Adecco


労働法制トピックス 労働法制最新情報

派遣法改正案、施行日繰り下げ検討 ―「みなし制度」の発動前の施行で、「現場の混乱」を最小限に ―

会期を大幅に延長した今国会においても、さまざまな要因によって審議が滞っている労働者派遣改正法案。改正法施行日を繰り下げる方向で進みつつも、「みなし制度」の発動前に成立を見込む審議詳細の他、労働関連法案の進展状況についてもご紹介します。

政府・与党は、「9月1日」を施行日としている労働者派遣法改正案について、施行日を繰り下げる「部分修正」に踏み切る方針を固めました。「9月30日」を軸に調整しています。参議院(以下、「参院」)での審議の進行が鈍いことなどを考慮した対応。国会で優越性の強い衆議院(以下、「衆院」)を6月19日に通過しているため、成立そのものは揺るぎません。参議院(以下、「参院」)では7月8日に本会議で、参院厚生労働委員会は7月14日に審議入りしていますが、日本年金機構の個人情報流出問題や安全保障関連法案の衆院採決などの余波で、審議の「足踏み」が続いています。

「みなし制度」の発動前を念頭

政府・与党は、参院での拙速審議を避ける決断をしました。7月末までには派遣法改正案の集中審議に入る公算で、その後の審議では愛知県名古屋市で地方公聴会(参考人招致)を実施することも検討しています。
衆院の優越のひとつである「再議決」が行使できる、いわゆる「60日ルール」(同法案は衆院を6月19日に通過、8月17日で60日目)を使わずに丁寧に進める見通し。政府は8月下旬までの成立を目指しています。
施行日については、現行法の「労働契約申込みみなし制度」が発動される「10月1日」前までの速やかな実施が、現場の混乱をできるだけ最小限に抑えられると判断したと見られます。修正は参院で行い、可決後に衆院本会議に回付して可決・成立となる見通しです。

厚生労働関連法トピックス
派遣法改正案と厚生労働関連の国会審議、進展詳報

第189回通常国会は、その会期を9月27日までと戦後最長の大幅延長を決定しています。来年は7月に参院選挙(半数改選)があるため、今国会だからこそできる思い切った延長幅です。残り約2カ月間の国会ですが、安全保障関連法案の審議をはじめ、時々刻々と変化する情勢にある中、労働者派遣法改正案を中心に、厚生労働省(以下、「厚労省」)および雇用・労働関係の審議状況を時系列のダイジェストで整理しました。

政府が今国会に提出した厚生労働省関係法案は9本、他省庁の所管・共管の雇用・労働関係2本の計11本です。進展状況を、前半に派遣法案、後半をその他の関係法案に大別して記述します。

労働者派遣法改正案

与野党対決法案です。成立までに必要な主な手続きと順番は、以下の通りです。

  1. (1)衆院本会議での趣旨説明と各党各派代表者による質疑
  2. (2)衆院厚生労働委員会での審議と採決による可決
  3. (3)衆院本会議での採決による可決(衆院通過)
  4. (4)参院本会議での趣旨説明と各党各派代表者による質疑
  5. (5)参院厚生労働委員会(以下、「参院厚労委」)での審議と採決による可決
  6. (6)参院本会議での採決による可決(法案成立・施行日変更修正の場合、衆院本会議に回付して正式に成立)

上記の6つが成立までの「節目」となり、7月30日時点で(4)まで進んでいます。現状では5月12日に(1)を、6月19日に(2)と(3)を同時に完了済みです。

5月12日

6月19日
5月12日、衆院本会議で審議入り。
参院厚労委では途中、参考人招致と、都合3回に及ぶ日本年金機構の情報漏えいの集中審議などを挟みながら、6月19日に衆院で可決、参院に送付。
7月8日 参院本会議で塩崎厚生労働大臣(以下、「厚労相」)による趣旨説明および各党からの代表質問。
12日 参院厚労委で塩崎厚労相による趣旨説明。
28日 参院厚労委の理事懇談会で7月30日からの派遣法改正案の審議再開を決定。
7月30日と8月4日の集中審議、6日には名古屋公聴会開催を与野党理事で合意。
8月X日 参院審議で「施行日変更修正」を可決し、衆院本会議で可決・成立へ。政府・与党は8月下旬を視野に入れている模様。

雇用関連法案は11本、成立は3本の現状

今国会における厚生労働省関係の法案9本、他省庁の所管または共管となる雇用・労働関係法案2本の計11本を見てみると、その進展状況は決して芳しいとはいえない状況にあります。

① 3月31日に成立。② 5月27日に成立。③ 4月24日に成立。④ は6月19日に衆院を通過し、参院で7月8日に審議入り。⑤ 参院先議で4月17日に可決・通過。衆院では審議未着手(7月30日時点)。⑥ は7月3日に衆院厚労委で審議入りし、29日に可決。31日にも参院へ。⑦ は7月29日に衆院厚労委で審議入り。⑧⑨は衆参ともに未着手となっています。

⑩ は、衆院本会議で6月4日、自民と公明、民主の与野党3党が提出した修正案を賛成多数で可決、参院に送付した。参院内閣委員会で審議が予定されていますが、与党の筋書き通りの進行にはなっていません。

⑪ は、認可法人の技能実習機構(仮称)を新たに創設し、「管理監督体制の強化」と「制度拡充」という両面を進めるのが法案の柱。実効性が急務ですが、未だ着手されていません。

以上をまとめると、関係11法案中、7月後半の段階で成立は、3本(①②③)、衆参いずれかの可決は4本(④⑤⑦⑩)、 審議入りが2本(⑥⑨)、未着手が3本(⑧⑨⑪)という中間総括となります。

第189回通常国会に提出された雇用関連法案

  1. ①戦後70年、戦没者の妻らに対する特別給付金支給法改正案
  2. ②国民健康保険法改正案
  3. ③厚労省所管の独立行政法人改革推進法案
  4. ④労働者派遣法改正案
    (与党・維新3党修正の「同一労働・同一賃金法案」)
  5. ⑤勤労青少年福祉法改正案(若者雇用促進対策法案)
  6. ⑥社会福祉法改正案
  7. ⑦医療法改正案
  8. ⑧労働基準法改正案
  9. ⑨確定拠出型年金法改正案
  10. ⑩女性活躍推進法案・新法(内閣官房・内閣委員会)
  11. ⑪外国人技能実習に関する新法
    (厚労、法務両省共管・法務委員会)

「高度プロ制度」導入などの労基法改正案は成立断念へ

「高度プロフェッショナル制度の創設」などを盛り込んだ労働基準法(以下、「労基法」)改正案について、政府・与党は7月30日までに、今国会での成立を見送る方針を固めました。与野党対決法案のひとつである労基法改正案は、厚労省提出法案9本中の8番目に位置づけられており、4番目の労働者派遣法改正案の成立も想定より大幅に遅れていることなどから、総合的に判断したと見られます。
労基法改正案は、一部野党が真っ向反対の姿勢を示しているほか、使用者側の各経済団体も改正内容全体に「全面賛成」できない部分があります。「継続審議とするか」、「いったん廃案として修正して次期国会に出し直すか」は、会期末までに政府・与党が慎重に見極める考えです。
労基法改正案については、国会提出(4月3日)の段階から厚労省関係法案のタイトな日程から、「審議入り」も危ぶまれていました。

※労基法改正法案の詳細については、労働法制最新情報vol.19の「労働基準法トピックス」をご参照ください。

その他労働関連法トピックス
自公維3党で提出した「同一労働・同一賃金法案」(修正案)も可決、成立後に直接的な影響は?

与党の自民と公明、野党の維新は、政府提出の労働者派遣法改正案と、自公維3党で提出した「同一労働・同一賃金法案」について、6月19日に同時採決し、賛成多数で参院に送りました。「政治的駆け引き」の中で同時可決した法案ですが、その経過とポイントと影響についてお伝えします。

同時に衆院を可決した「同一労働・同一賃金法案」修正案とは、いったいどのようなものなのでしょうか。各政党間の政治的背景も絡み合う中、派遣法案のほかに野党の維新、民主、生活の3党が提出(5月26日)していた「同一労働・同一賃金法案」(原案)に対して、維新と与党の自民、公明の3党による「修正案」が6月19日に提出され、修正案が賛成多数で可決されました。
この法案についてポイントを解説すると、「同一労働・同一賃金」という考え方と実施の下地は、まず職務給(ジョブ型)が定着していない日本では時期尚早との見方が支配的であり、野党3党の「原案通り」の可決だと問題が大きいものでした。
しかし、可決された「修正案」は、性急な導入は回避しながらも、将来的な問題提起という形になっています。原案と修正案の具体的な「違い」は次の3点です。

  • 1. 「均等または均衡のとれた待遇」 当初の「均等」のみから「均衡」という現状の考え方を加えました。
  • 2. 「法制上の措置その他の措置」 当初の「法制上の措置」から「その他の措置」と範囲を広げました。
  • 3. 「3年以内に」 「1年以内」から「3年以内」に延ばしました。

とはいうものの、将来的にまったく無視できる視点(法案)ではありませんので、当面は「考える時間、環境づくりの整備」への猶予が与えられたというのが正しい認識だと見られます。

このページの先頭へ

ウィンドウを閉じる

©2018 Adecco. All Rights Reserved.