

2018年4月からの算定基礎見直しを見越して、事前に精神障がい者の雇用に積極的な企業が増えたと見られています。一方で、精神障がいは、統合失調症などで障害者手帳の保有者が対象になりますが、身体・知的障がいに比べると症状が不安定で、服薬や通院が必要な人も多いことなどから、採用に消極的な企業も少なくないようです。厚労省では、企業の担当者が症状の特性などを理解し、相互の希望を話し合って適切な職種に就くことで、健常者と変わらない仕事をしている人も多く、「企業はまず、精神障がいという呼称から受ける偏見を取り払って欲しい」と呼び掛けています。

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